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圧縮と周波数

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前回お話したとおり、音楽配信では、1,411kbpsで記録されたCDの音を、128kbpsなどに圧縮しています。
10分の1に圧縮するとはどういうことなのか、そして音質に与える影響を考えて見ます。

音源の圧縮とは、主に2つの方法をあわせて行っています。
1)「データとしての」圧縮
2)「音としての」圧縮

1)は、ハフマン符号化など、まさに音楽ファイルをデータとして計算し圧縮することです。
皆さんも普段良く使っている、ファイルをZIPに圧縮するようなものです。
2)は、音響心理や生理学を用いて、人間にとって重要でない音やデータをカットすることです。

1)は、圧縮アルゴリズムの進化と複雑な計算(デコード)を行うハードの進化により、年々圧縮率が高まっています。
ここで取り上げたいのは、2)の「音としての」圧縮です。
これには、周波数が大きく関わっています。

音の周波数

前回は、録音の周波数(サンプリング周波数)を、1秒間に何回細切れにするか、という説明をしましが、
実は、これは、どこまで高い音(周波数)を録音できるか、と言い換えることができます。
ある音を正確に録音するには、最も高い周波数の倍のサンプリングレートが必要で、
ナイキストの定理と呼ばれています。
(CDのサンプリングレート44.1kHzというのは、初期のCD製作のためにビデオレコーダを利用したことから、
TVの水平走査周波数に由来しています。)
参考
CDは、理論上、22.05kHzの音を再現できることとなります。(44.1kHz÷2)
実際には、20kHz前後でそれ以上の音をカットしてしまいますので、CDの上限周波数は20kHzとなります。

では、圧縮された配信用音源では、ではどうでしょうか?
128kbpsのwmaでは、上限周波数=17kHz前後となります。

この17kHzや20kHzとは、どれほどの周波数なのでしょうか?

代表的な周波数

人間の可聴域は、20Hz~20kHzといわれています。
非常に耳の良い人で上記の数値なので、一般的には、~15kHz程度です。

代表的な周波数をあげてみます。

  20.0Hz 音には聴こえない周波数
  27.5Hz ピアノの1番低い鍵盤周波数
   440Hz 時報の「ぴ」の周波数
   880Hz 時報の「ぽーん」の周波数
1,000Hz 男性の声の主成分の周波数
2,000Hz 女性の声の主成分の周波数
4,096Hz ピアノの1番高い鍵盤の周波数

代表的なサンプリングレートは、
8kHz 電話
22kHz AMラジオ並
33kHz FMやテレビ並み
44kHz CD
48kHz DAT DVDaudio
です。

音を正しく録音・再生するには、含まれる周波数の倍の周波数が必要です。
(ナイキストの定理)
上記の例で言うと、サンプリングレート 8kHzの電話は、
時報や声は、正しく伝達できますが、4kHzを超えるピアノの最高音は正しく伝えられません。
(実際には 3.2kHz程度までしか伝わりません)

そういった意味では、CDのサンプリングレート44.1kHz(上限周波数 20kHz)
は非常に高いレートですし、128kbpsのwmaの上限周波数 17kHzでも十分な気がします。

それでも、実際に耳で聴くと、CDと128kbpsのwmaでは音質に差がありますし、
サンプリングレート48kHzのDVDaudioでは、CDより良い音がします。

聴こえない音の及ぼす影響

声や楽器では、耳に聴こえる周波数の音の他に、その倍音が含まれていることがあります。
その高調波は、15kHz~20kHz(可聴波)を超えているので、通常「聴こえていない」音なのですが、実際には、感じていると言われます。
また、当たり前ですが、そういった耳に聴こえない音も、存在している以上、
共鳴・共振・反響など様々な物理的な影響を与えています。

こういった「存在」を無視するわけですから、耳で聴いたときに、違和感を感じます。
これが、CDと生音の違いです。
分かりやすい例を挙げれば、
生オーケストラのバイオリンの高音の倍音は、人間に聴こえていなくても、犬には聴こえます。
CDプレイヤーで聴くと、、人間にも犬にも聴こえません。

ちなみに
犬は、50kHz
猫は、60kHz
コウモリは、 120kHz
イルカは、150kHz
前後まで聴こえるそうです。
(すみません。正確な数字を誰か教えてください。)

圧縮音源とCD

CDの音質と圧縮音源の差は、非常に端的に言えば、
・一旦加工したもの(CD音源)を、さらに圧縮している。(機械的加工)
・圧縮するために、低音と高音の差やカーブのエッジが鈍くなる。
であり、これが「劣化」として認識されます。

このお話はまた続きをします。

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