『朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力』が生まれるまで(5):企画第1段階 (08年11月~09年1月)
『朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力』が生まれるまでの経緯を連載でご紹介しています。連載バックナンバーは、こちら。
編集の方と出会った翌日から、メールでのコミュニケーションが始まりました。
まずは、新しい本がどのようなものになるか、一緒に考えてみようということになり、早速、企画案ドラフトを作ってみました。
実はこの段階では、この企画案は、今回出版した内容とは大きく異なる内容でした。
この時点では、前著『戦略プロフェッショナルの心得』の延長線上で考えました。
対象読者を「スキルは自分で身につけなければ」と常々感じてながら、マーケティングには興味はあるがなかなか敷居が高いと感じている若手ビジネスマン(=団塊ジュニア世代)に絞ってみました。
この世代は、なかなか親身に教えてくれる先輩が周りに見つかりません。本書でその役割のいくぶんかでも果たすことができればと考えました。
これを受けて目次構成を詰めていくことになりました。
おおまかな構成は、前著を基本にし、かつ簡略化していきました。つまり
Step 1:顧客を知る
Step 2:戦略を立てる
Step 3:マーケティングミックスを構築する
Step 4:実践し、結果を改善していく
前著ではビジネスキャリアプランに1章を割り当てましたが、今回、これは割愛しました。ただし、最終的には、ビジネスキャリアに関する考え方は、全編にちりばめられる形になりました。
また、方針としては、世の中の事例を謎解きしながら、マーケティング理論がハラに落ちるように学べることを狙い、コンセプトを詰めていきました。
具体的には、世の中の各種マーケティング事例を中心に、質問を設定し、それぞれに対して回答を解説していく方向性で各章立てを考えていました。例えば以下のような形です。
・なぜ、鉄道会社の事業は鉄道事業ではないのか?
・なぜ、街の電器屋が家電量販店に勝てるのか?
現時点でこの章立てを改めて見直すと、本書の構成の多くの部分が、この時点で部品として出来上がっていました。
しかし、この時点で出来上がっていたのはあくまで部品。
ブログ等で断片的に書くと、それなりにリアクションが期待できる面白い内容だと思います。
しかし、本としては、断片的なメッセージではなく、全体で統一したメッセージ性を求められます。骨太のシナリオのもとで全体最適が必要なのです。
また、このように質問を設定して答えていくタイプの本は、世の中に既に多く存在しています。
色々と詰めていくうちに、「他にはない、この本の本当の価値が一体何なのか」「そもそもの価値が明確に打ち出せていないのではないか」というジレンマに陥ってしまいました。
言い換えると、本書で言うところの
『本書のバリュープロポジションが明確でない』
という点に尽きました。
(1). 対象とする読者が誰なのか、
(2). その読者が抱えている課題が何なのか、
(3). その課題に対して本書がどのような価値を提供できるのか
(1)/(2)はある程度明確にしていましたので、(3)について、改めてしっかりと定義する必要があると感じ始めていました。
企画の第一段階は、行き詰まってきました。