Twitter にいよいよ収益が――でもちょっと不安も
大人気を誇りながら、常にビジネスモデルについて疑問が呈されてきた Twitter。そんな Twitter が企業アカウントへの課金により、ついに収益を手にするとのこと。しかし一抹の不安を感じさせるような事件も起きています:
■ Twitter Targets Revenue This Year From Starbucks, Whole Foods (Bloomberg)
Twitter Inc. plans to generate its first revenue this year from companies such as Dell Inc., Whole Foods Market Inc. and Starbucks Corp., which use the micro- messaging site to communicate with millions of customers.
“The idea is if they are getting value out of Twitter then we could add more value to what they are doing and we could get some revenue,” Twitter co-founder Biz Stone said in an interview today. “We think we’ll get to something this year, however simple, that shows we’re making some money.” He declined to give sales estimates for this year.
Twitter Inc. は今年度、Dell Inc. や Whole Foods Market Inc.、Starbucks Corp. など、Twitter を顧客とのコミュニケーション用に使っている企業から、初の収益を手にする計画である。
Twitter 創業者の一人である Biz Stone は、今日行われたインタビューで次のように述べている。「Twitter を使って利益を手にしているのであれば、彼らの活動をさらに価値あるものとし、そこから我々も収益を得れるのではないかということだ。今年はいくらかお金を手に出来るかもしれない。」彼は今年度の売上予測についてはコメントを避けた。
とのことで、予想されていた方も多いと思いますが、商用アカウントから売上を上げるということになりそうです。先日もニュースになっていましたが、例えば Dell は Twitter でのプロモーション活動により、300万ドル分ものPCを販売したとのこと。ちょっとは企業アカウントから Twitter に還元がなければおかしいってものです:
■ Dell、Twitterで300万ドルのPCを販売 (Ad Innovator)
ではこれで(どのくらいの収益が上がるかはまた別の問題として)ビジネスモデル問題は一件落着、となるのでしょうか。実は企業アカウントに関係して、こんな事件も起きています:
■ How not to use Twitter: HabitatUK as a case study (socialmediatoday)
Habitat という英国の家具店が開設した Twitter アカウント(@HabitatUK)が起こした、"Trending Topics"を悪用したスパム行為について。Twitter をウェブから利用されている方はご存知だと思いますが、最近 Twitter のサイトには"Trending Topics"という機能が追加されました。これは Twitter に書き込まれたコメントの中からキーワードを抽出し、文字通り「トレンドのトピック」を確認できるというもの。画面右サイドに表示され、クリックするとそのキーワードを含むコメントを確認することができるため、他人のコメントへと誘導する強力な導線になっています。
で、Habitat が何をしたか。表示されている「トレンドのキーワード」を確認し、それを全く関係の無い書込み(もっぱら Habitat の宣伝文)に埋め込んで、他のユーザーを誘導しようとしていたのでした。実はこの手法、Habitat に限らず他の多くのスパマーたちによって悪用されているもので、現在大きな問題となりつつあります。その意味では Habitat だけが責められる問題ではないのですが、企業アカウントがこのような行為をすることは許されないでしょう。また企業アカウント全体の印象を悪くし、ひいては「Twitter において宣伝活動を行うのは是か非か」という議論にまで至ってしまうかもしれません。
ここから先は想像に過ぎませんが、仮に(Twitter が収益を上げる唯一の手段として)企業アカウントへの課金が徹底されるようになった場合、Habitat のような問題が増える危険性があるのではないでしょうか。今回のように明らかなスパム行為は避けられると思いますが、アカウントを設置した企業が「お金を払っているのだから少しでも注目を集めなくては」というメンタリティーになり、現在の一部のSEO業者のような違法スレスレの手法を使ってこないとも限りません。もちろんそんな企業はフォローしなければ良いのですが、"Trending Topics"を利用した手法のように、フォローされずともアクセスを集める手法が研究されていくのではないかと危惧しています。
一方で何らかの形で収益を得なくては、サービスが継続できないのも事実。企業アカウントからの収益がその答えとなるならば、現在のような「コミュニケーションのプラットフォーム」と「宣伝活動のプラットフォーム」が共存できる仕組み(例えば問題行動を行っているアカウントを通報しやすくする機能など)を模索していって欲しいと思います。
< 追記 >
ReadWriteWeb に関連記事が掲載されていますが、こちらで「どうやってお金を手にするか」についてもう少し詳しい推察がなされています:
■ Twitter's First 2009 Revenue to Come from Large U.S. Corporations (ReadWriteWeb)
Services to be offered to the companies may include account verification, statistics and analytics, and multiple account management. However, almost any imaginable feature Twitter could offer is already being pushed by third-party services. Account verification, which has already been implemented for a handful of celebrities' accounts, is the only feature that only Twitter can provide, at least for the time being.
企業に提供されるサービスの中には、アカウント・ベリフィケーション(公式アカウントであることを保証するサービス)、統計情報とアクセス解析、複数アカウントマネジメント機能などが含まれると考えられる。しかしおよそ考えられる追加機能は、既にサードパーティーの手によって実現されている。Twitter だけが提供できるサービスは、既にセレブ・アカウントの一部で実施されているアカウント・ベリフィケーションぐらいしか現時点では存在しないだろう。
「企業アカウントに一律課金」ではなく、一種のプレミアムアカウントのようなイメージで、お金を払ったユーザーに対して追加機能を提供するのではないか、と。しかし ReadWriteWeb の言う通り、どこまで「お金を払いたくなるサービス」を Twitter 「だけ」が提供できるかは未知数ですね。最悪の場合、サードパーティーとの価格競争に陥るなんてことも……やはり一律で「営利目的のアカウントは課金」というポリシーにした方が良いような気がします(あくまでも企業アカウントからの収益に頼る、という場合の話ですが)。
【○年前の今日の記事】
■ 指紋認証付き鞄、という発想 (2008年6月23日)