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子供が生まれてからあまり足を運ばなくなってしまったのですが、最近映画館に行くと、上映前に「高校生友情プライス」のCMを目にすることが多かったように思います。導入されてから3年ということで、このまま定着するのかなと思っていたら、残念ながら休止が決定したとのこと:

「高校生友情プライス」09年6月で休止へ (Variety Japan)

その理由について、こう述べられています:

高校生友情プライスは、高校生が3人1組で映画館に来場すると、1人1000円で観賞できる。同実行員会によると、この割引を利用している高校生は、現在では全体の0.8%ほど。人数的には100万人を超えているものの、そのパイがどうしても増えないのだという。

ということで、若干意味不明な文章ですが、「映画を観に来る高校生は(1年間で?)100万人ほど。『高校生友情プライス』導入後もこの数字は増えていない。また『高校生友情プライス』を利用したのは高校生全体の0.8%しかいない」ということのようです。要は「効果無し」と判断されたと。

ではなぜ割引サービスに効果が無かったのか。Variety Japan の記事では「若い層の映画館離れ」という言葉が使われていますが、他の「~離れ」という言葉同様、単に価値観の変化で片付けてしまうのは安易でしょう。以前も取り上げた(その1その2)本『日本映画のヒット力』で、ちょうど「高校生友情プライス」が生まれた背景としてこんな解説が載っています:

こうした割引は、今では当たり前になっているが、開始されたのはそれほど昔ではない。レディスデイはともかくとして、"夫婦50割引"、"高校生友情プライス"は、全国映画市場調査が行われてからの実施であった。

(中略)

こうして、いくつか具体化してきたことがあった。

  1. 映画は女性の方が好きであること。全国公開型の作品では、10%ほど多く女性のほうが男性より映画を観ている。
  2. 単館系の作品では、さらにその傾向が強まり、20~30代の人が中心になって観ている。つまり映画は、若い人の娯楽と見ていい。
  3. 職業別では、A、Bとも圧倒的に会社員の占める割合が多く、全体の半分強を占める。次いで学生、3位が主婦、4位フリーターとなっている。この1・2・3を踏まえると、男女とも、40代になると急激に映画を観なくなることがわかる。

とのこと(ちなみに上記のAとは全国公開型劇場の観客、Bは単館系公開劇場の観客)。またその後行われた調査では、半年に1回以上映画館で映画を観ている中高生は男子で63%、女子で77%だったそうです。これらの調査は2001年から2003年にかけて行われたもので、また詳しい生データが掲載されているわけでもありませんが、「まだ若い人は映画館で映画を観ようとしている」という可能性を示していると言えるでしょう。

別に高校生が映画嫌いになった訳ではないとして、「高校生友情プライス」に人気が出なかった理由は何か。Variety Japan の記事では、こんな記述もあります:

3人で集まって映画を見に行く機会は少ないのでは、という見方もあり、終了を決定したとみられる。

確かに(古い考え方かもしれませんが)「映画といえばデート」というイメージがありますから、なぜ「2人で2,000円」ではなく「3人」という単位にしてしまったのか、理解に苦しみます。またこのニュースに関するブログや各種コメントを読んだのですが、「当の高校生達がこの割引サービスを知っていたのか?」と指摘する声が多くありました。そう言われてみると、「高校生友情プライス」の宣伝を、映画館以外で観た記憶がありません。つまり「何らかの優遇策があれば中高生はもっと映画を観に来るかもしれない」という前提があった上で、優遇策の作り方や、そのPRに問題があったのではないでしょうか。

『日本映画委のヒット力』でも指摘されていますが、「高校生友情プライス」以外にも、日本の映画館は最近さまざまな割引サービスを導入しています。そうした場当たり的な割引策によって、逆に「1,800円(高校生の場合は1,500円)出して映画を観るのは損だ」「なんか割引があるはずだけど、複雑でよく分からない」といった印象を与えてしまっている可能性もあるでしょう。米国などに比べ、一回り高い日本の映画料金。無意味な割引サービスを導入したり、割引サービスが乱立してPRに腐心するのであれば、思い切って「高校生以下は500円、一般は1,000円」のような分かりやすい価格体系を導入してしまうのも手かと思います。

いずれにせよ、「高校生友情プライスは無意味だった」で終わらせるのではなく、その経験からより人々が望むサービスが生み出されることを願います。ついでに言えば、僕らのような小さな子供がいる家族でも、映画が観やすくなるような仕組みを生み出してくれると嬉しいのですが(実は本当に言いたかったのはココだったりして)。

アキヒト

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コメント
H.R 2008/06/08 12:01

>なぜ「2人で2,000円」ではなく「3人」という単位にしてしまったのか、理解に苦しみます。

まったくの推論ですけど、あからさまに「カップル優遇!」という姿勢を出すことにためらいがあったんじゃないでしょうか。
今すでに一人で映画館に行くのは「一人でファミレス」と同じくらい抵抗があるのにこれ以上カップル色が強まると恋人のいない男はさらに映画館に行きづらくなる気がします。
カップル割引ではなく「二人で」としても、やはり男同士で使うにはどこか気まずい空気になる気がします。
まぁ女の子二人の客は増えるかも知れません。

独り身の男が減ったところで女の子とカップルが増えれば合計は十分プラスであるとは思いますが、映画館側の配慮なんじゃないでしょうか。

もと 2008/06/08 19:25

自分は単純に「デートなどで二人で映画に行くのは普通だから」既存の客に割り引きが適用されないように、3人に設定したのではないかと思います。

アキヒト 2008/06/10 12:08

> H.R さん

コメントありがとうございます。
確かに、「あえて」カップルを外したという可能性もありますね。3人という単位にすることで、捕らえられていない層を映画館に呼び込みたいという意図があったと。その思惑は分かるのですが、だったらもうちょっとPRの仕方があったんじゃないかと……まぁ外野の後知恵だろ、と言われてしまいそうですが。

> もとさん

同じく「2人で行くのは普通だから」ということですね。既存のお客様でも割引することによって、さらに足を運んでもらうという方向性もあったと思うのですが、いずれにしても今後の対応に期待したいと思います。

おおた 2008/06/10 13:24

 この『友情プライス』のコンセプトは、「将来の映画ファンを増やす」と開始時のインタビューで見かけました。若い人に映画を見る楽しみを若いうちに知って欲しい、と。
 かといって単純な値下げでは映画館の経営に悪影響を与える可能性もありますので、ある意味団体割引っぽい形にしたのではないかと思います。
 コンセプト自体は悪くないとは思うのですが、やはり宣伝が下手だったかなぁ、と思いますね。
 あと、今時の若い人は2人も友達がいない…というのはブラックジョークとしても、小学生ですら友人と遊ぶ際のアポイントメント取りに苦労するご時世ですから、「映画見ている暇なんかないよ」という一面もあるかもしれませんね。もちろん「遊んでいる」若者もいるでしょうから、その二極化が進んでいるといいますか。


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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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