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マーケティング3.0ってなんだろう?

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マーケティングの神様、フィリップ・コトラー氏が「マーケティング3.0」という新しいマーケティングの概念を提唱し、マーケッターや広告関係者、ソーシャルメディア関係者の間でトレンド・キーワードのようになっている。

しかしながら、ややコンセプトが一人歩きしているようで、実態を理解しにくいというご意見をよく耳にする。また、従来のマーケティング理論と比較して理想論的な響きもあるため、厳しい現実社会に適用できるのだろうかと疑念をもたれている方も多いことだろう。

コトラー氏が熱く説く「マーケティング3.0」の本質はどこにあるのだろうか。そして、それは従来のマーケティングの考え方に対して、どのような位置づけになるのだろうか。マーケティング理論をほとんどご存知ない方でも理解しやすいよう、シンプルな比喩を用いて、客観的な考察を試みたい。

なお、ストーリーの前に「マーケティング」の定義を共有しておきたい。詳しく言えば、その定義は時代とともに変遷しているが、ここではシンプルに「マーケティングとは売れるための仕組みづくり」としておこう。営業マンが無理をしなくても自然と商品やサービスが売れていく、そのような状態になるために、どうすればいいかを考えるのがマーケティングの基本といって良いだろう。


■ 陸の孤島で、マーケティングを考えてみよう

あなたの乗った船が座礁して、300人の乗客が無人島に漂着した。みな自分が生き延びるのに精一杯だ。グループをつくって島の各地に散らばり、仲間内で協力しながら原始的な生活をしはじめたとしよう。

例えば、食事や水を補給するためには器が重要になるが、そんなものはもちろんなく、仲間で集めた貝殻や石などを持ち寄り、なんとかしのぐ日々が続いていた。

・マーケティング以前 〜 独占的な供給

そんなある日、ある男性Aが火の起こし方や土器の作り方を独力で編み出した。彼の作り出す土器を使うと、食事や水分補給、その保管などがとても便利になるため、みながその土器をほしがった。そこでAは仲間2人(以降、Aチームと呼ぶ)と土器づくりを開始、さまざまなものと物々交換をはじめたのだ。無人島ではじめて生産活動が行われた瞬間だ。

この時点では独占商売なのでマーケティングは不要だ。島の全員がAチームのつくる土器をほしがっている。作れる土器の数は限られているので、全員のニーズを満たすことはできない。高い価値をつける人に優先的に土器を提供するだけだ。

・マーケティング1.0 〜 製品中心の時代

さて、そんな中、彼らの土器づくりを見ていた女性Bが、見よう見まねで土器をつくりはじめたのだ。その評判は島中に伝わり、多くの人々が彼女に土器をつくってほしいとお願いにくるようになる。当然、Aチームには面白くない。そこで組織で効率的に生産と販売をできるように工夫し、提供できる土器の量を倍増させた。マーケティングのはじまりだ。(マーケティングの原点は大量生産販売のT型フォード(1908年〜)と言われている。「顧客は好みの色の車を買うことができる。好みの色が黒である限りは。by ヘンリーフォード」)

さらに彼らは創意工夫を続けた。土器(Product)を改良し、適性価値(Price)を検討し、各グループリーダー(Place)を経由して、土器の売り文句(Promotion)を考えたのだ。これがマーティング1.0時代の象徴、マーケティング・ミックスの4Pだ。

しかしながらABをあわせてもまだ土器の生産量は少なく需要が上回っていたため、良いものをつくればつくるだけ売れる状態が続いていた。言い換えると「製品を中心」とした視点でAチームの改善は続いたと言えよう。

・マーケティング2.0 〜 顧客中心の時代

そうこうしているうちに、土器製造の技術が徐々に利用者にも伝わり始め、作り手が我も我もと増えていく。そしてついには生産量が需要を上回る、物溢れの時代が到来した。そうなると製造側にさらなる工夫が必要になるのは当然だ。今まで以上に競合を強く意識しはじめ、彼らよりいかに優位にたつかを工夫しだしたのだ。

まず、Aチームは、老舗であることを強調するために「Doki」という刻印(Bland)を土器につけ、他の土器と区別し、自社製品の良さをアピールした。これにより、Dokiとついているものは他の土器より信頼性があると評判になり、高く売れはじめた。

また、彼らは、利用者の土器の使い方を分析(Segmanetation)し、競合との棲み分け(Targeting)を検討し、その中で独自性を出す工夫(Positioning)が行われるようになった。これがマーケティング2.0時代の象徴、STPだ。

さらに、Aチームの一人が、新しい利用者を見つけるより、常連客に続けて買ってもらう方がずっと楽なことに気がついた。つまり単発の商売ではなく、継続的に買ってもらう価値(Life Time Value)の大切さが見えてきたのだ。この考え方は、マーケティング2.0の後期、CRM(Customer Relationship Management)の基礎となるものだ。このような変遷により、Aチームの視点は「顧客中心」になっていく。

一方、土器生産が高度化するにつれて、さらに需要より供給が多くなり、過当競争になっていく。そのため新興の作り手を中心に、過剰な宣伝文句に走ったり、品質をごまかして低価格にしたりと、偽りながら商売するものを増えてきた。当初はだまされていた利用者も、だんだんとその手口に気がつき始め、グループ内外で相談をはじめるようになってきた。 

・マーケティング3.0 〜 人間中心、利用者がパートナーになる時代

利用者は情報交換を重ね、次第に賢くなっていた。グループ間で緊密に連絡しあう手段もできてきた。つまり作り手のウソや過剰宣伝にはダマされないようになったのだ。さらに価格や品質についても広くクチコミされるようになり、利用者のほうが強い立場に変わってきた。消費サイドがリードする時代の到来だ。

新しい時代に入ると、質が悪い、高すぎるなど利用者に受け入れられない作り手はすぐに噂になり淘汰された。信用できない作り手や、煙を大量に出して近隣住人に迷惑をかけていた作り手も見放された。

そんな中、Aチームは、漠然としていた顧客中心の考え方をチーム内で徹底し、自社の都合より利用者のこと、さらに島全体にとってプラスになることを第一(Adovocacy)に考える方針に転換した。そして土器開発に顧客の声を積極的に取り入れるとともに、修理や配達などのサービスに力を入れた。特に彼らが心がけたのは、一律ではなく、一人ひとりのニーズやコンテクスト(背景、事情)をしっかり把握し、利用者に喜んでもらうこと。つまり顧客の満足、感動を目先の売上よりも大切にしたのだ。また島全体の共通課題にプラスになるよう、利用者と力をあわせて貢献活動にも力を注ぐよう務めた。

Aチームには一気に利用者の共感が集まりはじめた。その評判は連絡手段を通じて島中に知れ渡り、Dokiというマークに特別な愛着を持つ利用者が増える結果をもたらした。島の人々はことあるごとにDokiを友人に紹介し、接する都度、商品改善のアイディアを伝えたりした。ついに、この孤島にもマーケティング3.0の息吹きが到来しはじめたのだ。


■ マーケティング3.0時代には、2.0の施策が否定されるのだろうか

マーケティングの変遷は、多くの場合、市場の変化がトリガーとなる。規制で守られるなど競合状況の少ない業界はマーケティング不要なケースも多いし、シルバー産業など利用者のソーシャルメディア活用がすすんでいない業種にとっては現時点で3.0を意識する必要性は薄いだろう。

マーケティング1.0から3.0まで一貫していることは「良い商品サービスを、必要としている人に提供する」という商いの基本だ。それが市場の進化とともに変遷しているだけで、1.0や2.0の基礎が否定されるものではない。ただし、その過程で発生した厚化粧のブランディングや企業の隠蔽体質など、ソーシャルメディア時代に淘汰されるのは必然と言えよう。

また当然のことだが、企業は競争社会の中で成立しており、3.0時代に競争は無縁のようなことではない。ポイントは、時代の変遷とともに、市場が企業や商品サービスに求めるレベルがどんどん高まっており、そのためにマーケティングの対象とするレベルも、より高次の層にシフトしているということだ。


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【マーケティング戦略における階層構造】


この図は、マーケティング戦略における典型的な階層構造例を示したものだ。マーケティングの進化に伴い、戦術レベルから戦略レベルへ、さらに企業の根幹となるミッション、ビジョン、コアバリューまで、そのカバー範囲がより上位にシフトしつつあると言えるだろう。(この図の詳細は続編にて)  


■ マーケィング3.0では「いかに生活者に協力してもらうか」がキーとなる

コトラー氏は、マーケティングの目的が、以下のように変わってきたとしている。

  • マーケティング1.0 どのようにして販売するか?
  • マーケティング2.0 どのように顧客に継続購入してもらうか?
  • マーケティング3.0 どのように生活者に(製品開発や販売などに)協力してもらうか?

生活者は、すでに一部のマーケティング先進企業に対して、製品開発や販売、顧客サポートなど、多面的に企業の生産活動に協力をはじめている。例えばクチコミ。企業の広告メッセージより友人のクチコミのほうが購買行動に大きく影響することは知られているし、潜在的な需要を喚起して顕在化する効果があることも注目されている。これは生活者が非常に優秀な営業マンになりうることを示しているし、また生活者がネガティブなクチコミをした商品は逆に存在自体をあやぶまれることになる。

では、いかにすれば企業は生活者からポジティプな協力を得られるのだろうか。これがマーケティング3.0時代の具体的な重点施策だ。言いかえると、生活者に共感してもらえる企業になる、ソーシャルメディア上で共感される企業になるためには、どのようにすれば良いのかということだ。

そしてもう一つ重要なことは、それらの考え方に経済合理性があるかという点。無尽蔵に顧客に奉仕するというのであれば、製品サービスをすべてタダにすればよいが、それで経営が成り立つ企業は極めて稀な存在だ。(生活者から見ると、Googleはそれに近い) 企業が持続成長できるソロバンを持ちながら、いかに利用者の共感を得るか、それが重要なポイントとなるだろう。

では、つづきは次回、マーケティング3.0時代における具体的な施策、その場合のソーシャルメディアの効果的活用法について、考察を続けてみたい。
 



■ 追記1
つづきの実践編、アップしましたので、ぜひご参照ください。
マーケティング3.0時代、ソーシャルメディアのビジネス活用術 (11/5) 
 
 
■ 追記2

投稿後にいくつか修正を入れています。表現の足りない部分を追加し、また少しでもわかりやすく、読みやすくするために改善を続けていますので、ご了承ください。
・チャート内に日本語表記枠を追加
・100人を300人に変更
・顧客のみならず、コミュニティ全体に対する貢献を追記
・何箇所かの重複した言い回し、誤字などの訂正
・Amazon書籍紹介をひとつ削除して一箇所に

 




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Comment(1)

コメント

kamitani

ベン図のBrand Integrityが被ってしまっています。2つ目のBrand IntegrityがBrand Imageの間違いなのだと思います

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