「監視カメラから人物検索」秋葉原で実証実験中
監視カメラの映像を瞬時に検索し、特定の人物を識別する――以前から研究されていた技術ですが、いよいよ日本でも実用化の段階まできているようです。東京・秋葉原で、今月30日まで実証実験が行われているとのこと:
■ アキバ実証実験:万引き常習犯を探せるか 防犯カメラの画像を高速検索 (毎日jp)
東京・秋葉原の家電量販店で1日、店内を撮影した動画から、特定の人物が写っている場面を検索して防犯に役立てる実証実験が始まった。日立製作所が開発している画像検索システムを使い、産学官からなる「秋葉原先端技術実証フィールド推進協議会」(会長:廣瀬通孝・東京大大学院教授)が運営。6月30日までオノデン本店で実施する。
実は日立製作所が開発した技術だったりするのですが、ウェブサービスに興味のある方なら画像解析技術は特に目新しい話ではないでしょう。(誤解を招く表現でした。詳しくはこちらをお読み下さい。)また顔認識というのも、最近ではデジタルカメラに普通に搭載される機能になりました。その意味ではこうしたシステムがいつ登場してもおかしくない状況だったわけですが、いよいよ実用化に向けて最終段階に入ったというところでしょうか。
問題は、このシステムが実用化された際に、どんな用途で使われるか。昨日(2009年6月2日)の日本経済新聞にもこのニュースが取り上げられていたのですが、記事のなかでこんな解説がありました:
秋葉原では08年6月、7人が死亡する無差別殺人事件が起きた。システムが実用化できれば不審者の追跡など防犯機能の強化が期待できる。買い物客が売り場をどのように移動したかもわかるため、「購買行動の分析にも応用できる」(協議会)とみる。
つまり監視カメラ本来の目的である「防犯」という機能の強化に加え、商売への貢献のために使われる可能性がある、と――ここで少し不安を感じます。防犯機能の強化という面については異論は少ないと思いますが、購買行動の分析についてはどうでしょうか?もちろん「ある特定のお客の行動を(調査員がこっそり追跡して)把握し、棚割などの改善に役立てる」ということは以前から行われていたと思いますし、お店側が入手した様々なデータは厳密に管理されることと思います。しかし、管理のあり方はどうあるべきか、そもそもお客様に「プライバシーの侵害ではないか」といった不安を与えないかどうか、慎重な議論が必要ではないでしょうか。
ちょうど1年ほど前、同じようなテーマのエントリを書いていました:
■ 看板にプライバシーを侵害される日 (シロクマ日報)
■ 閲覧者をカウントする屋外広告 (Polar Bear Blog)
いずれも画像認識技術の進歩により、一企業、一店舗レベルでお客個人を認識することが可能になり、従ってプライバシー侵害のリスクも高まっていることを紹介したエントリです。それから1年、関係者の間では議論が深まっているのかもしれませんが、私たち一般消費者に分かるような形で「こういった技術はこういうルールで使います、だから大丈夫です」といったようなメッセージが発せられている気配は感じません。一時期話題になった、Google ストリートビューのプライバシー侵害問題よりもある意味で大きなインパクトがある技術だと思うのですが……。ストリートビュー同様に、「フタを開けてみたら批判が予想以上で対応に大わらわ」などといった事態を招かないためにも、関係者は積極的に情報発信・情報公開していくべきではないでしょうか。
ちなみに秋葉原先端技術実証フィールド推進協議会のウェブサイトは以下の通り。今回の実験後、プライバシー問題も含めた考察が掲載されることを期待します:
【○年前の今日の記事】
■ 感動力 (2008年6月3日)
■ バラ売りツールとしての YouTube (2007年6月3日)
■ 夫婦の次は (2006年6月3日)