最近よく聞く「リベラル」と「リバタリアン」って、何が違うの?
最近、よく聞く言葉が「リベラル」と「リバタリアン」という言葉。
両方とも自由主義思想ですが、両者の主張は真っ向から対立してます。
しかし日本人からすると、いまいち違いがわかりません。
そこで、ざっくり解説しましょう。
なおこれは、『永井経営塾』で2026年10月にリリースした最新キーワード解説「教養としての自由主義思想」からの抜粋です。本編は42分の講義ですが、その中からハイライト紹介します。
■「リベラル」の源流はロールズ
「リベラル」と「リバタリアン」の違いを知るには、まずリベラルの源流を知ること。
リベラルの源流は、米国の哲学者ジョン・ロールズによる1971年の著書『政治論』です。
しかし本書は844ページもの大著。そこでポイントをわかりやすく紹介します。
■そもそもリベラルって何?
リベラルの位置づけは、日本では変わり続けてきました。
1970年代... 市川房枝さんに代表される市民運動
1990年代... 中曽根内閣等の影響で、与党内の穏健な改革派
2000年代... 小泉純一郎内閣の登場で、格差是正・弱者保護
2010年代... 安倍晋三内閣の登場で、反安倍/護憲
2020年代... 多様性尊重と人権重視
「リベラルって、なんか綺麗事?」とか「結局、反権力なの?」と思ってしまう方もいるかもしれません。
そもそも、リベラルとは何で、今の政治はどうやって見れば良いのでしょうか?
■人類にとって、普遍的で公正な正義とは?
本書のタイトル「正義論」の通り、ロールズは「人類にとって普遍的で公正な正義とは何か」を考え抜きました。
1970年当時、戦後の世界的な経済成長で、民主主義国家が急増してましたが、自由が当たり前になると不平等が拡大して、実力主義の格差社会が生まれつつありました。
学校の成績だけで給料が決まる世界になると、出来杉君は給料が青天井でも、のび太やジャイアンはそれほど給料は増えません。
「コレって正義なの?」ですよね。
そこでロールズは「そもそも正義とは何か」「最も公正な仕組みで世の中を作り直すとどうなるか」を考えたのです。
■「ここはドコ? 私はダレ?」
ロールズが提唱したのが「無知のベールで、原初状態に戻って考えよう」です。
謎ワードのオンパレードなので、解説します。
人には立場によって様々な利害が異なります。
死ぬような思いをして財産を築き上げたスタートアップ経営者は、「僕の財産は、血と汗の結晶」と考えて、守り抜きたいかもしれません。
一方で、貧乏で学校にも行けない人は、まず食っていくことが最優先です。
あるいは、とにかくのんびり暮らしたい人もいるでしょう。
こんな状態では、そもそも意見が一致しません。
そこでロールズは、「無知のベール」という概念を考えました。
このベールをかぶると、「ここはドコ? 私はダレ?」という状態になって、自分の利害を忘れます。
この状態(=原初状態)で理想社会を考えてもらい、この答えが正義だ、とロールズは考えたのです。
■正義な社会とは
そしてロールズはこう考えました。
「人は原初状態で、自分が最貧困層にいる状態を前提に考えるはずだ。そんな時でも満足できるような公正で不平等のない社会を選ぶことで、全員が合意するだろう。これこそが正義である」
のちに弟子のセンなどに「原初状態まではいいけど、この結論はちょっと強引では?」と突っ込まれているのですが、とにかくロールズはそう考えたのです。
■正義のための2つの基本原理
そして考えたのが「正義のための2つの基本原理」です。
【 第1原理】いかなる人にも平等に、基本的人権を割り当てるべきだ
これは分かりやすいですね。そして二つ目は...
【 第2原理】仮に社会的・経済的な不平等がある場合は、次の2つの条件を満たすべきだ
①機会の平等→ まず機会は平等に提供する
②格差の是正→ とはいえ、超優秀な人がいるのでどうしても格差が出るので、是正する必要がある。優れた能力は、共通利益のために活用する社会的資産にしよう。
この「機会の平等」もわりと合意する人は多いと思いますが、「格差の是正」については色々な意見がある人もいそうですね。
いずれにしてもこのように、リベラル思想の基本は「徹底した弱者保護と、格差是正」です。
ちなみにロールズは、稲盛財団の京都賞思想・芸術部門の授与の内示を受けました。賞金5000万円です。
しかしロールズは受賞を辞退。受賞条件が天皇との会食だったからです。
いわく「特権化された社会階級に地位を与えている貴族制社会やカースト制社会は、正義に反している」
まことに気骨あるリベラリストですね。
こうしたリベラル思想が理解できると、リバタリアンとの違いがわかるようになります。
■ノーランチャートで、米国政治思想を整理する
政治思想を整理するために、リバタリアニズムの創始者デイヴィット・ノーランが提唱したのが「ノーランチャート」です。
このチャートで、米国の政治家や思想家を整理してみましょう。
■米国では、ニューヨーク市長にゾーラン・マムダニが就任しました。マムダニは「民主社会主義者」を自称し、弱者保護のための様々な施策を実行しています。
マムダニは、まさに「リベラリスト」です。
このようにリベラリストは「個人の自由は大切だが、格差は是正しよう」と考えます。個人の自由は重視しますが、そのために経済的自由はある程度の犠牲はやむを得ない、と考えるのです。
■一方で、思想家であり起業家のピーター・ティールは、自由至上主義者で、国家の介入を一切拒否しています。経済的自由も個人の自由も、徹底して重視しているのです。
ティールの思想が「リバタリアニズム」です。日本語では「自由至上主義」とも訳されます。
同じ自由主義者でも、随分と違うものですね。
リバタリアンからすると、リベラリストは自分の血と汗の結晶である財産を奪う相手です。
逆にリベラリストから見ると、リバタリアンは社会全体の公平な正義を考慮しない個人主義者です。
だから両者は対立しているのです。
このように
・個人の自由を、重視するか、軽視してるか
・経済的自由を、重視するか、軽視してるか
で整理したのが、ノーランチャートです。
この図ではF・ルーズベルト、レーガン、バイデンも整理してみましたので参照してください。
■ロールズ(=リベラリズム)への批判
一方で、ロールズやリベラリズムに対する批判もあります。
■「歴史の終わり」の著者フランシス・フクヤマは、「民主主義の危機だ最近言われているが、問題は民主主義ではなく、リベラリズムが迷子になっていること。基本原則である寛容さを失っている。中庸を取り戻すことが必要だ」と述べています。
■アマルティア・センは「そもそも最高の正義について合意するのはムリ。個人の選択肢を広げるような、よりマシな選択をする方が現実的」と主張しています。
このように、様々な批判があるリベラル思想ですが、こうしたことを踏まえて、自由について自分は何が正しいと思うのかを考えたいところですね。
以上、講義動画からハイライトをご紹介しました。
『永井経営塾』ではこうした最新動向のキーワード解説を毎月動画でお送りしています。
これからも『永井経営塾』のコンテンツの中から、ハイライトをご紹介していきたいと思います。
■『永井経営塾』個人ユーザー向け案内
■『永井経営塾』法人ユーザー向け案内