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ITmediaエンタープライズ編集部のしたっぱによる気ままな編集後記+α。気ままなコラムと書評、最近面白かったニコニコ動画の紹介記事が主なコンテンツになる予定。軽い気持ちで読んでください。

「リーダー向きの人」なんて存在しない――「ストレングスリーダーシップ」で学ぶ、自分らしい"リーダー"になる方法

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評価 ★★★★☆(4.5)strangthsleadership.jpg

 現在、ITmedia エンタープライズで「プロマネ1年生の教科書(http://www.itmedia.co.jp/keywords/puromane_iwaasa.html)」という連載を担当しているが、公開した記事の反応を見ると「リーダー」や「リーダーシップ」という言葉に対して嫌悪感というか、苦手意識を持っている人が多いことに気付かされる。

 「自分はリーダーに向いていない(リーダーの才能がない)」「自分にリーダーシップがない(そんな性格じゃない)」

 こんな言葉や考えでリーダーを敬遠してしまうのだが、そもそもリーダーシップとは「目標を達成するために、チームに与える影響力」を指す言葉。目標の共有や計画作成、実績管理はもちろんのこと、周囲への声かけや相談に乗ることなど何でも当てはまる。自分の得意な方法でリーダーシップを発揮すればいいのだ。何もカリスマ的な言動で皆を引っ張っていくだけがリーダーではない。「リーダー」のスタイルは千差万別であり、自分らしい方法で進めばいいのである。

 日本経済新聞社が出している「さあ、リーダーの才能に目覚めよう」は、自分に秘められた資質を調べるWebテスト「ストレングスファインダー」(StrengthsFinder)を受け、資質(才能)に基づいた、自分らしいリーダーシップを発揮する一助になってくれる本だ。

 この本は「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう」の続編であり、こちらの本やストレングスファインダーについて、詳しくはこちらのエントリにあるので、参照いただきたい。

●「リーダー」に人がついていく理由

 この本ではまず、なぜリーダーに人がついていくのかというテーマについて考察を加えている。ギャラップが大多数のフォロワー(リーダーの下で働く人)にリーダーが与えている価値を聞いたところ、大きく次の4種類に分けられたという。

  • フォロワーとの信頼を築く
  • フォロワーへの思いやりを示す
  • フォロワーに安定をもたらす
  • フォロワーの希望を生み出す

 リーダーとしても自らが与える価値はシンプルなほうがいい。この4つを意識して動くことがリーダーシップの基本であり、全てだと言える。本書では自らの資質に基づいて、これらを実現するにはどうすればいいか(どうコミュニケーションをとればいいか)、そして、各資質を持った人を生かす方法について解説している。

 もちろん、この本に書いてあることだけが「正解」というわけではない。チームのミッション、その時々のチームの状況によって、コミュニケーションや求められる役割は変化していく。だが、本に書いてあるアドバイスは大きな指針として、そして何をすればいいか分からないときに踏み出すための一歩として、大きな助けになるはずだ。

●"自分らしさ"に甘えない姿勢が必要

 とはいえ、こうしたアプローチに落とし穴がないわけではない。「強みを生かす」や「自分らしさ」を言い訳に、自らの言動やリーダーシップの方法を正当化してしまうケースもままある。

 はっきり言ってしまえば、これは"自分らしさ"に甘えている状態だ。「自分らしくリーダーシップを取る」ことと、「今の自分のやり方だけを通して新しい仕事の方法にチャレンジしない」のは別の話である。ストレングスファインダーで出てくる各資質は、個人が持つ"武器"のようなもの。新しいチャレンジをしないのは、「この武器たちではこのモンスターとは戦えません」と最初から白旗を上げているようなものだ。

 新たなモンスター(チャレンジ)を倒そうとするなら、自らの考え方を変えなくてはならない。大きく分けて次の3つの方向性に集約できるだろう。

  • 武器を変える(使う資質を変える)
  • 武器の使い方を変える(資質の生かし方を変える)
  • 戦い方を変える(資質の組み合わせを変える、仲間を頼る......など)

 一つの戦法(スタイル)に固執すれば、敵が変わったときに(敵のレベルが上がったとき)に対処できなくなるということはゲームではよくある話だ。リーダーシップも同じことが言える。固執すべきなのは成果を上げる(敵を倒す)ことであり、スタイル(戦い方)そのものではない。

 変化の速い現実について行き、成果を上げるためには、自らのスタイルを絶えず変えていく必要がある。こういう言い方をすると、不安に思う人もいるかもしれないが、それを乗り越えるための武器は皆持っているのだ。先に挙げた3つの方向性で、自らのリーダーシップを見直し、新たな方法を編み出すことが求められる。

●「リーダー向きの人」なんて存在しない

 こうした考え方のもとでは、「リーダー向きの人」なんてものは存在しない。誰にだってリーダーになれるし、成果を上げることは可能だ。冒頭で挙げた「自分はリーダーに向いていない」「自分にリーダーシップがない」というのは、自分らしさへの甘えから、変化を拒んでいるのに他ならない。

 心理テストや資格などで「あなたはリーダーに向いている」と言われる(またはその証明がある)とやりやすいという気持ちは理解できるが、それがなくとも、十二分にリーダーシップを発揮することは可能だ。最後に本書に書いてある、「強みを生かす優れたチーム」の特徴を紹介する。

  • 強固なチームは結果を重視する。だから意見が対立してもチームが壊れない
  • 組織にとって最善なことを優先し、行動を起こす
  • 仕事と同じように私生活にも真剣にかかわる
  • 多様性を受け入れる
  • 才能を引き付ける

 5つの特徴を見ると、メンバーの資質を生かした結果、昨今言われている"ダイバーシティ"の要素を兼ね備えた結果になっていることが分かる。むしろ、ダイバーシティも形から入るのではなく、個々人の資質を認めるところから始めることが健全なように思える。そんな視点で本書を読んでみても面白い。

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