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英暴動、ツイッターはマイナス面よりプラス面で貢献

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今年8月に英国で発生した暴動。ツイッターやブラックベリーなどが暴徒を組織化したとして糾弾されたのが記憶に新しいところですが(参考記事1参考記事2)、実際のところ、こうしたテクノロジーがどこまで影響を及ぼしたのか。興味深い調査結果が発表されています:

Social media ‘not to blame’ for inciting rioters (JISC)

英国の大学関係者によって組織された"Joint Information Systems Committee (JISC)"という調査団体が発表したもの。調査はツイッターに限定されたものですが、彼らは暴動中に投稿された240万件(後述のGuardian紙記事では260万件)のツイートを収集し、内容を分析。その結果、政治家たちが声高に主張したような「ツイッターが暴動を扇動している」といった状況は見られず、逆に「暴動で汚れた街を掃除しよう!」などの良い行いを促していた、と結論づけています。

ただしツイッターが不正確な情報を伝えてしまうという状況は確認されたそうで、「ロンドン・アイ(ロンドンにある巨大な観覧車)が燃えている」「ロンドン動物園の動物たちが逃げた」といったデマが見られたとのこと。この辺は東日本大震災やタイ水害の例を出すまでもなく、万国共通のようです。

より詳しい分析を読みたい、という方は以下のリンク先を確認してみて下さい:

Twitter and the riots: how the news spread (Gurdian)

また暴動中に影響力を持っていたツイッターユーザー200人についてもまとめられています(スプレッドシートの形式でデータをダウンロードすることも可能):

200 most influential Twitter users during the riots: are you on the list? (Gurdian)

これらを見ると、確かに「暴動で汚れた街を掃除しよう!」という運動に関連するユーザー(@riotcleanup)やハッシュタグ(#riotcleanup)、ツイートが何度も言及されたり、リツイートされたりしているのが分かります。暴徒がどこまでソーシャルメディアを利用していたかは別にして、この混乱状態をなんとかしようという動きがツイッター上で起きていたことは確かでしょう。暴動中には「ソーシャルメディアへのアクセスを規制してはどうか」という意見まで出ていたわけですが、それが短絡的な考え方であったことが分かります。

An in-depth analysis of a database of more than 2.6m riot-related tweets has revealed the ways in which the network was used during the disturbances. "Politicians and commentators were quick to claim that social media played an important role in inciting and organising riots, calling for sites such as Twitter to be closed should events of this nature happen again. But our study has found no evidence of significance in the available data that would justify such a course of action in respect to Twitter," said Prof Rob Procter of the University of Manchester, who led a team of academics conducting the analysis. "In contrast, we do find strong evidence that Twitter was a valuable tool for mobilising support for the post-riot clean-up and for organising specific clean-up activities."

暴動に関連する260万件以上のツイートを分析した結果明らかになったのは、ツイッターがこの大騒動の間、どのように使われたのかという点だ。調査チームを率いたマンチェスター大学のロブ・プロクター教授は次のように語っている。「政治家やコメンテーターたちはすぐに『ソーシャルメディアが暴動を引き起こし、組織化するのに重要な役割を演じた』などと主張し、こうした事態が繰り返されないようツイッター等のシャットダウンを要求していました。しかし調査の結果、入手されたデータを見る限り、ツイッターに関してはそのような対応を正当化できるような証拠は発見できなかったのです。逆にツイッターが暴動後の清掃活動を組織化し、それに対し支援を促す上で役に立つツールであったことが明らかになりました」。

良くも悪くも、今年がソーシャルメディアに大きな注目が集まった年であることは間違いないでしょう(そういえば今年の漢字も「絆」でした)。時には過大に、時には過小に評価され、その善悪についても様々な指摘がなされました。いずれも事後になってしまうのが残念なところですが、上記の英暴動とツイッターの関係に関する調査のように、冷静な分析を行うという動きも少しずつ生まれています。

今回は幸いなことに「プラスの面が大きかった」と判定されたわけですが、デマにおける影響力のように、「マイナスの面が大きかった」と判断される場合もあるでしょう。しかし少なくともデジタルメディアには、後からデータを取得・分析が可能であるという長所があり、検証を続ける中で「どのように活用すれば価値が最大化されるのか」といった知見が確立されるのではないでしょうか。2012年も様々な出来事が起きると思いますが、その中で少しずつソーシャルメディアのプラス面が引き出されて行くことを信じたいと思います。

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小林啓倫

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