オルタナティブ・ブログ > シロクマ日報 >

決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

クラウドファンディングでマイカーを

»

何かを始めたい、でも元手がないので始められない――そんな悩みを解消する手段として、オンライン上で寄付や出資を呼びかける「クラウドファンディング」のサービスが普及しつつありますが、ついに企業が自社製品を買ってもらう手段として活用を始めたとのこと。クライスラーの一部門であるダッジ(Dodge)が、昨年発売した小型セダン「ダート(Dart)」のキャンペーンサイトとして、こんなものを開設しています:

Dodge Dart Registry

DodgeDart1 

使い方は典型的なクラウドファンディングサイトと一緒。まず寄付を募る場合ですが、それぞれの「プロジェクト」を立ち上げることができ、募金状況を管理することとなります。もちろん全てのプロジェクトの目標はダートを手に入れる(のに必要なお金を集める)ことなのですが、各種オプションやエクステリア等々をカスタマイズすることが可能で、それぞれのプロジェクトが目標とする額は異なります。また当然ながら、「ダートが手に入ったら何をしたいか」といったアピールを行うこともできるようになっています。

DodgeDart2

これは実際にある方のプロジェクトを開いたところ。様々なオプションが付けられた黒いダートを購入したいとのことですが、3万ドルの目標額中、現時点で137ドル集まっています。面白いのが、どんなパーツを付けたのか、そもそもダートがどんなクルマなのか、プロジェクト画面上でも確認ができる点。ダートを購入したいと思ってプロジェクトを立ち上げた人だけでなく、そのプロジェクトを応援しようとサイトにやってきた人々にも、ダートの魅力がアピールされるようになっているわけですね。

DodgeDart3

もう一つ面白いのが、募金はパーツごとに行われるという点。例えば後で実車に乗せてもらった時に「パーキングブレーキのレバーは俺が寄付したんだぞ!」的な会話ができるわけですね(笑)。後から「やっぱり返せ!」となった時に、ブレーキレバーを外して返すことができる……などという行為を可能にするためではないでしょうが、話題性を高めるという点では効果がありそうです。

DodgeDart4

こちらは募集中のプロジェクト一覧。プロジェクトは個々のページに分かれていて、それぞれのURLをフェイスブック上などでお知らせして寄付を募ることができるわけですが、こんな風にまったく知らない人のプロジェクトも閲覧することができます。ちなみに先ほどの137ドル(6パーツ分)集めていたプロジェクトは、上のスクリーンショットの真ん中に位置しているもの。何でも野良犬を保護する活動を行っている方だそうで、ダートもその活動に使用したいのだとか。他にも現時点で募金が集まっているプロジェクトには、「なぜダートを手に入れようとしているのか」をきちんと書かれている方が多いようです。

最初このサイトを見た時には、正直言って「クルマが買いたいから協力してくれなんて言われても、力を貸す人なんているのだろうか?」と思ったのですが、確かにきちんと理由を説明されると、数十ドル程度なら出してもいいかもしれないな……という気にさせられます。よくクラウドファンディングのメリットとして、単にお金が集まるだけでなく「プロジェクトを応援してくれるファンを増やせる」という効果があることが指摘されますが、まさに同じ効果をこの"Dodge Dart Registry"も狙っているのでしょう。

そうだとすると、意外にこの「企業が自社製品のために運営するクラウドファンディングサイト」という発想、他にも応用できるのかもしれません。また「購入された後のストーリー」が見える化されるというのは、今後の製品の改善やバージョンアップの際にも役立つことでしょう。当然ながらある程度高価な製品が対象にはなりますが、今後も似たようなキャンペーンサイトが出てくるのではないでしょうか。

ソーシャルファイナンス革命 ~世界を変えるお金の集め方 (生きる技術! 叢書) ソーシャルファイナンス革命 ~世界を変えるお金の集め方 (生きる技術! 叢書)
慎 泰俊

技術評論社 2012-06-30
売り上げランキング : 22458

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

【○年前の今日の記事】

「革命のファンページ」では何が語られているのか (2011年1月28日)
「世界は変った。我々も変らねばならない」 (2009年1月28日)
機能としての商品名 (2008年1月28日)

Comment(0)