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IT技術者教育に携わって25年が経ちました。その間、変わったことも、変わらなかったこともあります。ここでは、IT業界の現状や昔話やこれから起きそうなこと、エンジニアの仕事や生活について、なるべく「私」の視点で紹介していきます。

MCP試験の作り方

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ここまで書いてきたとおり、1つの試験問題は1つの知識を判別すべきであって、複数の内容を含めてはいけない。AとBの両方の内容を含む問題を間違えた場合、AとBのどちらを理解していないのか、あるいは両方理解していないのかが判別できないからだ。

しかし、現実の問題は複数の内容が複雑に絡み合う。絡み合った問題を解きほぐして、単純な問題に置き換えるのも力量だ。知識を問うのではなく、現実的な問題解決能力を調べるため、問題文にはあえて複数の項目を含めるというやり方もある。

マイクロソフト認定技術者プログラム(MCP)の、上位資格試験には複数の項目が複雑に絡み合った問題が含まれる。「確認テスト」としては望ましくないのだが、一人前のエンジニアの知識とスキルを判定するには、むしろこの方が良いという考え方もある。ただし、この場合、試験結果を見ても、どこを学習したら良いかを判定することはできない。

MCP試験は必要な知識項目と出題比率が公開されているが、どの問題がどの項目に対応するかは分からない。1問が複数の項目に対応しているのではないかという噂もある。あくまでも噂だが、そう考えた方がつじつまが合う。

特に良問の評判が高かったのは、Windows 2000のディレクトリサービス(Active Directory)設計の出題だ(同じ傾向の試験は現在提供されていないため、現行のMCP受験にはあまり役に立たないことをお断りしておく)。

試験では、最初にシナリオが示される。そこには、架空の会社の経営状況やIT環境、経営者の意見や、ITマネージャの意見、IT担当者や一般社員の意見が含まれる。

受験者は、現状を分析し、将来の目標を実現するために何をすればいいのかを考える。

シナリオには、解答と無関係な内容も含まれる。現実でも、関係者にインタビューした結果の一部は、ITシステムと何の関係もないということはよくある(関係ないかどうかはシステムを構築する過程で初めて分かることも多い)。

噂では、1つのシナリオに対して20問程度が割り当てられており、1回の試験ではそのうち10問しか出題されないということだった(これも真偽は分からない)。シナリオには20問すべての解答を導けるようになっているのだが、1回の受験では出題されない問題があるため、その問題に対応した項目は「試験に無関係な内容」と認識されてしまうということだ。

無駄な情報を捨てるのも重要な技術なので、「プロフェッショナル」を判定する試験としては間違っていない。しかし、試験の結果を元に、今後の学習に役立てるのは難しい。職業柄、MCP試験の対策を聞かれることは多いのだが、「テキストで知識を習得し、演習で操作方法を身に付け、応用分野を考える」という当たり前のアドバイスしかできないのが正直なところである。

NHK取材中の宮崎奈穂子さん
▲テレビ番組の取材を受ける宮崎奈穂子さん

たとえば、路上ライブの場所の選定基準は複雑な条件が絡み合う。基本は人通りが多く、しかも通行の邪魔にならないところだが、両方の条件を満たすことは難しい。

決まった曜日の決まった時間にいる方が固定客をつかみやすいが、通報される確率も上がる。

雨の時は屋根のある場所が必要だし、取材が入るときは、スタッフの交通の便も考えないといけない。

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