『イノベーションへの解 実践編』翻訳しました
『イノベーションへの解 実践編』という本を翻訳しました。9/19に翔泳社より発売されます。Amazonで予約受付中です。
タイトルからわかるとおり、クレイトン・クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』、『イノベーションへの解』、『明日は誰のものか』に続く書籍となります。ただし、書いているのはクリステンセンではなくて、クリステンセンが共同創立したコンサルティング会社であるイノサイト社のパートナーの方々です(主著者のスコット・アンソニーは『明日は誰のものか』の共著者でもあります)。タイトルの通り、クリステンセンの理論を戦略コンサルティングの現場で適用してきた経験をまとめたものであり、事例、プロセス、フレームワーク、テンプレート等が豊富に提供されています(個人的にはイノベーションのメトリックス(評価指標)に関する記載が大変勉強になりました)。なお、クリステンセンは序文を書いていますが、短いながら大変に示唆に富んだ内容です。
原題は"The Innovator's Guide to Growth"、邦題はちょっと考えましたがベタな案に落ち着きました。『できる!イノベーションの解』というのも考えたのですが、インプレスさんに怒られそうなのでやめました(注:「できる」はインプレスの登録商標)
アカデミアの人が書いた経営書は「理屈としてはわかるけど、では、現実にはどうすんのよ」と感じてしまう点がないとは言えないと思いますが、本書はそのような不満に対する的確な回答になっていると思います。クリステンセンの今までの著作を読まれた方には、是非、本書も読まれることをおすすめします。具体的な事例により「あー、あれはそういうことだったのか」と目から鱗があるかもしれません(私もそうでした)。また、クリステンセンの本を読んだことがない方、または、買ったけど「積ん読」状態になっている方は、本書をまず読んでからクリステンセンの本に戻るとより理解が深まるのではないかと思います。クリステンセンの文章は当然ながら経営学の論文という堅めの文体ですが、本書はよりビジネス書ぽいわかりやすい文体になっています(翻訳もできるだけスムーズに読めるように心がけました。)
本が発売されたら、このブログでも「破壊的イノベーション」についていろいろ書いていこうと思います。
ところで、これも私の訳であるジェフリー・ムーアの『ライフサイクル・イノベーション』ですが、コンスタントに売れて第5刷になりました。クリステンセンの本と合わせて読むと、ムーアとの考え方の似た点、違う点がクリアーになっておもしろいかと思います。
また、ヘンリー・チェスブローの『オープン・ビジネスモデル』ですが、これも、イノベーションに対する別のアプローチとして興味深いので、どうせなら合わせてお読みくださると幸いです(『イノベーションへの解 実践編』にもこの本を参照している部分があります)。この本は、ちょっと原書のタイトルが微妙だったので、「シェアーする知財」とか「知財駆動型イノベーション」とかキャッチーなタイトルを考えていたのですが、作者側からの要求で原書と同じタイトルにせざるを得なくなってしまったという経緯があります。
まーこういう感じで年1ペースでビジネス書の翻訳をしてきましたが、今年はもう1冊出せるかもしれません(これもかなりのビッグタイトル)。