嵌合(かんごう)という言葉への特別な思い
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私のコンピュータ人生の出発点は、電機メーカーだ。その会社のシステム部門にいた。ある日、寮でおなじみの製造部の先輩が菜っ葉服姿で尋ねてきた。歩留まりをよくするために嵌合のシミュレーションをしてくれないかという。ドアの開閉などの油圧ポンプの外側の部品と内側の部品を作るのだが、微妙に寸法が違う、作ったものを手探りで嵌めてみて、セットを作っていくのだが、それぞれの寸法をコンピュータに入れて、どれとどれを組み合わせればいいか、最も歩留まりのいいのは、どの組み合わせかをコンピュータで計算して欲しいという依頼だ。
私は上司に相談することなく断った。そんな個人の要望を高価な計算機でやらせるわけにはいかないという思いと、そもそもその人が戦闘的な組合員で、会社から疎んじられている人だったからだ。何十年たった今でも、そのときのことを思い出す。私が、パソコンが出たとき、メインフレームを捨てて、パソコンに走ったのも、この時の原体験があるからかもしれない。
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