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ビジネスパーソンの出版戦略:林雅之さんインタビュー(その2)「出版して仕事が変わった」

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オルタナブロガーの林雅之さんとのインタビュー、第1回目に続き第2回目です。

(インタビュー実施日:2010年2月17日)

 

■ビジネスマンならではの差別化を考えよう

林さん(以下、H): 「本を書く際に、心掛けていたことがあります。あくまでエンドユーザー視点で書く、ってことです」

永井(以下、N): 「それは意外ですね。クラウドの本って、エンドユーザー視点で書いたものはあまりないんですか?」

H: 「実は、その後に出たクラウドの本のほとんどが技術本でした。また、僕が本を書き始めた時期に野村総研がクラウドの本を書くのではないかという感じがしていたのですが、リサーチャーの野村総研の本はトレンドを書いたものになるんじゃないかな、と予測していました。そこで、無名のビジネスマンの自分はあくまでエンドユーザー視点で書くことにして、ビジネスマンにとってクラウドがどのような意味があるかを書きました。」

N: 「なるほど、ビジネスマンならではの強みを活かしたということですね」

H: 「『クラウドビジネス入門』というタイトルもそうなんですよね。簡単なタイトルに見えますが、これは最後まで編集部と悩みました。でも結局、このタイトルが大きな差別化になりました。おかげで、ビジネス書のコーナーとIT系のコーナー両方に置いてもらえるようにしました。ビジネスパーソンは、ユーザー視点で書くべきだと思うんですよ。ジャーナリスト視点だと、プロのジャーナリストに中身も文章も絶対かないません。それだったら、自分の仕事での経験を活かして、ユーザー視点で書くべきだと思います」

 

■ブログがあったから、本を書けた

N: 「林さんは、ブログを毎日書いて、それから出版しようとお考えだったのですよね。ブログは役立ちましたか?」

H: 「ブログがなければ、出版できなかったと思います。今回、色々なITベンダーさんに取材しましたが、自分が参加しているITmediaオルタナティブブログのブロガーネットワークにとても助けていただきました。永井さん経由でも、IBMのクラウド事業責任者と繋いでいただいて、インタビューできました」

N: 「こちらこそお声をかけていただいて感謝しています。日本IBMのクラウド事業をお伝えする良い機会でもあったので、仲介させていただきました」

H: 「他の主要ITベンダーもインタビューがとても容易だったんですよね。このブロガーの人脈があったから、本が書けたと思います。ブロガーの人達は理解力がある人が多いので、とても助かりました」

N: 「他にブログで役だったことはありますか?」

H: 「出版社の人が、こんなに短期間でかけたのはブログの蓄積のおかげだ、と驚いていました。やっぱり、毎日ブログを書いていて蓄積があることは大きいですね。あと、クラウドの話しをブログに書いてみて、テストマーケティングができました。テーマ毎のアクセス状況を把握すると、どのテーマが受けるかが分ります。例えば、クラウドのセキュリティが重要なことが分りました。『常にユーザー視点で書く』ということを実践するのに、ブログはとても役立ちました」

N: 「確かに、私の場合も、ブログに書いていたことをかなり本に書きました」

H: 「旬なテーマをブログに書いていると、本の話しも向こうから来るようになるんですよね」

 

■出版して仕事が変わった

N: 「出版してみて、色々と講演依頼が来るようになったようですね」

H: 「実は今、クラウドでユーザーが混乱しているんですよね。技術系の話が氾濫していて、エンドユーザーにとっての意味がよく見えないんですよ。色々な講演依頼が来ますが、エンドユーザー視点で、IT業界向けに書いていたので、そこが大きな差別化ポイントになったようです。中堅中小企業の経営者の人達からも話を聞きたいという依頼が沢山来ます」

N: 「問い合わせはどんな形で来るんですか?」

H: 「本やブログでメールアドレスを公開したんですよ、そのメールで問い合わせが来ます。例えば、ユーザーからは、『クラウドをどのように使うべきか悩んでいる。相談に乗って欲しい』とか、IT業界関係者からは、『クラウドをどのようにビジネスで展開させていくべきか相談に乗って欲しい』とか」

N: 「なるほど、本のポジショニングというか、差別化ポイントを明確にすると、出版後の展開にも繋がっていくんですね」

(以下、次回の「出版したいビジネスマンへのアドバイス」に続きます)

 

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