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若手営業員の育成ニーズ~その2

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(前回の続き)

 前回のエントリーで若手営業員に伝承すべきナレッジを5つに分類したが、とうぜんこの5つは異なるナレッジなので伝承方法やそれを支援するシステムは異なってくる。具体的に若手営業員にスキルを伝承する方法も含めてもう一度順番に5つのナレッジを見ていく。

1.商品/サービス自体に関するナレッジ
 このナレッジは一般的に最も伝承しやすい。なぜなら通常は5つのナレッジの中で最も形式知化が進んでいるからである。売っているものが製品になっているのであれば、カタログやパンフレットに性能や機能がきちんと説明してあるはずである。基本的にはこういった資料を若手に渡して読ませることから始る。
 もっとも他社の営業員と渡り合う為のポイントとなるのは、製品の性能や機能ではなく、競合他社の競合製品との比較内容だとか差別化要素といった部分になる。これも一般的な会社であれば、ドキュメントが整備されているのでそれをきちんと暗記させることだ。もしこのあたりの資料が無い場合は、OJTで先輩に帯同して先輩が話す内容をそのまま記憶させることになる。
 若干難しいのは、無形のサービスを売る会社の場合で、これはサービス内容をわかりやすくパンフレットなどにまとめたものがあれば、やはりそれを暗記させることが第一歩である。例外はコンサルティングサービスなど売っているサービスが文字や資料にしにくい会社の営業員であるが、この場合はOJT等による口伝でサービスの説明を伝承するしかない。でもこうした会社が、新卒営業を大量に採用するようなこと少ないはずなのでこれはあくまで例外だ。
 こうして覚えた内容をいかに魅力的に説明するかというのがプレゼンテーションスキルとなる。

2.業務プロセス処理に関するナレッジ
 前回書いたように、これは自社の中での動き方や業務の処理手順に関する知識である。これもしっかりした企業であれば、社内にマニュアルが整備されている。業務手順書だとか受注システム利用の手引きや請求システムマニュアルというのがこれにあたる。
 ただ、こういった社内手続きやマニュアルのたぐいというのは、なぜか発行する管理部門の目線でしか作成されないので、一般に営業員は営業->受注->納品->請求->回収という一連のプロセスにおいて複数の手引きやマニュアルをあっちこっちから引っ張り出して処理していることになる。
 若手営業員の教育には、必要な手順やマニュアルだけを抜き出して、業務プロセス順にまとめなおした手引き書などを作成して新人に配ると研修効率が上がる。但し当然こういった手順やマニュアルの原本は変更されるので、引用/抜粋するときにリンクの仕組みを使うなど改訂時に陳腐化しない工夫をしておくと良い。
 最も全ての業務プロセスについてマニュアルが整備されているわけでなく、キャンペーンやクレーム処理など例外的な営業プロセスに関する処理マニュアルはない場合のほうが多い。こうした例外的な業務プロセスの経験はOJTなどで補完するしかない。あと、まれにこういった業務プロセス自体が形式知になっていない組織がある。そういった組織は良い機会なので今年潤沢に入った新入社員を使って業務プロセスマニュアルを整備させるのも良いだろう。
 あるいはマニュアルが要らないような、わかりやすいシステムへ組み替えるとかERPのように上流での入力値がそのまま下流に流れるようなパッケージを採用するだとか、業務手順を単純化してしまうというのも、結果的には教育負担を下げて教育コストの削減と若手営業員の早期育成につながる。

 今日のエントリーに書いた2つのナレッジはいずれもドキュメントや座学での伝承が他の3つに比較すると容易である。したがって、この2つのナレッジの伝承にITを使うのであれば、整備されたマニュアル管理システムの構築、最新版の製品情報やパンフレットを格納した文書ライブラリの構築がシステム面でとりえる支援策のひとつめ、次がそういった蓄積ドキュメントの検索や再利用を容易にする、体系化メニューとキーワードによる全文検索エンジンの導入になる。ITをもっと活用するということであれば、eラーニングシステムの導入も検討して良いだろう。
 そしてこの場合の留意点は、単なる現時点でのドキュメント整備ではなく常に最新版を手軽に入手できる仕掛け、逆に言うと日々更新されるドキュメントをきちんと差し替えられるメンテナンスの仕組みである。

(つづく)

#ここで言い訳をしても仕方が無いが、最近本業が非常に忙しくて、エントリーが小出しで分断されてしまう。必ず最後まで書くのでご容赦を。

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