“とりあえず”iPhoneやiPadを業務に導入しても意味がない?
最近、各社から企業向けの iPhone/iPad 導入支援サービスが現れ始めています。
こういったサービスが現れるということは、そこにニーズがあるということですね。
特にソフトブレーンさんが参入した、というニュースが気になりました。
ソフトブレーン・インテグレーションは8月27日、企業のiPhone/iPad導入を支援すると、社内文書を電子データ化する「社内文書のiBook変換サービス」を開始した。
ソフトブレーン・インテグレーション社は、営業支援の「eセールスマネージャ」などで有名な会社です。
非ITのコンサルティング以外に、IT化が進んでいない企業に対してのIT導入コンサルなども行っています。ですので、その面でたくさんのノウハウと現場の声を持っています。
その会社が参入したということは、「iPadやiPhoneを導入して経営に役立てたいが、どうしたら良いか分からない」という現場の声がたくさんある、というだと考えられます。
サービスをもう少し掘り下げます。(詳しい内容は同社のプレスリリースをごらん下さい。)
サービスの内容は、そのニーズを汲み取ったものになっているはずです。
ソフトブレーン社の場合は
- iPhone/iPad 導入利用ポリシーの策定
- 運用規約・誓約書の作成代行
- セキュリティコンサルティング
- ユーザーへの教育、端末の設定およびアプリケーションのインストール
- iPhone や iPad 専用のVPNの構築
- 利用料金の分析
- ヘルプデスク
です。他にeBook系のサービスも同時に始まりましたが、論点が違うので省きます。
これを見ると、導入から運用、ヘルプまでほとんど全てと言っていいと思います。ある意味「丸投げサービス」です。
導入はまず、目的ありきでなければならない
ここから見えてくるのは、このサービスを欲しているトップ層の持つ「なんだかiPhoneやiPadを企業に導入すればいいことがありそうだけど、具体的にはどうしたら良いか分からない」という状況です。
言い換えれば「ちまたでも噂になっているし、とりあえずiPhone入れれば、よくなるだろう」という段階で、導入に踏み切っている部分があると、皮膚感覚でも少なからず感じます。
しかし、これはとても危険な状況ではないでしょうか。
本来、流れとしては
- 実現したい姿が先にイメージとしてあった上で、
- テクニカルデバイスとしてiPhoneやiPadが現れた、
- なのでそれを使って実現した
というものが、正しい流れです。あくまで目的先行です。
iPhoneで会社の生産性を爆発的にあげたことで有名なECStudioの山本社長を始めとして、成功を遂げている会社はほぼ確実にトップがそのデバイスをよく知っており、その上で有用性をある程度具他的な部分まで予測して導入しています。
つまり、「ITを使ってこういうことがやりたい」というイメージを持っていて、そこにiPhoneなどがきたため、うまく行ったのではないかと思います。ある種の引き寄せとも言えます。
あるいは、実際に自分でiPad等を使ってみて、使いながら、「これはうちの場合このようなところに非常に役に立つ、導入しよう!」という形もありますよね。
どちらにしても、先に実現するイメージがあって、その後に導入が始まります。
土地勘のある生産機器やシステムであれば、無意識に目的先行で考えると思いますが、iPhoneやiPadはフィーバーが起きているので、“とりあえず導入”ということが起きているところもあると思います。
しかし、知らないものであればあるほど、自社ドメイン領域での有用性はきちんと調べるべきではないでしょうか。
目的を自己満足なものにしないこと、顧客やクライアントに利益があるものにすること
導入目的の策定の際に、重要なことが一つあります。
それは「自社の作業効率アップ」といった社内的な要因もさながら、それ以上に「これを導入することで、顧客やクライアント・取引先にどんなメリットを与えられるのか」という目線で導入目的を考えることです。
例えば
- 業務日報を簡単にできるだけリアルタイムで入力できるように、どこでもすぐに立ち上げられて、営業マンの精神的負担が減るiPadを導入し、情報の質と量をアップする
- 今まで、資料などはその場の紙ベースでしかなかったが、Onlineにおいておくことでどんな資料でもすぐに目の前で見込み客にプレゼンできるようにする
- サービス業系のバックヤードや厨房わきなどにおいておいて、気がついたことや顧客からの声を、忘れないうちに入力・蓄積し、フィードバックの量を増やせるようにする
- 最新のデバイスについて、それをどう商売に生かすのか、というノウハウを作る
などでしょうか。
この辺りは業態業種によって様々ですね。
要は「顧客視点での目的設定」ができていればいいと思います。
やらなければいけないこと
繰り返しになりますが、トップ層としては、実際の運営は下に任せるとしても
- 現在の会社の何を改善したいのかをいくつかリストアップ
- その中でiPhoneやiPadを使うことで効率的に解決できる物があるか、フィージビリティ含めチェック
- いけるというものに対して、定量的指標をつけてスタート、定期的に指標をチェック
といったことが最低限必要です。
あくまで、目的と狙いあってのものです。
使ってみてダメだったら、回収する位の気持ちでいいです。
ソフトバンクは法人営業に力を入れているので、いったん営業さんにきてもらうのもいいと思います。特に事例を教えてもらうと、イメージが発展しやすいです。
…
また、ベンチャーなどで足を速くしようとしている企業が「とりあえず、入れて・見せて・使わせて、みて、体験させる」ということもあると思いますが、その場合定期的に「何を学び取ったのか」のチェックをしないと、ただの遊び道具になりかねません。
また、目的としてざっくりと「体験してみよう」ですと、ある程度使ってみると慣れてしまって、新たな発見をしなくなります。
なので目的をブレイクダウンして
- 「このように気持ちよく使える理由は何だろう」
- 「この流れを既存のホームページの集客につなげるためにはどうしたらいいだろう」
- 「うちの業界としては3ヶ月後を見越して、今何をしておかなければいけないだろう」
といったレベルまで、触りながら考えさせることが、目的達成には必要です。
終わりに
話が少しそれましたが、トップ層が導入目的をきちんと決めていないのはとてもリスキーです。
ここまでで書きました経営的観点もさながら、セキュリティ関係もリスキーです。
特に関連ISO取っている会社、Pマークを取っている会社はなおさらです。DropBoxやSugarSyncなどのクラウド系のサービスは、社内の重要文書が外に流出するリスクを非常に高めます。
あるいはSaaS系のサービスで社内システムとして導入している物、例えばSalesForceなどへの、外部からのログインもきちんと設定をチェックするなどが必要です。
また、最近海外でも問題になっていますが、TwitterなどのSNSにより生産性が下がってしまったということもあります。
導入することが目的ではありません。その上で何を達成するかが最終目的です。また、どんなガジェットもマジックワンドにはなりません。
これから導入を検討している方は、ぜひこのあたりを一度見直して頂ければと思います。