プレゼンの心得(3) --チャート作りが、一番最後の理由
前回の続きです。
実際のプレゼンの作成作業は、下記の流れになります。
1.ニーズと目的の把握
2.情報収集
3.メッセージ定義
4.ストーリー作り
5.チャート作り
6.準備
中にはいきなりチャート作りから入る人もいたりします。
実は昔、かく言う私もそうでした。
しかし、チャート作りは、一番最後。
その前に、1-4の作業をしっかり仕上げるのが大切なのです。
これができていないため失敗するプレゼンが多いのです。
今回は、そのことについてご紹介します。
各論に入る前に、大切なことを二つ述べます。
まず、
「ニーズと目的の把握」をしてから「情報収集」をすること
です。
中には、まず「情報収集」をして、そこからおもむろに「ニーズと目的の把握」をするケースがありますが、これは逆。間違いです。
プレゼンを聴く相手のニーズや目的によって、収集すべき情報は異なります。
順番を変えると、場合によっては必要がない情報の収集に時間が掛かってしまったり、本来必要な情報を収集していなかったり、ということが起こります。
これでは本末転倒です。
次に、
コンピューターのスイッチを切ること
そして、一人の静かな時間を作ること
プレゼンを作るためには、様々なアイディアが必要です。
それらをまとめるためには、紙とペンを使って頭に浮かんできたアイディアを書き留めることが効率的です。
紙にアイディアを書き込みそれを目で見ることで、脳が刺激され、アイディアが次々に広がっていきます。
中には、「紙に書くよりもコンピュータの画面上でアイディアをまとめた方が早いし、よいアイディアが沸く」という人がいるかもしれません。そのような方は、ご自分にあった方法で進めることをお勧めします。
一人の静かな時間を作って集中することも大切です。
多忙な日々では難しいかもしれませんが、例えば私の場合は、始発で出社して午前6時過ぎから9時頃まで集中して資料を作ることがあります。
途中、作業を中断されることもなく、とても効率的に作業を進めることができます。
会社では忙しくてどうしても時間が作れない、という方は、出勤途中の電車の中の時間を使う方法もあるでしょう。
いずれにしても、プレゼンが成功することで仕事の成果は大きく向上しますし、逆に失敗することでプレゼン準備にかけた多大な時間が無駄になります。
色々と工夫して、一人の時間を作りましょう。
次に、プレゼン作成作業をひとつずつ見ていきます。
1.ニーズと目的の把握
文字通り、プレゼンの目的と、相手が何を知りたいのか(ニーズ)を把握し、そのニーズに対して私達が何を提供できるのかを把握すること。
これがプレゼンの出発点です。
これが出来ていないために、多大な作業量を投入して美しいチャートを作っても、結局、誰に何を言いたいのかが分らない、というプレゼンが世の中には多いように思います。
逆にここがしっかりと定義できていれば、チャートのできが少々悪くても、あるいはチャートなしで口頭のプレゼンであっても、それなりに相手に言いたいことが伝わることも多いのです。
例えば今回の私のプレゼン(「プレゼンの心得」)では、これから外部に積極的にプレゼンをしていきたいと考えているマーケティング担当者の方々に(=ニーズ)、私自身のプレゼン経験やエグゼクティブから学んだことをお伝えすること(=価値)、と定義しました。
中には、同じプレゼンを様々な場面で使い回すケースがありますが、これはお勧めしません。
プレゼンを行う場面は、各々違いますし、参加する方々のニーズも異なります。
相手のニーズと、プレゼンの条件(時間や場所、施設の条件等)を把握し、ニーズに併せてメッセージを調整すべきです。
2.情報収集
1.で定義した提供する価値に基づいて、手持ちの情報を徹底的に洗い出します。
今回の私のプレゼン(「プレゼンの心得」)では、私自身のプレゼン経験やエグゼクティブから学んだことをお伝えするために、学んだことを皆さんにお伝えできるように形式知化していきました。
3.メッセージ定義
情報収集を一通り行った後、その情報をそのまま一方的に話すのは、いけません。
整理されていない情報を相手にそのまま伝えても、相手は消化不良を起こします。
消化不良が起こるということは、伝えたいことが伝わらないということです。
つまり「プレゼンの心得(1)」で述べた「プレゼンの目的」は達成されず、プレゼンは失敗に終わります。
では、どうするか?
ここでは、
「覚えて欲しいのは、何か?」
を短い言葉で定義します。
一言で定義できればベスト。できれば2-3行に収めたいところです。
例えば、今回の私のプレゼンで「覚えて欲しいこと」は、下記としました。
プレゼンは、相手を感動させ、実行を促す武器。
そのために、 シンプル + ストーリー + ロジック
4.ストーリー作り
材料が揃い、メッセージが定義できたら、流れを作ります。
私の場合は、A4の白紙を横にして、小さな長方形(3cmx4cm程度)をチャートに見立てて横にいくつも描いて、各チャートで何を言うのかを書いていきます。場合によっては各チャートの大まかな図も描きます。
ちょうど、パワーポイントのサムネイルを、手書きで流れ図のように書いているイメージです。
1.のニーズの把握から、情報収集し、メッセージを定義し、この手書きの流れ図を作るまでに、私は通常1週間程度をかけます。
そして、この手書き流れ図は1日ほど置いておき、別の仕事をしながらその合間に見直して、思いついたアイディアを追加して書き込みます。このようにしていくことで、骨太なプレゼンの流れが、次第に輪郭を現わしてきます。
先日も、私はこのようにして手書き流れ図を作っていました。
すると、私の席の横を通りがかったあるエグゼクティブの方が私の手書き流れ図を見て、興味深いことに、「私もプレゼンの際には、全く同じことをやっている」と言っていました。
同じことをやっている方は、意外と多いのかもしれませんね。
この次の「5.チャート作り」は、次回にしたいと思います。
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