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【書評】『ジェノサイド』:超人類の視点

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著者: 高野 和明
角川書店(角川グループパブリッシング) / 単行本 / 590ページ / 2011-03-30
ISBN/EAN: 9784048741835

早くも2011年No.1エンタテイメント小説の呼び声も高い『ジェノサイド』。高野和明氏、四年ぶりの新刊である。創薬、超人類、虐殺をテーマに、日本、アメリカ、コンゴの三地点をつなぎあわせた壮大なストーリー。著者が構想に20年もかけただけあり、500頁を超える分量をもつが、息もつかせぬ展開で一気に読み上げることができる一冊である。

◆本書の内容紹介 ジェノサイド公式HPより引用
急死したはずの父親から送られてきた一通のメール。それがすべての発端だった。創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人はその不可解な遺書を手掛かりに、隠されていた施設実験室に辿り着く。ウイルス学者だった父は、そこで何を研究しようとしていたのか。

同じ頃、特殊部隊出身の傭兵、ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、ある極秘の依頼を引き受けた。暗殺任務と思しき詳細不明の作戦。事前に明かされたのは、「人類全体に奉仕する仕事」ということだけだった。イエーガーは暗殺チームの一員となり、戦争状態にあるコンゴのジャングル地帯に潜入するが・・・

父の遺志を継ぐ大学院生と、一人息子のために戦い続ける傭兵。交わるはずのない二人の人生が交錯する時、驚愕の事実が明らかになる。それは、アメリカの情報機関が察知した、人類絶滅の危機---

現生人類に最も近いとされているネアンデルタール人が、約2万7000年前に絶滅を迎えた要因には諸説ある。気候の変化、現生人類との戦争、現生人類との交配による吸収・・・。いずれにしても、おそらく同時代に存在したはずの現生人類が、ネアンデルタール人との共存共栄を目指さなかったということは、歴史が証明している。

超人類というと、絵空事のような印象を受けるむきもあるかもしれないが、ネアンデルタール人にとっては、現生人類こそが超人類である。進化論の系譜に沿って考えると、いつの日か現生人類を上回る超人類が誕生するのは、必然と考えるのが妥当であるだろう。その時に、我々こそが、ネアンデルタール人のような存在になるということである。仮にそのような状況を迎えた場合、我々を待ち受ける運命は絶滅なのか、はたまた共存なのであろうか。

本書は、われわれ現生人類をピラミッドの頂点に置くのではなく、「超人類から見た現生人類」というフレームを用いて描いている。その視点の提示こそが、大きな見どころの一つでもある。そこで描かれる現生人類は、まるで下等動物のような側面を持つ。国境という縄張りを巡り、愚かな殺戮を繰り広げ、お互いがお互いを潰し合う。しかし、その不完全さの中にも、残酷さと良心とが絶妙なバランスを保つことよって、現生人類は滅亡せずに、これまでの道のりを歩んできた。それは、奇跡のようなことである。

死んだはずの父親からのメールにて幕を開けた物語は、同じように父親からのメールで幕を閉じる。そのメールの内容こそが、人類全体へ向けたメッセージであり、それが実にすがすがしい読後感を与えている。著者の筆力に思わず脱帽の超弩級エンタテイメントである。

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