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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

遅ればせながら、インフォバーンCEOの小林弘人さん(@kobahen)さんが書かれた『新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に』を読了。紹介がてら、少し感想を書いておきたいと思います。

小林弘人さんと言えば、先日3周年を迎えたばかりのギズモード日本版や、WIRED日本版、雑誌『サイゾー』など数々のオンライン/オフラインメディアに関わってこられたことで有名ですよね。その小林さんが最近の出版業界を俯瞰し、文字通り新世紀のメディアはどうなっていくのか、そこに関わる人々はどう行動していくべきかを論じたのが本書。ジャーナリスト的に個々の事例を客観的に分析しつつ、旧態依然とした出版業界を強い口調で批判する箇所もあり、

これまで書いてきたことは未来の菊池寛(文藝春秋の創業者)や野間清治(講談社の創業者)、村山龍平(朝日新聞の創業者)に向けて書いた「新しいメディア人よ、出よ!」だと思ってください。(295ページ)

という小林さんの意志が強く出ている一冊だと思います。個人的には納得するところが多かったのですが、従来の意味での出版/メディア関係者にとってはカチンとする本かもしれません。

個人的に本書から最も強く感じたメッセージの1つが、「まったくのゼロベースでメディアを再構築しなければならない」という点です。いくつか関連する箇所を引用してみると:

もうちょっと整理すると、いままでの「出版」という言葉がすでに死滅しているということで、これからこの「出版」という言葉を再定義する必要があるかもしれない、というのがわたしの問題意識なのです。(13ページ)

多くの人々は、自分がいま携わっているメディアこそ最高のものだと考えがちです。手塩にかけて育んできたコミュニティのユーザーたち、あるいは何年も費やし完成形を見いだしたデザインや使い勝手など、そのメディアにとっての財産なのですから当然のことです。しかし、新たなプラットフォームはそれを切り捨てるかのように迫ります。これは運営者にとては耐え難く、ときに敵対的な態度を取らせたり、あるいは誤解をもたらしたまま、そのプラットフォームに乗り換えることを躊躇させてしまいます。(98-99ページ)

数千人規模で人が必要なメディアが、今後もその規模を維持できるかどうかは、経営課題における範疇かと思われます。しかし、わたしがよく呼ばれる新聞社などの講演では、必ず「ネットは嘘ばかりだ。わたしたちのようなプロがこれからも必要である」という主張を耳にしますが、プロはこれからも必要であることはプロであるわたしも知っています。しかし、ジャーナリズムをまっとうするために、その巨大組織が必要だ、という理論にはどこかひっかかりがあるわけです。(268ページ)

ちょうど先日、クリス・アンダーソン氏もインタビューの中で「メディアという言葉はもはや古くさいものになってしまっていて、人々の思考を邪魔している」という発言をされていました。小林さんは主に出版関係者の側が古いモデルにとらわれていることを糾弾していますが、それは(これまでの)読者である私たちも同じではないでしょうか。情報を届けるプロがいて、彼らが組織を形成して活動を続けるのがメディアである――そんなイメージを無意識のうちに抱いてしまい、メディアについて自由に発想することを妨げてしまっているというケースがあるはずです。例えばメジャーなブログが会社形態で運営されるようになったり、芸能人ブログを本にして儲けたりというのも、よく考えてみれば従来型のモデルをなぞっているに過ぎません(決してそれが悪いという意味ではありませんが)。

また昨日の記事で、「情報の量よりもフィルタリングの変化の方が問題だ」というクレイ・シャーキー氏の言葉を紹介しましたが、これも従来の考え方が新しい発想を妨げている例の1つでしょう。「情報のフィルタリングは発信者が行う」という考え方は発信コストが高かった時代の発想であり、それがほぼゼロになった現在では、読者の側が発展させつつあるフィルタリング能力に依存してしまう(極端な話をすれば、記者だけを雇って取材した内容をそのままネットにアップしてしまう)というのも1つの戦略になるはずです。また「フィルタリングこそが新しい時代のメディアである」と捉え、機械的なアルゴリズムを開発する(ex. Google)、図書館司書のようなサービスを個人向けに提供する、といったアプローチも可能なはず。それが正解かどうかは別にして、フィルタリングという要素1つとっても、無数のアイデアを編み出せることが分かるでしょう。

小林さんは出版関係者に対して、こんなメッセージも投げかけられています:

これはウェブというインフラが生まれたから可能になった、新しいコンテンツ・ビジネスなのです。よって、ネットにおけるコンテンツ・ビジネスは、「なんでもあり」のフリースタイルであり、経営的には「ビジネスモデルを発明する」というくらいの態度で臨むべきでしょう。(175ページ)

この意見に強く賛成します。既存のメディアで成功した仕組み、成功した組織をそのまま持ち込んでも、ネットの世界で大きな成功を収める可能性は低いでしょう。新しいサイトを立ち上げる際には、自分たちは新しいビジネスモデルを創ろうとしているのだという態度で臨むこと。広い意味でのメディアに関わる人々にとって、この言葉は忘れてならないのではないでしょうか。

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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