プレゼンの心得(5)--スティブ・ジョブスが、必ずやっていること
前回の続きで、今回が連載の最終回です。
資料は、プレゼンの1週間前に仕上げよう
プレゼンの前日に、やっとチャートが揃ってプレゼン資料が完成、ということはありませんか?
この方法は、あまりよいとは言えません。
できれば、プレゼン資料はプレゼンの1週間前に一通り仕上げたいところです。
その理由は、「いったん忘れるため」です。
プレゼン資料を、プレゼンを聴く人の視点で客観的に見るためには、いったん忘れることが必要なのです。
プレゼン資料を作る時は、様々な思い入れが入ります。
そして、思い入れは、必要なこと。
しかし、その思い入れ、間違っていることもあるのです。
だから、プレゼン資料が完成したら、できれば2-3日間は別の仕事をすることで、いったんプレゼン資料を忘れるための冷却期間を持つことが大切なのです。
「いつも資料完成はプレゼン直前、プレゼン後はプレゼン資料を見ない」という方は、ぜひ一度試してみると、実感できると思います。
完成後、2-3日たってじっくり見直すと、作っていた時には全く気がつかなかったストーリー上の欠陥、チャートの分りにくさ、ミス等、色々と沢山気がつくと思います。これは冷却期間を置き、プレゼンを聴く人の視点で見ることができたためです。
リハーサルを必ず行おう
もう一つ大切なことは、プレゼンのリハーサルを行う、ということです。
最低限、話す内容はナレーションで書き起こしてみましょう。
実は、この5回の連載も、「プレゼンの心得」と題して明日行うプレゼンのナレーション作りのために書き起こしたものなのです。
さらに、同僚や家族に、プレゼン資料を見せながら口頭で説明してみるのもいいでしょう。これだけでも、ストーリー上、無理がある部分が、説明しているうちに相手の反応で感じることができます。
できれば、本番のプレゼンと同様に、時間を見ながらプレゼンの予行演習を数回できればベストです。
実際、プレゼンに慣れている人でも、というよりも、慣れた人ほど、リハーサルを行ったり、ナレーションを作ったりしています。
ちなみに、あのスティーブ・ジョブスも、新製品プレゼンの前日は、丸一日かけて大勢のスタッフとともにリハーサルを実施するそうです。
あの極めて自然体で芸術的なプレゼンは、一見、天性の才能の産物に見えます。
確かに才能も素晴らしいことは間違いありません。しかし実は、スティーブ・ジョブズと周りのスタッフは、その上、ものすごい努力をしているのですね。
成功するプレゼンは、ビジネスに直結する
米国ゼロックスの調査によると、ユーザーの満足度を5段階評価で把握してみたところ、最高度の5(=とても満足)のユーザーの顧客ロイヤルティ(再購入率等)は、2番目の4(=満足)の6倍だったそうです。
これは、極めて深いことを示唆しています。
よく、プレゼンの後にアンケートをとる際に、満足度を5段階評価し、100点満点で平均何点かを把握することがあります。この指標をNSI (Net Satisfaction Index:顧客満足度指数)と呼びます。
NSIで言えば、最高度の5(=とても満足)は100,2番目の4(=満足)は75です。
プレゼンのNSIが75と言うと、一見悪くない数字に見えます。
しかし、マーケティングプロモーションの一環として新製品紹介セミナーを行った場合、仮にNSI 100を実現できれば、NSI 75の6倍のリード(案件)が獲得できる可能性があるのです。
「NSI 100なんて、絶対不可能」....とは言い切れません。
実際、私が存じ上げているあるお客様の経営者は、勤務先の経営者向け研修施設(静岡県天城)でご自身でリードされた経営改革について数十回講演をしていただきましたが、その数十回の平均NSIは、99というとてつもない数字を出しておられました。
通常、6倍のリードを実現するには、6倍の顧客を集めるべくお金をかける方法が一般的です。
しかし、NSIを飛躍的に高めることで、プロモーションの費用はあまり変えずに、リード(案件)を獲得できる可能性があります。
おそらくスティーブ・ジョブスのプレゼンのNSIは、100に限りなく近いのではないでしょうか?
その結果は、爆発的な製品の売上げとも深い関係があると思います。
そして、そのために必要なのは、当連載で繰り返し述べてきたように、以下を実践することです。
「何を伝えたいのか?」を明確にし、
相手への理解を徹底し、献身的に「伝えたい」情熱を持ち続け、
簡潔で分りやすいプレゼンで、感動を伝える
「相手のことをどれだけ考えられるかが、よいプレゼンに繋がる」と結論付けると、月並みな言い方になってしまいます。
しかしこの連載を読んでいただいて、その意味がお分かりいただけたら大変嬉しく思います。
そして、うまくいけば、それが最終的によいビジネスに繋がっていくのです。
あるいは、組織内のプレゼンであれば、感動を共有することで、組織の変革に繋がっていきます。
さて、合計5回に渡り、主にプレゼン資料作りの観点で、「プレゼンの心得」と題して連載しました。
いかがでしたでしょうか?
ご意見をお聞かせいただければ幸いです。
5回の連載にお付き合い下さり、ありがとうございました。
【関連記事】