会社が頭から腐っても、茹で蛙状態ではそれもわからない…
昨年の夏に出版された本を気に入って何回か読み返しています。その本は、産業再生機構のCOOだった冨山和彦氏の「会社は頭から腐る」です。いわゆる再生物語の羅列かと思い、事例収集の気持ちで読み始めましたが、経営哲学書に近い内容だと感じています。
産業再生機構の成り立ち、それから外部へ発信されたメッセージにより、かなり歪んだイメージを持っていましたが、実際の活動は非常に地に足が着いたものであったことを再認識しました。それとともに、冨山氏の考えが、いわば机上の理論でなく、実体験を基に生まれてきたものであることに大きい共感を感じました。
財務や経営論だけでコンサルティングを行う人は大勢いますが、自らが会社を経営し、破綻寸前までの憂き目にあい、その中で会社を再生した経験は、他のコンサルタントやいわゆるファンドがらみの起業再生請負人とは一線を画するものだと思います。やはり、自ら経験するということが、コンサルティングを行うにしても力の源泉になることを痛感させられます。自らが会社を経営すると痛感する、痛み、経営が傾く問題の本質を、経験から的確に把握するとともに、再生していく過程で必要な痛み、それとともに合理性だけでなく生き物である人間をどのようにトリートメントしていくか、その中での信念は見事だと思います。
大きい会社の歯車として経営者になっていくことが標準的なスタイルである日本の企業経営に関して、大きい指摘も行っていますが、目の前の問題を解決していく上でも示唆が多い内容だと思います。
「会社は頭から腐る」という強烈な題名ですが、「ゆで蛙」状態で腐裡始めたことを感じることのできない会社や組織、そしてそのことを認めることができない経営層、マネージメント層には耳に痛いか、他人事のように感じることも多いと思いますが、多くの会社はその兆候が現れているのではないでしょうか。
コンサルタントはもちろんのこと、心ある会社のマネージメントにも是非目を通していただきたい一冊です。