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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

バラ売りツールとしての YouTube

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今夜(正確には昨日の夜ですが)は『人志松本のすべらない話』のゴールデンタイム特別編が放送されていました。お笑い好きの僕としては当然チェック……はせず、録画もせず、していたのは娘の世話。興味がなかった訳ではなく、「あとで YouTube をチェックすればいいや」と思っていたからでした。

テレビ放映されている内容を、勝手にネット上で公開することが違法であることは理解しています。しかし法律上の問題を別にさせてもらえば、YouTube は本当に便利。特にお笑い番組のように、画像が粗くても良いもの・短い時間で完結するもの・他のコンテンツとのつながりがないもの(連続ドラマのようにこれまでの話を見ていないと理解できない、ということがないもの)は、小さい画面で再生時間制限のある YouTube でも十分に楽しむことができます。これはもう、説明しなくても実感されている方が多いでしょう。

しかしお笑いのコンテンツを観ていて思うことは、YouTube の魅力は単に「テレビ番組がいつでも観れる」という点だけではないということです。都合の良い時間にテレビ番組を観たいのであれば、ずっと昔からビデオデッキやHDレコーダーなどのツールがありました。ところがこれらのツールでは、録画した番組を頭から観ていくしかありません。もちろん早送り・巻き戻しなどの機能はありますが、例えば「昨日の『すべらない話』のケンドーコバヤシの話だけ聞きたいなあ」と思っても、狙った部分を頭出し再生することは不可能。ところが YouTube では、例えば「すべらない話」「ケンドーコバヤシ」などのキーワードで検索すれば、すぐに以下のようなコンテンツをヒットさせることができます:

そう、どなたか優しい(?)方がケンドーコバヤシの部分だけを切り抜いてアップしておいてくれるのです。これは「10分間ルール(一般ユーザーは再生時間が10分を超えるコンテンツをアップできない)」がマイナスではなく、プラスに作用したと言えるかもしれません。いずれにせよ、YouTube はコンテンツをバラ売り(無料だけど)してくれるツール -- さらにバラした内容にタグまで付けて探しやすくしてくれるツールなわけです。

「バラ売り」は時間の節約だけでなく、コンテンツの新しい楽しみ方も可能にしています。例えば「ケンドーコバヤシおもしろいなあ、他のビデオも観たいなあ」と思えば『すべらない話』以外のコンテンツも探せるし、「この投稿者の笑いのセンスはいいなあ、他に彼/彼女が面白いと思っている芸人を知りたいなあ」と思えばそのユーザーが他にアップしているビデオをチェックすればOK。つまり「番組」という単位だけでコンテンツを観るのではなく、「芸人」や「芸風(?)」といった基準で横串に観ることができる -- これもいまさら説明しなくても「ずっと前からそんな使い方をしてるよ」という方が多いでしょうが、改めて考えてみると画期的なことではないでしょうか。

他のエントリでも書いたのですが、「テレビが登場したために、古典芸能や舞台での笑いが廃れてしまった(すなわちテレビに合う笑いが生き残った)」とよく言われます。もしかしたら、今度は「バラ売り+再編成可能ツール」としての YouTube が日本の笑いを変えてしまうのかもしれません。例えば日本の芸能界では「若手時代はコント/漫才等のネタで売る->中堅以上になったらトーク/司会で売る->大御所は映画を撮る」みたいなキャリアパスがありますが、やろうと思えば無尽蔵にネタを提供できる YouTube 時代には、ネタだけに特化して生き残る芸人なんてのも増えるのかなぁと想像しています。

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