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【書評】『インターネットと中国共産党』:無形のファイアーウォール

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著者: 佐藤 千歳
講談社 / 文庫 / 384ページ / 2009-12-15
ISBN/EAN: 9784062765350

本書は、中国共産党の機関紙「人民日報」のインターネット部門「人民網」に人事交流で派遣された新聞記者の日々を綴ったノンフィクションである。
著者は北海道新聞の記者、終戦60周年にあたる2005年に開始した赴任中には、小泉元首相の靖国参拝、在上海の日本総領事館職員の自殺など、日中関係を震撼させるような出来事もおこる。しかし、著者は”あいまいさ”を許容する東洋的なアプローチで立ち回り、伏魔殿とも形容される組織の実態を、実にフラットな視線で描いている。

◆本書の目次
・序章  北京到着
・第一章 「人民網」のなかへ
・第二章 急成長する中国ネット社会
・第三章 規制の実態
・第四章 ”温度差”を感じながら
・第五章 発展のかげに
・第六章 人民とは誰のことか
・終章  建国六十周年の北京から
グレートファイアーウォールと呼ばれ、中国全土を覆う検閲システムはあまりにも有名だが、人民網においても、掲示板システムのようなインタラクティブ・コンテンツを運用する際には、検閲ソフトを使用している。また、版主と呼ばれる監督役の職員もおり、発言の削除やときには議論に参加したりもするようである。さながら、言論統制のためのGoogle、Facebookといった感じであろうか。

しかし、これらの”有形のファイアーウォール”より根深いと思われるのは、情報発信する側の心の中に潜む”無形のファイアーウォール”であろう。何せ、著者が赴任した「人民網」というのは、中国共産党の中央宣伝部の管轄にあるのだ。中国という国家をクライアントに持つ広告会社が、報道というキャンペーンを行っているようなものである。国のPRという目的の前には、台湾、チベット、天安門、著作権、貧富の格差、教育の問題などは、ことごとく”無形のファイファーウォール”に引っかかってしまう。

ただし、目的こそ違えど、同じようなことが日本に全くないかというと、そんなこともないだろう。いわゆるタブーやアンタッチャブルと呼ばれるようなことだ。ピンとこない方は、Googleで”報道におけるタブー”とでも検索してみるとよいと思う。つまり本書を、隣の国の話と思って読まない方が良い。そうすれば、我々の心の中にも潜む”無形のファイアーウォール”を実感することができるだろう。ものごとを真っ直ぐに見るとは、実に難しいことである。



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