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【書評】『沈没船が教える世界史』:沈没船が運んだもの

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著者: ランドール・ササキ
メディアファクトリー / 新書 / 219ページ / 2010-12-21
ISBN/EAN: 9784840136648

水中考古学という学問があるそうだ。海の中に眠っている沈没船を発掘するのが、主な目的である。古の財宝を巡るスケール感溢れる探究は、多くの研究者たちを惹きつけてやまないだろうと思いきや、意外にも本格的な研究が始まったのは、ここ50年くらいの話であるそうだ。考古学者が自ら海に潜り調査をするという発想が、なかなか生まれてこなかったのである。本書は、そんな水中考古学の研究者で、アジアの沈没船調査の多くに参加してきた著者による入門編という位置づけの一冊である。

◆本書の目次
序章  :漁師たちの発見
第1章 :大航海時代とカリブの海賊
第2章 :ヨーロッパを作った船たち
第3章 :沈没船が塗り替えるアジアの歴史
第4章 :沈没船発掘マニュアル
第5章 :新しい真実を探して
おわりに:海を愛するすべての人へ
発掘の対象が沈没船であることによる価値は、いくつもある。一つ目は保存状態、すみやかに水中の砂に埋まった場合は、酸素と接することがほとんどないので、有機物の保存には陸上より有利なのである。二つ目は、船には社会の縮図があられていることである。例えば食器の種類、遊び道具などを見ることで、身分差や階級の構図を把握することが可能になるのだ。三つ目は、船が移動手段である以上、国同士のつながりや、そのつながりの目的が明らかになることである。この発見は、歴史に新しい解釈を生むこともあり、実にロマンがある。

また、本書で特徴的なのは、「沈没船発掘マニュアル」なるものが付いていることであろう。ここまでの情報が誰に必要なのかなどとも思うが、現在、漫画の『ONE PIECE(ワンピース)』を読んで、心躍らせている少年たちにとっては、最高のお宝なのかもしれない。それにしても、引き上げ後の保存処理に10~15年かかるなど、驚きの事実も多い。

沈没船の存在は、その船が
海を越えて「荷物」を届けるという目的が達成できなかったことを意味する。それは、沈没してしまった船や乗組員にとっては、不幸な出来事だったのかもしれない。しかし、時を越えて運んだ「事実」は、何物にも替えることのできないものである。


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