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人事領域(上流/elearing/ERP)コンサルでの人材開発/人事の一歩先の動向を考えます!

日本の年金は55カ国中39位、評価は「C」 ― グローバル年金指数2026から考える、退職給付と人事の設計

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▫️はじめに

マーシュマーサーとCFA協会が、「マーシュCFA協会グローバル年金指数(Marsh CFA Institute Global Pension Index)」の2026年版を発表しました(2026年10月20日)。世界各国の年金制度を共通の基準で比較する国際指数で、今回で18回目になります。

今年のテーマは「高齢化」です。高齢化が、世界の年金制度の設計と長期的な持続性を圧迫している。報告書は、そう指摘しています。

年金は国の制度ですが、企業にとっては、退職給付という形で人事制度の一部でもあります。本稿では、指数の結果を整理したうえで、人事の視点から私の考えを述べます。事実の整理と私の考えは、分けて書きます。

▫️指数の概要

・発表:マーシュマーサー、CFA協会
・研究協力:モナシュ大学ビジネススクールのモナシュ金融研究センター(MCFS)
・対象:55の国・制度で、世界人口の66%をカバー。今年は、ドミニカ共和国、ケニア、カタールが新たに加わった
・評価の方法:十分性(Adequacy)、持続性(Sustainability)、健全性(Integrity)の3つのサブ指数の加重平均

十分性は、退職後に十分な給付が得られるか。持続性は、制度が将来にわたって続けられるか。健全性は、制度の運営やガバナンスが信頼できるか。この3つの観点から、年金制度を総合的に評価しています。

▫️主な結果

・A評価(80点超):オランダ、デンマーク、アイスランド、シンガポール、イスラエル。オーストラリアは、初めてA評価を獲得
・サブ指数の最高評価:十分性はクウェート、持続性はデンマーク、健全性はフィンランド
・前年から改善した国:オーストラリア、UAE、オマーン、パナマ、中国など
・全体の平均:2025年から1.1ポイント上昇

アジアでは、シンガポールがA評価で4位となり、2年連続でA評価を得ました。香港はB、マレーシアはC+でした。

そして日本は、C評価で、55カ国中39位でした。

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    ▫️今年のテーマ:高齢化と、退職年齢のずれ

    報告書は、従来の60歳や65歳を標準とする退職年齢が、実態と合わなくなりつつあると指摘しています。さらに、ギグワークやパートタイム雇用の広がりによって、働くことと退職の境界もあいまいになっています。

    そのうえで、政策面での取り組みとして、次の3つを挙げています。
    ・年金制度の目的の明確化
    ・将来の退職給付に必要な財源の優先的な確保
    ・年金の商品設計と退職年齢の制度における柔軟性の向上

    ▫️関係者のコメント

    発表では、複数の関係者がコメントを寄せています。要点を紹介します。

    マーシュ People and Investmentsのプレジデント兼CEOのPat Tomlinson氏は、高齢化は避けられない課題であり、年金制度の持続性は人々の生活や精神的な安定に長期的な影響を与えると述べ、時代に合った速やかな制度の見直しが必要だとしています。

    CFA協会のMona Naqvi氏は、人口動態や市場環境が変わるなかでは、短期的な政策や投資判断は通用せず、健全な制度設計、ガバナンス、受託者責任に基づく慎重な投資の監督が必要だとしています。

    報告書の筆頭著者であるTim Jenkins氏は、どれほど優れた年金制度でも、社会の実態に合わせて見直す必要があり、現状維持のままでいられる制度はない、と述べています。

    ▫️日本のDC制度は、大きな転換期

    日本について、同僚の漆山綾香さんは、確定拠出年金(DC)制度が大きな転換期にあると述べています。政府が制度の拡充を進めており、具体的には次の変更があります。
    ・2026年4月から:マッチング拠出のルールが緩和され、従業員が会社の拠出額を上回る掛け金を出せるようになる
    ・2026年12月から:企業型DCとiDeCoの合算の拠出限度額が、月額6万2,000円に引き上げられる

    従業員の資産形成への関心が急速に高まるなか、今こそ自社の年金戦略を見直す最適なタイミングだ、という指摘です。

    ▫️私の考え1:年金は、人事の制度でもある

    ここからは、発表そのものではなく、私の考えです。

    年金というと、国の制度や、財務・総務の領域の話と捉えられがちです。けれど、企業の退職給付は、給与や賞与、福利厚生と並ぶ総報酬の一部です。従業員が将来に不安を抱えずに働き、挑戦するための土台でもあります。

    DC制度の拡充は、企業にとって、制度を「維持する」だけでなく、従業員にとってどんな価値を提供するのかを考え直す機会です。マッチング拠出の設計や、資産形成についての情報提供や教育も含めて、退職給付を人材戦略の一部として設計し直すことが求められていると思います。

    ▫️私の考え2:退職年齢のずれは、人事の論点そのもの

    報告書が指摘する「退職年齢と実態のずれ」は、人事にとって大きな論点です。

    日本では、60歳定年と、その後の再雇用を前提とした制度が、今も多くの企業で続いています。けれど、70歳まで、あるいはそれ以上働くことが珍しくなくなるなかで、60歳を境に役割も処遇も大きく変わる仕組みのままでよいのでしょうか。

    年金をいつから、どのように受け取るか。何歳まで、どんな役割で働くか。どう処遇するか。これらは、本来ひとつながりの設計です。年金の設計と、定年、処遇、シニアの役割の設計は、切り離して考えられなくなっています。

    ▫️私の考え3:流動化の時代こそ、持ち運べる年金を

    報告書は、ギグワークやパートタイムの広がりにも触れています。日本でも、転職や副業、独立といった働き方が広がっています。

    一つの会社で定年まで勤め上げることを前提にした退職給付は、流動化が進む時代には、従業員にとって必ずしも魅力的ではありません。会社を移っても資産形成が途切れない、持ち運べる仕組みの重要性が高まっています。DC制度の拡充は、まさにその流れにあるのだと思います。

    人材の流動化を前提にするなら、退職給付も「囲い込むための制度」から、「どこで働いても将来を支える制度」へと発想を変える必要があるのではないでしょうか。

    ▫️留意点

    ・発表資料には、日本の指数値やサブ指数の値、前年の順位は示されていません。
    ・指数は、各国の制度を一定の基準で比較したもので、制度の優劣を一面的に示すものではありません。各国の社会保障の仕組みや歴史的な背景の違いも踏まえて読む必要があります。
    ・本稿は、個別の金融商品や資産運用を勧めるものではありません。

    ▫️自社で点検したい問い

    1. 退職給付を、総報酬と人材戦略の一部として位置づけているか。
    2. DC制度の改正を踏まえて、マッチング拠出などの設計を見直しているか。
    3. 従業員の資産形成について、情報提供や教育を行っているか。
    4. 定年、再雇用、処遇、シニアの役割を、退職給付とあわせて設計しているか。
    5. 転職や多様な働き方を前提に、持ち運べる退職給付を考えているか。

    ▫️おわりに

    報告書の筆頭著者は、どれほど優れた制度でも、社会の実態に合わせて見直す必要があり、現状維持のままでいられる制度はない、と述べています。

    これは、国の年金制度にも、企業の人事制度にも通じる言葉だと感じました。人の生き方と働き方が変わるなら、それを支える制度も変わらなければなりません。人と組織の変革は、退職給付の領域にも及んでいるのだと思います。

    ▫️出典

    マーシュマーサー「マーシュ『グローバル年金指数ランキング』(2026年)を発表」(2026年10月20日)

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