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夏目房之介の「で?」

2020年4月24日TV「ザワつく金曜日」の「愛は勝つ」と文化文脈の変化

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https://www.tv-asahi.co.jp/zawatsukufriday/ TV朝日「ザワつく金曜日」 作業しながら何となくこの番組を流していたら、最後にメインの4人と高橋克典(メインボーカル)の他、コーラスと演奏を編集合体させた映像で、KAN「愛は勝つ」を合奏合唱(一茂は例によって口が合ってなかったけど、この人らしい)していた。この歌、ネットによると1990年発売(バブル末期)で、うまくできてはいてヒットした。が、あまりに空々しいので僕は好きになれなかった。まあ趣味の問題なので、好きな人はそれでいいのだが、この種の「善意」には「気持ちわりー」という反応が先に立ち、陰影ちゅもんがないな、と感じたのである。ところが、時代は流れ、状況は大きく変わり、そこでああいう映像で見せられると、ちょっと「感動」しかけたりしている自分がいる。不思議なもんだ。

 TVドラマ『今日から俺は』で横浜銀蠅「男の勲章」を主題歌にして主役連が歌っていたのを見て「カッコいい!」と感じてしまった。1982年発売らしいが、当時は実際にこういう学ラン着た不良がいて、正直そういう文化には興味もないし嫌いだったので、「男の勲章」を聴いたおぼえはあるが好きではなかった。が、これまた時代と文化文脈、環境が変わり、一種のパロディとして再生されたとき、案外に「いい」と思えてしまうのである。忘年会ではセーラー服コスプレの女性のダンスに合わせて歌って踊ったりもしてしまった。これらの歌の意味内容は、まったく異なった印象でやってくるようになるものなのだ。

 こういう現象は多分、小説や映画、マンガでもあるのだと思う。昔感動したドラマや映画でも、今観るとなかなか入れなかったりする。時代社会の文脈の変化で、これら文化現象への評価は変わっちゃうもんだなあ、とのんきに構えているが、研究的に考えるとかなり難しい問題でもある。「複製芸術」ゆえの現象なんだろうかね。

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