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『5年後、メディアは稼げるか』は新メディア人必携の"教科書"か?

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【評価】★★★★☆(4.5)

 上司から薦められて読んだ本なのだが、これがなかなか面白い。

 「東洋経済オンライン」の編集長の佐々木さんが執筆した『5年後、メディアは稼げるか』は、メディアの現在とこれから進むべき道を記した本だ。本の帯には「マネタイズか?死か?」と強烈な煽り文句が書いてあるが、メディアを仕事としている人ならば、これが煽りではなく的確に現状を捉えた言葉であると実感できるだろう。

 ウェブメディアの特徴や概観(アメリカ含め)を網羅的かつ客観的に説明し、メディアの稼ぎ方を考察、これからのメディア人(あくまでメディアで食っていこうとする人)に必要なスキルやスタンス、考え方を筆者の私見も交えながら論じている。

 長年編集部に在籍していた経歴があるためか、具体例を交えながら分かりやすい説明を展開している部分は素晴らしい。今まであまりメディアに触れてこなかった人でも楽に読み進められるので、業界研究の入門書として好適だ。メディア志望の就活生も読んでおいて損はない。

 一方メディアに携わっている立場であれば、この本の位置づけは大きく変わる。デジタル主体の媒体展開(ジャンル横断含め)、ユーザー属性をはじめとするデータの重要性、フリーミアム戦略――いい意味で、ここで書かれていることの多くは"当たり前"だ。というより、当たり前のこととして認識していなければならないように思う。言葉として整理されていなくとも、直近のWebの動きを見ていれば感覚として共感できるはずだ。

 自分が心に残ったのは、次世代ジャーナリストの条件という章だ。その1つに

「これからの時代を生き抜くにはスーパースペシャリストかスーパーゼネラリストのいずれかにならねばなりません」

 とあった。これからは分野横断的な記事の価値がどんどん上がってくるということで、3つ以上の得意分野を持ち、それらを掛け合わせることで新たな価値が生まれるという。自分は昨年の11月からPC USER編集部からBusiness Media 誠誠Biz.ID編集部に転属となった。突然異動を言い渡されたときは驚いたし、今なお新しい環境に苦戦しているが、この異動がいずれ糧になるように動いていきたい。

 「5年後、メディアは稼げるか」というのは、メディアが5年後も生き残るにはどうすればよいか、と述べているのと同義だ。東洋経済オンラインはPVが急激に伸びたが、メディア単体で採算が取れているわけではなく、やや行き過ぎたタイトル釣りや記事テイストの変化(炎上騒ぎも含め)によりブランド価値を棄損しているところがあるように思える。

・参考ブログ→PV数10倍増でも「東洋経済オンライン」が失敗する、たった1つの理由

 ITmediaは......Business Media 誠はどうか。もちろん会社の構造も規模も異なるため、一概に比較はできないが、無策で生き残れるほど甘くはないはずだ。本書を参考にしつつ、大胆な方向転換を行う必要があると感じている。本書に書いてあることはすべて当たり前。だからこそ、新メディア人の"教科書"的存在として大きな価値があるのだ。価格も1260円と手ごろなので、ぜひ一度手にとって読んでみてほしい。

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