「ロボット法」が制定される日
雑誌'WIRED'2012年7月号の特集はロボット。ということで紙面/サイト上で様々な角度から最近のロボット関連の話題が解説されているのですが、個人的に興味を惹かれたのは「いまの法律でどこまでロボットを社会環境で使うことが許されるのか?」という話です:
■ No, You Can’t Use a Drone to Spy on Your Sexy Neighbor (Wired)
当然ながら解説は米国内の法制度が前提となっており、さらにロボットといってもヘリコプター型ドローン(何らかの目的を達成するために人間が操作、もしくは半自動で機能する飛行ロボット)を想定しているのですが、「ロボットを使ってお隣をのぞき見することは許されるか?」など、なかなか興味深い(笑)例が挙げられています。例えば:
- ロボットで盗撮してもOK?>そもそも盗撮という行為自体が犯罪なのでNG(当然です)
- ロボットを配達ビジネスに使用してもOK?>飛行物の商業利用を規制する法律に引っかかるのでNG
- 警察が捜査に使うのはOK?>公共の場所から監視などを行う限りにおいては、現行法の延長線上でOK
- 警察が自動車を追跡するのに使うのはOK?>可能だが長期にわたる追跡の場合には令状が必要
とのこと。注目すべきはここで挙げられているのが決して未来の可能性ではなく、やろうと思えばいまでもある程度まで実現可能な話であるという点です。たとえばカメラを搭載したロボットという例では、日本でも話題となったパロット社のAR.Drone(iPhoneから操作が可能)などがありますし、ジョギングのお供をしてペースメーカーの役割を果たしてくれるロボット"Joggobot"が開発中というニュースもありました。さらにGoogleの自動運転カーは米ネバダ州で公道の試運転を行う許可を得るという段階まで来ており、簡単な配送ぐらいはロボットにお願いする、なんていう日が来るのもそう遠くないかもしれません。
そうなると、「ロボットの社会利用」というテーマは技術的な側面より、むしろ法律面の方が問題になってくると考えられます。例えば先日、スラッシュドットに"米国で若者の「ダウンロード」離れ、代わりにストリーミングが普及"という記事が掲載されていましたが、ストリーミングサービスが人気を得ている理由の一つとして「すでに著作権問題がクリアされていること」が挙げられています。ロボットの場合も同様に、企業や消費者が「こんな使い方をしたい」「こんな使い方もできるのではないか」と考えた時に、どこまでルール面での整備が進んでいるかによってその後の実現度合が大きく変わってくるのではないでしょうか。
法律面を整備し、他国に先駆けてロボットの社会進出を促すことは、日本の産業政策という面でもプラスになると考えられます。ちょうど昨日、パシフィコ横浜で開催中の「G空間EXPO2012」に参加し、国土交通省主催の「G空間関連ビジネスにおける海外展開の方向」というシンポジウムを見てきたのですが、そこでアジア開発銀行のGil-Hong Kim氏が「日本にはGIS技術を輸出する際、日本国内でどのように展開してきたのか、どのような法整備等を行ったのかといったノウハウの共有も期待したい」といった趣旨の発言をされていました。GIS技術に限らず、あらゆる先進的技術の展開においては、技術そのものと同じぐらい「周辺環境をどう整備するか」が重要になります。「ロボット法」のノウハウも、多くの国々にとって非常に参考になることでしょう。技術と運用をパッケージにして他国に輸出するという道も拓けてくるかもしれません。
「ロボット法」と書いてしまうと、有名な「ロボット工学三原則」のようにSFめいた印象を与えてしまうかもしれませんが、実際には非常に現実的なテーマになりつつあると言えるのではないでしょうか。少なくとも著作権をめぐる議論のように、堂々巡りで何の未来も生み出さない、などといった状況にはならないことを願います。
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