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夏目房之介の「で?」

『沖縄の不都合な真実』

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沖縄の不都合な真実.jpg ふだんなら、あまり読まない種類の本ですが、友人の篠原章氏が共著者で、今日出版パーティ(発起人を引き受けた)があったので、ざっと読んだ。いい本だと思う。
 我々がマスコミでの沖縄報道に感じるどことなく変な感じ、どこか偽善的な、いかにも「正義」な顔して、どこか曖昧な首かしげる感じがどこからくるのか、この本でだいぶわかる。
 「反戦」「反安保」「基地反対」という(とりわけ本土に聞こえてくる)「沖縄の声」が、どのような背景の中で、どんな経済的政治的実態の中で行われ、そのことが日本政府を通じて沖縄に落とし込まれる支援金など(つまり国民の税金ですが)とどう関連し、じつはどんな歪んだ資金還流構造を生み、それが沖縄の歴史的に固着した権力構造とどうかかわっていたのか。なぜ沖縄にわたった防衛関係資金が、巨人軍の誘致のための建築資金になり、それを誰も報道しないのか。そういうようなことが、具体的に、数字をあげ、解説される。篠原担当の章での、沖縄県が拡散しようとしている、無基地化が生む経済効果の数値の虚妄の指摘も、さすがに専門家で「数字の嘘」を暴いている。もとよりこうしたデータや統計の計算方法やその問題点が僕にはわからないので、ただ感心するだけだけど、ありうるだろうとは思う。自治体などの、とくに建設系の公共事業の効果について似たような、ありえない数字が根拠なく示されることが多いという話はよく聞くからだ。
 こういう「被害者」「弱者」支援の金の流れが、現地の権力構造との関係で腐敗や歪みを生み、固定化し、自立的経済再生力を喪失させてしまう事例は、日本国内はもちろん、国際的にも国単位で存在するはずで、基本的には「植民地」経済と南北問題の生んだ「歪み」と同質なのだろうと思わせる。そういう構造を具体的に描いて、かつわかりやすく解説してくれているので、どこにでもありそうな構造を知る入門書にもなる。

 沖縄はいいところだし、僕も好きだけど、バリ島だって同じように、色々問題を抱えているはずで、じつは「地上の楽園」とか「癒しの島」とか、観光客にとってはそういう側面もたしかに感じられる場所でも、この世界の構造から完全に切り離されているわけはないんだよな、ということを再認識する。こういう思考って、左翼だとか右翼だとか、革新だとかエコだとかっていう立場とは、とりあえず関係なくものごとを考える自立した視点でしかできない。そもそもあまり考えたことのない問題だし、詳しいところまで僕には判断できないけど、そこんとこは高く評価できると思う。

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