古屋誠一展「Aus den Fugen」
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三島にあるヴァンジ彫刻庭園美術館で行われている写真展、古屋誠一展「Aus den Fugen」を見てきました。
古屋さんは1978年にオーストリアで出会ったクリスティーネ・ゲッスラーと結婚、息子さんを授かりましたが、クリスティーネは1983年に精神的に不安定になり、1985年に東ベルリンのアパートから投身自殺。7年半の彼女との生活は突然中断されました。
写真展は、古屋さんがクリスティーネと出会ってから彼女がこの世を去るまでのポートレイト、及び彼女亡き後に撮り続けた作品からなっています。
1979に伊豆で撮影された、はにかみながらカメラを見る、初々しく幸せそうなクリスティーネ
発病後、感情のこもらない目でレンズをまっすぐに見つめるクリスティーネ
剃髪したクリスティーネ
息子を抱えながら呆然と立つクリスティーネ
彼女亡き後に撮影された、枝で作られた十字架や枯れ草を燃やしている写真、野うさぎの朽ち果てた死体等。
どの作品も緊張感をもち、胸がしめつけられます。
彼女のポートレートは生前にはプリントされることはなく、また、フィルムも死後11年間放置されていたそうです。彼女との記録を撮り続けた写真は、彼女の自殺により、古屋さんにとって全くその意味が変ってしまいました。古屋さんが彼女の死を消化するには、10年以上の時間が必要だったということなのでしょうか。
私が作品を見て感銘を受けながら、今ひとつ消化不十分なものを感じたのは、古屋さんがまだ彼女の死を完全に消化し切っていないことが理由のような気がします。
その意味では、クリスティーネが去ってから22年が経過した現在も、この作品は発展途上と言えるのかもしれませんね。
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