"Me, too, strategy"からの脱却
成熟した同じ市場セグメントに、過半のシェアを持つ強力な競合企業がいたとします。
強さの理由は、チャネル全体を支配していたり、製品が極めて強力だったり、マーケテインングが巧妙だったり、様々です。
さて、「この市場から撤退する」という選択肢がない場合、あなたはどのようにしますか?
相手の製品を調査してこれを上回る製品開発に投資したり、チャネルに対してより強力なインセンティブ・プログラムをうったり、マーケティング予算を獲得してよりアグレッシブなマーケティングをやったり、ということを考える人もいるかもしれません。
しかし、これは"Me, too, strategy"(強いて訳すと「私も戦略」)というもので、成功する可能性はあまり高くありません。
既に過半のシェアを握っている競合相手に対して、同じ土俵で相手と同じ方法でより大きな努力をしても、規模の経済によって、相手はより低コストで高い利益を享受しているため、なかなかシェアを挽回することは出来ないからです。
一つのカギは、クレイトン・クリステンセンが「イノベーションのジレンマ」で述べている通り、破壊的イノベーションの活用です。
何故、破壊的イノベーションが、市場のリーダー企業にとって危険なのか、クリステンセンは以下のように述べています。
---(以下、p.84より引用)---
「顧客の意見に耳を傾けよ」というスローガンがよく使われるが、このアドバイスがいつも正しいとはかぎらないようだ。むしろ顧客は、メーカーを持続的イノベーションに向かわせ、破壊的イノベーションのリーダーシップを失わせ、率直に言えば誤った方向に導くことがある。
---(以下、p.247-251より引用)---
性能の供給過剰が発生すると、破壊的技術が出現し、確立された市場を下から侵食する可能性が出てくる。….1988年には、3.5インチドライブの平均容量は、主流デスクトップ市場が求める容量に匹敵するようになり、5.25インチ・ドライブの平均容量は主流デスクトップ市場が求める容量を約300%も超えるようになっている。….その結果、デスクトップパソコンメーカーは急速に3.5インチドライブに切り替え始めた。…実際には3.5インチの方が1MB当りコストで20%高かったが、1986-1988年の市場では(設置面積縮小のため)ドライブの大きさが他の特徴よりも意味を持つようになり始めた。
---(以上、引用)---
冒頭の課題に対応するためには、市場における破壊的技術が何なのかを常に把握し、いかにそれを活用するかを考えることが必要になります。
また、同じ市場でも、ユーザー・セグメントを変える方法もあります。破壊的イノベーションの場合も、当初はローエンド又は非消費のユーザーセグメントを狙い、破壊的技術の性能が上がるに従って従来のセグメントでのシェア獲得につなげることを狙います。
もちろん、これ以外にも様々な戦略があります。
一種のゲームとして色々と考えてみると、面白いですね。