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紛争やチェルノブイリとは全く別の顔を持つ多数の天才的IT技術者を輩出したIT大国、ウクライナの真実の姿に迫る。

インタビュー第6弾:ウクライナの元閣僚、フィンテック起業家、ディミトリ・デュビレット氏とのインタビュー

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ウクライナ政界にはIT業界出身の閣僚、政治家が沢山いることで知られています。過去の記事でも触れた顔ぶれだけでも以下が挙げられます:

  • ゼレンスキー大統領のもとウクライナ大統領府のデジタル政策を牽引したテンプレート・モンスター創業者、元IT起業家、政治家のデビッド・アラハミヤ氏
  • ゼレンスキー大統領の当選にソーシャルメディアを駆使し貢献し、ウクライナのe政府を主導するデジタル・トランスフォーメーション相、元副首相のフョドーロフ氏
  • 米国ではAIと画像認識技術を駆使したホームセキュリティシステムとして有名なRingを創業し、2018年にAmazon社に10億ドルで売却した女性IT起業家のキーラ・ルーディック氏。現在ホーロス(声)党の党首としてウクライナ政治で存在感を放つ。

今回はウクライナの電子政府を指揮した元閣僚、フィンテックIT起業家、元ウクライナ最大銀行PrivatBankのIT最高責任者、ウクライナ初のオンライン・モバイル銀行として設立されたMonobank創業者、シリアルアントレプレナーのディミトロ・デュビレット氏とのインタビュー記事です。ウクライナでは誰でも知っている著名人の彼は、ドニプロ市出身で父親もPrivatBankの元重役、ロンドン・ビジネス・スクールでMBAも取得した秀才です。

デュビレット氏はキエフ中心部でSmartAssという会員制ジムも経営しており、インタビューは2020年5月29日にここで執り行われました。中庭にはレストラン、カフェも併設されており、非常にリラックスした空間でした。

1:ウクライナでは知らぬ人はいないほどの著名人ですが日本の読者の方々に向けて簡単に自己紹介いただけますか?
私の名前はディミトリ・デュビレットでMonobankの創業者の一人です。Monbankはウクライナではじめてモバイル・バンキングを開始した銀行です。世界でも最も成長率が高い新興銀行の一つです。弊社は開業して10か月後という比較的早い段階で黒字決算になりました。現在、私は外国市場で同様のeバンキングサービスをローンチすることに力を注いでいます。日本市場はその中でも我々がとりわけ興味を持っている市場の一つです。現在日本で何社かの現地パートナー企業と交渉中です。

2:ビジネス界の寵児だったデュビレットさんが政界に進出しようとしたきっかけについてお聞かせください。
私は以前、内閣府の閣僚として6か月職務に就きました。その決定の動機となったのはその時期、遂にウクライナはより豊かになるチャンスが来たと感じたからです。ウクライナは一人当たりGDPで見れば他の欧州諸国より低いです。EUに加盟すればそれが解消されます。しかし6か月経った後、やはり自分のいるべき場所はビジネス界であると認識し、今ではウクライナ市場だけでなく、外国市場でも事業を展開する計画を進めています。

3:Monbank(モノバンク)の大成功はとても興味深い事例だと思います。Monobankを設立しようと思ったきっかけは何だったのですか?
銀行業は我々のチームがずっと続けて来た分野です。我々はMonobank以前はPrivatBank(プリバットバンク)というウクライナ最大の銀行のITシステム構築に従事しました。その後、我々はPrivatBankを離れ、新事業であるMonobankを設立しました。

4:MonobankのITシステムは驚異的ですが、デュビレットさんが開発にあたって設計やデザイン、ユーザビリティなどで留意した点をお聞かせください。
我々の信条は銀行はもっとフレンドリーであるべきというものです。銀行システムのUE(ユーザーエクスペリエンス)は通常それほど良いものではありません。そこでまず我々が最初にやったことはユーザーエクスペリエンスに精力をかけ、多額の投資をしました。Monobankはモバイル銀行であるため、モバイルアプリに注力しました。ベストのUEの為にはアプリ開発だけでなく、業務プロセスやバックオフィス体制も万全でなければなりません。まず第一にプロセス、第二にフロントエンドが重要と考えました。

5:現在のウクライナの政治、社会、経済情勢についてデュビレットさんの意見をお聞かせいただけますか?外国人投資家にとって今がウクライナへ投資する最適のタイミングだとお考えですか?
現在のところウクライナは残念ながら発展途上国ですが、将来経済的により発展することを願っています。しかし投資は常にリスクとリターンのトレードオフの関係にあります。先進国への投資はリスクは少ないですがリターンは少ない傾向にあります。ウクライナはまだ発展途上の為、より大きなリターンが見込めます。欧州とアジアをつなぐウクライナの地政学的位置を見るにウクライナへの投資は非常に良いものと考えます。ウクライナには才能あふれる人材が豊富にいます。IT業界を見ればウクライナのIT輸出は世界でもトップクラスです。よってウクライナには投資に最適な様々な要素がそろっていると考えます。

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6:ウクライナのIT業界の強みとは何でしょうか?将来の展望もお聞かせください。
歴史的にウクライナは高等教育を受けた非常に優秀な人材が揃っています。教育のほかに税制優遇政策のおかげで今ではウクライナのIT産業は農業に続く第二の産業となっています。年率成長率は25~30%です。とても魅力的なセクターです。現在ウクライナのIT人材のほとんどはIT開発の受託(アウトソーシング)もしくは人材供給(アウトスタッフィング)会社で働いています。しかし一方で近年より多くの会社が自社プロダクト、サービスを開発しています。Monobankはそのプロダクトカンパニーのひとつです。加えてウクライナは多くの世界的なスタートアップの母国でもあり、そのうち数社はアメリカや他の地域でユニコーン企業(時価総額10億ドル以上の未上場企業)になりました。ゆえにIT産業はウクライナで最もエキサイティングな産業と言えます。

7:外国人投資家がウクライナへ投資し、同国の企業と協業するにあたってのリスクをお知らせください。
ウクライナへ投資するリスクは他の発展途上国へ投資するそれと似ていると思います。つまり通貨リスク、中央銀行、配当に関する制限、それとインフレ率、しかし過去数年間は低インフレで推移しました。不幸なことにロシアとの紛争はまだ散発的に続いていますが、しかしこれも数年前より激しさは弱まっていますし、東部の一部地域やクリミア以外は平穏です。なので紛争に関してはそれほど大きなリスク要因とは言えないと考えます。

8:日本の投資家に特にして欲しい投資とは何でしょう?
ウクライナはより多くのプロジェクトと低金利の融資を必要としています。例えば大規模インフラ関連のプロジェクトなどです。我々は日本(政府)がウクライナに資金援助をしていることに非常に感謝しています。一方でウクライナには投資家向けに多くのエキサイティングな業界、企業が多く存在します。農業、交通、ITその他などです。良い投資先は非常に多いです。

9:日本に行ったことはありますか?日本や日本人の印象は?
はい、6年前に日本に行ったことがあります。また日本に行くことを熱望しています。日本は私が今まで訪れた国の中でも最も偉大な国のひとつです。実は日本を旅行した当時私はロンドンでMBA留学をしていました。その時クラスメートに日本人が多くおり、彼らが我々のグループと一緒に旅行をオーガナイズして連れて行ってくれました。最高の旅行でした。しかし私が見ることが出来たのはほんの一部で行けなかった場所も多く、次回行けることを楽しみにしています。

10:最後にデュビレットさんの人生やキャリアの目標をお聞かせください。
私は今ビジネスに全精力を傾けており、海外事業のローンチに注力しています。いくつかの国の市場で銀行業の展開を考えており、アジア、その中でも日本は私が注目している市場のひとつです。

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インタビューは筆者が外部顧問の日本事業開発マネジャーを務めているCHIソフトウェア社の同じく事業開発部のディミトリ・ホロセンコ(下記写真左)の協力により5月29日に執り行われました。ホロセンコのLinkedInは以下。

https://www.linkedin.com/in/dmitry-golosenko-1167927/

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CHIソフトウェア社のHPは以下:

https://chisw.jp/

以上、ウクライナからのレポートでした!!


Ago-ra IT Consultingへのご連絡は下記まで:

hiroshi.shibata@ago-ra.com

Ago-ra IT Consultingのホームページ

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