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プロダクトマネジメントとイノベーション

「失われた100年」をスタートしないために

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政府は行政横断的な研究開発予算である「最先端研究開発支援プログラム」を国会で成立させ、その2,700億円の支給先を決めたというニュースが流れました。

さらに、同時に、民主党の岡田幹事長がこれを凍結させる可能性があると発言したこともニュースになりました。

ハイリスクなR&Dの費用を国家が面倒をみるのは常識的です。しかるに、日本では研究予算の大半を民間企業が捻出しています。文科省や経産省などが縦割りで単年度でばら撒いている国家予算は大学や外郭機関の人件費として消えています。すなわち、日本のR&Dは民間頼りなので、ハイリスクの技術開発が非常に困難です。対して、米国はR&D予算の大半を国家が拠出しており、その成果が民間に大きく流れることで技術の覇権化(市場制覇)を可能にしてきました。

例えば、上記「最先端研究開発支援プログラム」の支給先候補になっているiPS細胞研究についても、米国は日本の10倍の予算を持ち、範囲を再生医療に広げるとカリフォルニア州だけで3千億円の予算を持つと言われています。民間から頂戴した税金は市場のパイを広げる施策に使い、再度民間に還元するというわけです。

私がこの「最先端研究開発支援プログラム」に対して文句があるとすれば、1)逆に予算が少なすぎる。2兆円に膨らませも良いぐらいだ、2)研究をプロマネし、成果を権利化して市場制覇に結び付けられる凄腕のビジネスマンを管理者にすべきだ、ということです。特に2)に関して、この仕事は官僚にも政府にも出来るわけがありません。

少なくとも、このような予算は減らすどころか、増やし続けなければならず、また、税金を使う訳ですから、成果として市場のパイが広がり、日本人が豊かにならなければなりません。

さて、当面の問題は、なぜ民主党がこれを凍結しようとしているかです。
下記は民主党の鈴木寛政調副会長の発言です。
http://lohasmedical.jp/news/2009/08/21143342.php

→「(中略)いったん凍結し、もう一回コンセプトから見直していく。機械を買ってくださいという話にしないように、研究職の人件費にあてられて、ポスドクの人たちの雇用不安を少しでも解消できるように」

うーむ。何やら方向性が違う発言です。これでは従来の文科省予算と変わりません。雇用不安を解決したいのであれば、単に大学にばら撒く文科省予算を増やせば良いだけです。

もともと今回の予算の裏付けとなる「研究開発力強化法案」は民主党・自民党・公明党の議員立法として昨年成立させたものです。ですので、民主党は概ね賛成のはずですが、使い道に関して自民党の投資促進派と民主党の雇用対策派で思惑が違うと思います。

昨日のニュースが流れてから、ネットでは悲観論が渦巻いており、さっそく「米国の勝ちが決まりました」「失われた10年の再来」「日本は終了した」という趣旨のブログ発言が一斉に投稿されています。

先端技術のR&Dですから、予算がなくなると10年どころではなく、100年ほど市場を失います。

私が民主党のマニフェストによって民主党自身が困ったことになるというのはこのことです。技術市場にいる人たちにとって、看過できない事態だと思います。

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