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カリフォルニア州、電力備蓄の義務付けを検討中

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昨日はインプレス主催の「第2回スマートグリッドコンファレンス」に参加した後、シリアル・イノベーション今泉さんが世話人として開かれているスマートグリッド勉強会に参加してきました。その中でも重要なテーマの1つとして取り上げられていたのが、海外における規制や法整備の動向。特にスマートグリッドの場合、関連技術を輸出産業として育成することが求められているだけに、諸外国でどのようなルールが施行されようとしているかは無視することができません。

というわけで、今日もこんなニュースをご紹介しておきましょう:

New Calif. bill would mandate grid storage for peak periods (VentureBeat)

A new bill pitched in the California Assembly would mandate that 2.25 percent of the power used during peak hours be stored and essentially on-tap by 2014. By 2020, utilities would be required to store 5 percent of their peak loads. This may not sound like much, but the change could mean massive investment in energy storage systems and innovation.

2014年までに、ピーク時に消費される電力量の2.25パーセント分を備蓄し、すぐに使えるようにしておくことを義務付ける法案がカリフォルニア州議会で議論されている。さらに2020年までには、公益企業各社はピーク量の5パーセントを備蓄することが求められている。この量はそれほど大きくないように感じるかもしれないが、エネルギー貯蓄システムへの巨額の投資と、イノベーションが求められることになるだろう。

とのことで、EVの増加等による電力需要の拡大を見越して、ピーク時への備えを電力会社に義務付けると。また備蓄インフラを整備させることにより、出力が不安定な再生可能エネルギー電源を導入する下地をつくる、という狙いもあるようです。いずにせよまだ法案の段階ですが、仮に議会を通過すれば、スマートメーターで収集した情報の開放を求められたばかりのカリフォルニア州の電力各社にとって、新たな火種になることは想像に難くありません

一方で蓄電池関連メーカーにとっては、今回の動きは大きなビジネスチャンスになるでしょう。実際、

Companies like EnerVault and Prudent Energy, makers of large, potentially grid-scale batteries, could spearhead another Gold Rush in California. Both companies have recently raised millions of dollars to build up their manufacturing operations. And both use a “flow battery” design to store large amounts of power more cheaply than their lithium-ion competitors. Undoubtedly, both startups would love to see the new bill and others like it approved in the near term.

EnerVault や Prudent Energy といった、大型で送配電網用に使用可能な蓄電池を製造しているメーカーは、カリフォルニア州における新たなゴールドラッシュの最先端に立つことになるかもしれない。両社は最近多額の資金を調達し、生産能力を拡大させている。また両社は、リチウムイオン電池よりも安価で大量の蓄電が可能な「フロー電池」を取り入れている。間違いなく両社はこの法案が早期に可決されることを願っているだろう。

ということですから、明確な意図があるかどうかは別にして「産業育成」という効果も今回の規制では狙えそうです。

しかしいくら技術革新が進んでいるとはいえ、まだ大型の蓄電池は決して安くありません。さらに単に蓄電池を置けば(水のように)電力を出し入れできるというものでもありませんから、電力会社にとってはコストだけでなく大きな労力が求められるルールになることでしょう。この法案がどのような顛末を迎えるのか、そして他の州や国々に波及する可能性はあるか、注視しておく必要がありそうです。

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