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人材ビジネス経験は平均15年以上。古今東西、老若男女の転職を見てきた現役のヘッドハンター達が、今起こっている転職現場の「ホントですか?」を分かりやすく解説。転職成功やキャリアアップのヒントも、5人のヘッドハンターが交代で紹介します。

転職ビギナーが陥る"百点転職"とは?

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日本人というのは先進国の中でも勤続年数が長い国民。アメリカ人の1社当たりの平均勤続年数が4.6年に対して日本人は11.9年。つまり一度、会社に入れば長く働くというのが日本の国民性なのだ。だからこそであるが、人生で初めての転職をしようという転職ビギナーは、新境地への期待値が非常に高い。なかでも転職先の選択余地がある(=求人数が割と多い)20~30代の転職ビギナーが陥りやすいのが、完璧を求め過ぎる"百点転職"である。

転職大国はどこの国?.jpg

「会社の財務状況は良好で」、「年収は現職同等かそれ以上」、「裁量権は今より大きく」、「風通しの良い社風で」、「年間休日は120日位欲しい」...などと希望をあげるときりがないが、20代後半から30代の転職ビギナーは、上記のように次の職場に対する期待が大きい。ただ、現実はそう甘くない。私が良く言うのは、転職先選びは不動産選びと似ていて、「都心で駅から近く、周辺環境抜群で新築か築浅。しかも家賃は他より安い」なんていう物件がなかなか見つからないのと同じということ。あれもこれもの好条件をすべて満たす転職先は極めて稀であるということである。

転職を一度でも経験している人は、その点、現実を理解しているので2回目以降の転職活動では、だいたい6~7割の希望を満たせればすんなり応募という流れになるが、転職ビギナーは6~7割程度の合致度では躊躇してしまう傾向にある。つまり客観的には好条件の案件があっても、「検討してから回答します...」とか「他の案件も探してみたいので...」などの反応で、なかなか前のめりにはならない。転職先で長い間働きたいと思えばこそであろうが、まず言っておきたいのは、"転職にリスクはあるが、転職活動自体にリスクはない"ということである。転職活動をしているということは、何らかの理由で現職以外を見てみようと思っているわけだから、他の会社に応募してみなければ始まらない。だから希望条件を6割程度満たしている案件であれば、積極的に応募していった方が良いのでは?と思う。そうすることで受けられる恩恵はいくつもあるのだから。例えば、

・自分の市場価値がわかる
・他の会社を知る機会になる
・内定をもらう社数が増える
・上記より現職との比較ができる

といったことあげられるだろう。

「あれや、これや」と希望条件との合致云々を考える以前に、書類選考さえ通過するかもわからないわけで、自分がどの程度(レベル)の企業なら通用するかを見極める為にも、まずは応募してみることが望ましい。6割程度の希望が満たされているような企業であれば、面接を通して別の魅力にひきこまれていったという事例も数多く見てきている。また、間口を広げることにより内定をもらえる会社の数は確率の点からして増えるわけで、内定企業の給与や仕事内容などを現職と比較できる機会が増えることは非常に重要なことだろう。一方で転職活動の結果、世間に自分にフィットする会社がなかったとか、内定をひとつも獲得することが出来なかったとしても、「今の職場で頑張るしかないのだ!」と再認識できたのなら、それはとても有意義なこと。その転職活動自体は成功と言えるのではないだろうか?

繰り返しになるが、"転職にリスクはあるが、転職活動自体にリスクはない"。むしろ、少しでも気になる会社があったら、それに応募しないことの方がリスクだろう。自分の未来への可能性を自ら閉ざすことになるし、現職との比較をする機会も失う。そして、近takamoto.jpgい将来にその会社を応募しようと思っても募集をしていないということもある。今しかないチャンスだと思った方が良い。以上より、これから初めての転職活動をしようという方は是非、"60点転職"を心がけて、間口を広げながら候補企業に対して積極的にエントリーしていくことをお勧めしたい。( (株)プロフェッショナルバンク 高本 尊通)

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