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【書評】『サンデル教授の対話術』:一周まわった好き嫌い

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NHK出版 / 単行本(ソフトカバー) / 232ページ / 2011-03-29
ISBN/EAN: 9784140814673

「ハーバード白熱教室」でおなじみ、マイケル・サンデル教授による対話術をテーマにした一冊。番組でも注目を集めた対話型講義について、さまざまな角度から言及している。前半はサンデル教授のインタビュー、後半は小林正弥教授による解説という構成である。

◆本書の目次
第一部 サンデル教授、大いに語る - 対話型講義をめぐって
1 自分自身のこと
2 対話型講義とはどのようなものか
3 講義法について
4 ハーバード大学の講義と学生たち
5 東京大学での特別講義
6 日本とコミュニタリアニズム
7 アメリカと「市場の道徳的限界」
8 今日における正義と哲学

第二部 現代に甦るソクラテス的対話 - サンデル教授から学ぶ講義術
序 素顔の公共哲学者マイケル・サンデル教授
1 大学に甦る対話篇・ハーバード白熱教室
2 サンデル教授の講義術
3 日本における対話型講義の技術
4 対話型講義による教育改革を
5 対話型講義の美徳 - その実践に関心を持つ人々へ

付論 近現代的正義論から古典的正義論へ - 新しい正義論への道
講義における最大の特徴は、道徳的ジレンマを感じさせるテーマの設定と、フレームワークの活用である。「暴走する路面電車を止めるために一人を犠牲にして五人を救うのは正しいのか」「イチローの給料は公正か」といった問いに対して、功利主義、リバタリアニズム、リベラリズム、コミュニタリアイズムなどの立場から議論を交わすのである。本書のインタビューによれば、対話型講義を上手く運用するためには、どこで意見交換の要素を導入して、それによって何を目指すのかということが非常に重要であるという。その他、サンデル教授の講義テクニックは以下のようなもの。

◆サンデル教授、対話型講義のテクニック
1 学生の発言を論理的に明確にする
2 学生に哲学的立場を自覚させ、それぞれの立場の代表者を見出す
3 個人的な攻撃を避けさせて、学生自身の論理を徹底的に展開させる
4 臨機応変に議論を展開させていく
5 哲学に関する実験をして学生にその内容を考えさせる
6 チームを作って少数派の意見を積極的に引き出す
7 正反対の意見を戦わせて議論を深化させる
8 あえて自分の思想への反対意見を引き出す
興味深かったのは、サンデル教授が授業を功利主義から始めている理由についてである。「功利主義はとても馴染みがあり、シンプルで率直な思想である」と述べている。確かに功利主義は、定量的に捉える事ができるケースが多い。またビジネスを通じて判断を迫られるときの多くは、功利主義的な決断を下すことがベターであるのも事実である。しかしそれゆえに、そこには思考停止という罠も潜んでいるのではないだろうか。

自戒の念も込めて書くと、自分が功利主義であると自覚する持つ人は、本当に他の立場からの視点を深く検証したか、見返す必要があるのかもしれない。
功利主義、リバタリアニズム、リベラリズム、コミュニタリアイズムという各々の視点を一周回った後は、最終的には正解好き嫌いで判断するしかない。こうして考えると、哲学とはその好き嫌いを通して、自分を見つめ直すことなのだなと改めて実感する。
 
ちなみに、今週土曜日(4月16日)、今回の東北大震災をテーマにした講義がOAされるそうである。さまざまなジレンマを生み出した今回の大震災、どのような議論が交わされるのか、非常に楽しみである。

「マイケル・サンデル 究極の選択」 大震災特別講義

放送予定 4月16日(土)午後9時から(73分)

3月11日、日本は、信じがたいような大惨事に見舞われました。その苦しみの中で、多くの人々が、途方に暮れながらも手を携え、耐え、未来へ踏み出しています。大震災の様子は、瞬く間に世界各地に報道されました。世界の人々は、災害のすさまじさに驚くとともに、過酷な状況でも、冷静に協力し合う日本人の姿に感動し、称賛のエールを送りました。
その一人に、「白熱教室」のハーバード大学マイケル・サンデル教授がいます。教授は、日々の生活の中で起こり得る出来事の中から、絶対的な答のない究極の選択を学生たちにぶつけ、「君ならどうする?」と、投げかけてきました。
この番組「マイケル・サンデル 究極の選択」は、そんなサンデル教授が、アメリカ、中国、日本をつなぎ、各地の学生たちに向かって様々なジレンマ「究極の選択」を投げかけ、グローバルな白熱教室を世界同時授業で行っていく予定でした。しかし、今回の日本の震災と言う事態を受け、サンデル教授は、今、日本が置かれた状況に対してこそ、世界の若者たちが、意見を述べ、「私たちは何をすべきか」を考えるべきだと考えたのです。
かつてない試練に直面した日本。今、マイケル・サンデル教授が、新たな指針を探り、世界の人々とともに日本人を激励します。

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