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防災マッシュアップ

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最近、日本語版が発売された『ウィキノミクス』(WEB2.0時代のコラボレーションがもたらす革命を論じた本。必読です!)。その中にこんな一文があります:

政府関係機関は公共データの大きな発信源であり、無限の公共サービスを生み出すプラットフォームになれるというのに、その大半がほとんど利用されずに終わっている。私企業やグリーンピースなどの各種団体のほうが、新しい技術を使って情報を広くゆき渡らせ、事業を後押しするという面ではるかに先を行っている。

確かに政府や自治体は私たちに欠かせない情報の宝庫なのに、アクセスしようとすると大きな労力を費やさなければならない時がありますよね(その割にはデータ流出事件が起きていますが……)。彼らも努力をしているはずですが、なかなか市民に受け入れられる形にならないのが実情のようです。例えば今日の読売新聞ホームページに掲載されていた記事も、そんな例の1つでしょう:

府防災メール 登録伸び悩み10万人配信可能わずか6508人 (YOMIURI ONLINE)
※上記はパーマリンクではないので、まったく異なる記事にジャンプする可能性があります。

今年3月から大阪府が始めた「おおさか防災ネット」に、防災情報を携帯電話にメール配信するサービスがあるそうなのですが、その登録者が伸び悩んでいるそうです。専用アドレスに空メールを送るだけで登録完了、という現在一般的に行われている仕組みにも関わらず、「府内の携帯電話加入者数約720万人に対し、3月28日の開始から4月末の登録者は5249人、5月は1259人。」という状況とのこと。

大阪府は「PR不足が原因」と分析しているそうですが、「防災情報->携帯電話メールで配信」という発想に囚われなくてもよいのではないでしょうか。同じ情報をPCメールで見たいという人もいれば、(普段チェックする)ネットで見たい、電話で知りたいという人もいるでしょう。また災害という非日常的な状況が訪れたとき、思いもよらぬルートで情報が求められるかもしれません。要は様々な「情報の出口」「見せ方」が用意されているのが理想なわけです。

しかし政府や自治体の力だけであらゆるシステムを構築するのは大変 -- ということで、『ウィキノミクス』で提言されているのはAPIの活用。データを誰でも利用可能な形で用意しておけば、後は様々な企業・組織・人々が最適な仕組みを作ってくれるという発想です。実際、ハリケーン・カトリーナの事例を紐解くまでもなく、公共情報が様々なツールとマッシュアップされて活用されたケースは既に存在しています。日本でも同様の事態になれば、民間の力が求められることになるでしょう。

実際、災害などで交通機関に乱れが出たときに、自動的にPC上で通知してくれるウィジェットなんかがあったら便利だと思います。まさかそんなものを政府が作ってくれるとも思えないので(作ってくれても使いづらそう)、せめて様々な人々・組織が参加できる仕組みを用意するような姿勢に転じてくれると良いのですが。

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