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ソーシャルメディア活用ランキング1位、スターバックス徹底研究

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米国スターバックスは、ソーシャルメディア活用の先進企業として、つとに有名だ。

英国Famecount社統計によるソーシャルメディア人気ブランド・ランキング(Facebook, Twitter, YouYube登録者をベースとしている)でも1位を独走している。

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【出所: Famecount Brand Charts

当記事では、世界トップの先進企業が、いかにソーシャルメディアを活用しているか、媒体ごとにそのポイントを探るとともに、その背景にある企業文化なども考察してみたい。


■ ソーシャルメディア先進企業、スターバックスの活用術を研究する

1. My Starbucks Idea

DELL「IdeaStorm」や無印良品「モノづくりコミュニティ」と並んで、最も有名なアイディアコミュティがこの「MyStarbucksIdea」だ。無印良品が新商品開発にフォーカスしているのに対して、このMy Starbucks Ideaは広くスターバックス商品やサービスに対する改善アイディアを募集しているのが特徴となっている。

ローンチは2008年3月と比較的新しいサービスにもかかわらず、現時点で集まっているアイディアの数はなんと10万件(商品アイディア6.1万件、サービスアイディア2.4万件、その他アイディア1.5万件)を超え、利用者がいかに熱心にスターバックスに意見を提案しているかがうかがえる。

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仕組みはDellのIdeaStormとほぼ同様で、投稿されたアイディアが投票により選別され、利用者ニーズの高いアイディアが自動的に浮かび上がるようになっている。

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そして、集まったアイディアに対して、ほぼ毎日のようにそれぞれの担当者がブログ形式でアクション意向を回答する。またそのコメントを通じて利用者と担当者とのオーブンな対話が交わされている。ステイタスは「Under Review、Reviewed、Comming Soon、Launched」の4種類、それぞれの回答ブログにはこのスタータスが明示されており、彼らの誠意が伝わってくる。

ここで実際に改善された件数はすでに500件(商品系284件、サービス系133件、その他130件)を超えており、WiFiサービス、ポイントカードなど、現スターバックスの目玉サービスが利用者の声から生み出されているようだ。

2. Facebook

なんとファン数1630万人超、スターバックスのFacebookファンページは企業系では世界最大規模となっている。

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まずファンページにアクセスすると、最初に表示されるのが動画を含んだキャンペーンページ。最も伝えたいホットな内容を必ず目にしてもらえる導線設計だ。その他、ウォール、写真、動画、イベント、ディスカッション、アンケート、レビューなど、Facebookが提供しているほぼすべての標準ファンページ機能を活用し、さまざまな角度から利用者との対話を試みていることがわかる。

参考まで、スターバックスでは、過去にFlickrで炎上トラブル(写真投稿に関するトラブル)を経験しており、Facebookファンページの写真投稿では被写体が明らかに撮影されているのを意識しているモノ以外は掲載されていないようだ。この件、詳しくは当社ループス福田の記事にてご参照を。

スターバックスの事例から学ぶ、写真撮影ポリシーの作り方

Facebook

さらに自社開発アプリにより、プリペイドカード「Starbucks Card」の発行やチャージをFacebookファンページ内で行える。またGive a Gift機能(これもMyStarBucksIdea発、なんと42000票も獲得したとのこと)で、Facebookの友人にギフトをプレゼントすることも可能になっている。課金までファンページ内で完結しているのは、生花コマースの1-800-Flowersなどとともに数少ない事例と言えるだろう。

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また他の人気ファンページと比較して多目的なことも特徴だ。この表は、Facebookブランド系ファンページの登録者数トップ7ブランドを比較したものだが、これを見てわかるとおり、スターバックスページは、ブランディング、キャンペーン、店舗集客、自社サイトへの誘導の機能を含み、他社を圧倒していることがわかる。

3. Twitter

続いてTwitter。こちらもブランド系では最大級で、メインアカウントの@Starbucksは110万人を超える利用者(フォロワー)を誇っている。またスターバックスではこれ以外に、@StarbucksJobs(リクルート)、@MySarbucksIdea(アイディアコミュニティ)をはじめ、多くの地域アカウントなども持っており、いずれもTwitterを通じて利用者とのオープンな対話を行っている。

Twitter

この本アカウントでも、約7割方は利用者との個別対話に費やしている他、自社ブランドに関するツイートをRetweetしている。個別対話の内容はさまざまだが、コメントへのレスポンス、不満への謝罪、さまざまなトピックの会話などなど、利用者とのエンゲージメントに非常に熱心に取り組んでいる姿が印象的だ。

4. YouTube

YouTube内のStarbucksチャンネルは、登録者数は8千人とそれほど多くないが、動画再生回数で550万回を超えるなど、やはり積極的に活用されている。

Youtube

動画は160以上提供されており、テレビコマーシャルなど宣伝系以外に、コーヒー豆知識や社会貢献に関するものなど多岐にわたっており、中には100万回以上再生されたヒットビデオも創出されているようだ。

5. ロケーションサービス (Foursquare, Placecast)

最後に、現在スターバックスが注力しはじめているロケーションサービスの活用について触れておきたい。Starbucksのビジネスはリアル店舗をベースとしているため、位置情報サービスとは相性が良く、複数エリアで実験的活用が始まっている。

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【出所: Mashable 元記事

最も有名なのが、Foursquareのメイヤー(各店舗に最もFoursquareチェックイン回数が多い利用者)に、好きなフラパチーノを1ドル値引きするという期間限定キャンペーンだ。

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【出所: Mashable 元記事

また英国では、携帯キャリア"O2"およびロケーションサービズ"Placecast"と組み、スターバックス店舗付近にいるO2携帯ユーザーに対して、"VIA Ready Brew製品(インスタントコーヒー)の50%ディスカウントSMSを自動送信、店舗への集客を試みている。スパム扱いされないために、O2では全ユーザーに配信しているのではなく、フードやドリンクに興味がある利用者に対象を限定しているとのことだ。

参考まで、米国マクドナルドや英国ドミノピザもチェックイン連動による集客実験で成功を収めており、2010年はチェックインサービスによるオフライン店舗への集客が大きなトレンドとなることは間違いないだろう。
 
 
■ スターバックス、成功の背景にある企業文化

スターバックスのソーシャルメディア活用は、すべて顧客とのオープンな対話がベースになっている。これが実現できるのはスターバックスの持つ企業文化によるところが大きい。その背景には、スターバックスが自社ブランドのこだわりを社員に浸透し続けたこと、また社員が直営店を舞台として顧客一人ひとりと交流する体験を持っていることなどがあり、それらが複合的にマーケティング3.0時代にふさわしい企業文化を生み出したと言えるだろう。

マーケティング3.0ってなんだろう? (10/27) 

ただし彼らは意図的にブランド戦略を考えていたわけではなく、またビジネススクールのような系統だった教育があるわけでもない。創業者のコーヒーへのあくなき情熱、使命感が全社に共有されるとともに、徹底的に価値志向、人間志向であり続けたことが、このような永続性のあるブランド創出につながったようだ。



日本におけるソーシャルメディア活用というと、期間限定のプロモーションなど、ややもするとアテンションやインタレスト獲得に流れがちだが、それらは本来ソーシャルメディアが持っている潜在パワーのごく一部に過ぎない。その意味で、スターバックスのソーシャルメディア活用は、まさに本流を目指している点に注目したい。

スターバックスは商品やサービスに強いこだわりを持ち、そこでしか味わえないユーザー体験を追求してきた。また、古くからオンオフ問わず、顧客と積極的に対話し、エンゲージメントを深める姿勢を貫いてきた。この信頼関係の蓄積が利用者の共感を呼び、多くのファンを醸成することになった。そしてそのファンがスターバックスに常時アイディアを提供し、彼らのサービスがさらに洗練されていく。

世界トップのソーシャルメディア活用企業、スターバックスから学ぶべきものは、単にその活用術だけではなく、新しいマーケティング時代にふさわしい企業文化や企業姿勢と言えるだろう。日本にも無印良品やソフトバンクというお手本がある。我々は彼ら先進企業の姿勢を真摯に学び、自社に応用できることを、小さなところからでも着手していくべきだろう。



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