「セカンドライフ出店」のマイナス面
しつこいですが、またまた Second Life の話。なんだかんだ言いながら、目新しさもあって頻繁にログインしています。いまの楽しみは、現実世界の有名企業がオープンした施設めぐり。さんざん報じられている通り(例えばこの記事とか)、日本の企業も多数出店していて、言うなれば東京観光・はとバスツアーの気分。
さすがに企業が開設したバーチャル店舗は美しく、楽しい仕掛けが用意されているところも数多くあります。しかし歩き回っていると、違和感を感じるのを否定できません。というのは、ほとんどの店舗がガラガラという点。時間帯によるのかもしれませんが、だだっぴろい空間にいるのは自分一人、ということもしばしばです。これって、企業のブランドイメージにマイナスなのではないでしょうか?
確かに「セカンドライフにあの有名企業が出店!」という話題性が期待できる現在では、出店すること自体が目的なのでしょう。しかし閑古鳥が鳴いている店舗をオープンさせておくことが、果たして企業にとってプラスなのでしょうか。例えば、鳴り物入りでオープンした商業施設がガラガラだったら「この企業って人気ないのかな?」って思いますよね。実際、リアルの店舗では「ここは人気があるな」と感じさせるために、わざと人混みを多くする/多く見せるような仕掛けをすると聞きます。バーチャルとはいえ、ガランとした店舗を放置するのは得策ではないでしょう。
実際、アメリカの企業では「セカンドライフ撤退」を始めるところがでてきているそうです:
■ Virtual marketers have second thoughts about Second Life (Los Angels)
記事によれば、
- Starwood Hotels & Resorts Worldwide Inc. -> セカンドライフ店舗を閉店し、NPO組織 TakingITGlobal に土地を譲渡する予定。
- Dell -> 土地があるだけで放置されている。
- American Apparel -> セカンドライフ店舗の窓には「このお店は閉店されました」というサインが。
とのこと。また日産が有名な「自動車の自動販売機」を改め「クルマのアミューズメントパーク」型施設をオープンしたものの、ユーザーからは厳しい意見が寄せられていることなどが紹介されています。実際、僕も日産の新サイトを訪れてみたのですが、広い施設内ですれ違ったのは4、5人だけでした(日本時間で午前1時ごろの話。滞在時間は15分程度)。
さらに記事内では、アクティブユーザー数が減少に転じていること(今年5月から6月にかけて2.5%減)、リンデンドルに変換される現実通貨の額も減少していること(今年3月の730万米ドルがピークで、6月は680万米ドル)などが報じられています。その結果、企業の仮想世界進出をサポートするコンサルティング会社は、セカンドライフ以外のサービス(バーチャル版"Laguna Beach"、Entropia Universe、Gaia Online など)への進出を提案することが多くなっているとのこと。この辺は、先日書いたエントリ「セカンドライフは時代遅れ?」とも一致していますね。
現実世界での出店であれば、「商圏」という発想があり、そもそもある程度の来客が見込めるところに店を構えるのが普通でしょう。ところがセカンドライフではパブリシティ効果狙いのせいか、もしくは「テレポート」機能に期待を寄せているせいか、来客数にはあまり関心が払われない -- しかも土地が自由に増やせるが故に、企業が進出すればするほど人口比率が減る=ますますにぎわいが減る、という悪循環が起きているような気がします。出店による影響を冷静に分析する企業が増え、またセカンドライフ以外の受け皿が登場してくれば、日本でも「セカンドライフ撤退」を決断する企業が出てくるのではないでしょうか。