オルタナティブ・ブログ > 栗原潔のテクノロジー時評Ver2 >

知財、ユビキタス、企業コンピューティング関連ニュースに言いたい放題

JASRACへの公取委立ち入りはニコニコ動画にどのような影響を与えるか?

»

JASRACへの公取委立ち入りの件ですが、(紙の)日経夕刊にちょっと詳しく載っていました。

まず前提として説明しておくと、放送局とJASRACの間の契約は包括契約という形態になっており、放送局が収入に一定割合を乗じた金額を支払えば、自由にJASRAC管理曲を使えます。JASRACは徴収した利用料をサンプリング調査等に基づいて決めた分配率で各権利者に分配することになってます。どんぶり勘定方式ではありますが、事務手続きの容易さという点ではメリットがあります。

今回の件は、この包括契約に加えて何か不公正な契約があったのかと思っていましたが、日経の記事によると、「包括契約の仕組み自身」が問題とされたように読めます。つまり、JASRAC以外の著作権管理団体(JRC等)との契約では、個別の曲を申請する仕組みになっているので、放送局側が契約をいやがる(JASRACと包括契約しておけば95%の曲が使えるので、残りの5%の曲を使うために追加料金を支払いたがらない)という点が問題とされているようです。しかし、これは、JASRAC以外の管理団体も同様に包括契約にすればよい(JASRACが収入の1.5%徴収しているのなら、管理曲数を考えて0.05%くらいを徴収すればよい)ような気がしますが、よくわかりません。

今回の件でそもそも包括契約自身が不公正であるみたいな結論になると、動画サイトとJASRACの関係にも影響があるかもしれません。

JASRACとニコニコ動画の契約の内容も詳細は不明ですがどうやら放送局式の包括契約になっているようです。

一方、eyeVIOは動画のアップ時にJASRACのデータベースを検索して情報を付加できるようになってます。一度操作ミスで情報付加しないで動画上げたらまもなく「この動画は権利侵害の可能性があるから消してください」みたいなメールが来ました。ちゃんとチェックしているみたいです。ということから、個別の曲ごとに料金を支払う仕組みになっているのかもしれません。少なくとも分配はどんぶり勘定ではなく、再生回数で決まるようになっていると思われます。

包括契約自体がNGという結論になると、ニコニコ動画もeyeVIO式に動画アップの際に使用楽曲を申請みたいな仕組みになるかもしれません。まあ、中の人のプログラマーさんにちょっとがんばっていただければそんなにユーザービリティは落ちないと思いますし、そもそも、権利者に公平に利用料が分配されるかという点では包括契約は問題あるので、こっちの方があるべき姿かと思います(たとえば、今のニコ動の状況を見るに吉幾三氏にかなりの著作権利用料が回るべきかもしれませんが、包括契約方式ではこういった事情が反映されない可能性が高いです)。

あと、ついでに言っておくと今後のことを考えれば、JASRACは楽曲データベース(J-WID)のWeb APIを解放すべきであると思います。

Comment(2)

コメント

彬兄

JASRACが包括契約以外の現実的かつ従量的な選択肢を用意すれば、包括契約を残していても問題はない気がします。

・放送メディアがJASRACと契約する場合、包括契約以外に現実的な選択肢がない
・包括契約ではJASRAC信託曲以外の曲を使っても支払い金額が同じなので、他の管理事業者楽曲を使用するメリットがない

この2点がセットで機能しているから問題なのではないでしょうか。
現状、たとえJASRAC以外の管理事業者が包括契約を用意したとしても、信託曲数においてほぼ市場を独占しているJASRAC以外と契約するメリットが放送局にはほとんどありません。
逆に、JASRACとの契約が売上基準の包括契約であっても、例えば、全楽曲中に対するJASRAC信託楽曲の比率で金額が上下する仕組みに変えれば問題はなくなる気がします。
包括契約であっても使用楽曲は全曲報告するわけですから、全使用楽曲に対するJASRAC信託曲使用比率を出すことも理屈の上ではそんなに難しい話ではないですし、包括契約廃止以外にもやり方はいくつかある気がします。

とおりすがり

根本的な部分に違和感を覚えるんだが、個人の権利を管理委託されているのにソレを一括で考えること自体が妙な話ではないかw 利用者側の視点に立った「包括契約」は本来守るべき権利者の必要とする「自分の作品がいかにして利用されているか」という情報を全く度外視している。

これで「権利委託業務を遂行している」とは片腹痛い。

コメントを投稿する