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エンタープライズコラボレーションの今と今後を鋭く分析

同質で専門性が低い集団から叡智が生まれることは期待薄らしい

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 ずいぶんと前の話になるのだが、SNSというか組織におけるコミュニティやコミュニケーションがもたらす効果に関連する各種データや調査結果をまとめたエントリーを書いた。
 そのエントリーで

米国で複数の専門家を集めて研究チームをつくった場合に、そのチームに含まれる専門家の異質度と研究成果の度合いの関係を調べたところ、同質性が高いほうが平均の成果は若干高いものの、非常に大きな成果は異質度が高いチームから出ることが判ったと言う実験結果がある

と書いたのだが、その際に出典がわからなくて出典を記載していなかったこの調査について最近ようやくと元記事を再発見したので改めて紹介。

 元記事はハーバードビジネスレビュー日本版の2004年12月号の「『学際的コラボレーション』のジレンマ」という記事(オリジナルのHBRだと2004年9月号の記事)であった。この記事では、ハーバードビジネススクールのLee Fleming准教授による17,000件あまりの特許を調べた「ブレークスルーの関係性」というグラフが紹介されている。Hbr200412_1 そのグラフを記事から引用するが、グラフの横軸にプロジェクトメンバーの専門領域の類似性をとり縦軸にその結果生み出されるイノベーションの価値の平均をとると、価値は類似性や関連性と反比例することがわかる。ただし、画期的な発明はより類似性の低い集団から生まれることもグラフは示している。

 このような類似性の低い集団はイノベーションを生み出さないというような失敗をする確率も高いようだ。この件についてLee Fleming准教授は、失敗を避けるためのコツとして深い専門知識を有する専門家たちを結集させることを挙げている。知識の浅い人たちのチームは、様々な可能性を突き止めるという面では効果があるが実際的な相乗効果は上げにくいとも述べている。

 直感的にもわかりやすく興味深い研究結果だと思う。昨今はイントラブログだとか社内SNSがはやりであるが、もしこういったツールを使って社内のコミュニケーションをコントロールして何かを生み出そうとするならば頭に留めておいたほうが良い。※ぜひ元記事を買って読んであげてください。
 この調査どおりだとすると、営業部門同士や研究部門同士でコラボレーションしても大きなイノベーションは起きにくいということだ。したがってもし一発逆転を目指すような目的でコミュニケーションのコントロールを行うのであれば、あえて違う部門間でコラボレーションせざるを得なくしたり、無意識のうちにコミュニケーションを取ってしまっているような仕掛けを考える必要がある。

 そして多様性もなく専門性も低い集団においては、いくらコミュニケーションを強化しても、これまでにないような叡智発生の期待度は低いということは(少なくとも先端分野では)あらかじめ覚悟しなければいけないようだ。

Comment(4)

コメント

私の拙い経験だと、クロスファンクションのような、会社を横断するプロジェクトの場合、目的・目標がはっきりしており、かつ、参加者がみな積極的になっている場合は、すばらしい成果を生む可能性があるようです。
 
逆に、単にクロスファンクションという名目で呼び出され、隠れた目標が一部の部門に取ってのみ有意義であったり、目的があいまいだったりした場合、めちゃくちゃになる事が多いように思われます。
 
派閥だの系列だのという事が平然と言われる組織では、なかなか、すばらしい成果は生まれないようです。結局ある派閥だけでプロジェクトを遂行してしまう事が多かったような経験があります。そんな状況では、優れた専門性など、発揮されないままに終わるようですね。

コメントありがとうございます。
 おっしゃるとおり目的の不明確なチームは何においても適当なアウトプットを出せないと思っています。何をやるにも目的やゴールの明確化が一番重要だということだと思います。
 実は主題は違いますが同じような内容を明日エントリーしようかと下書きしていました。
 ちなみに同じHBRに「クロス・ファンクショナル・チームの誤謬」(2003年2月)という記事もあります。ご参考までに・・。

taco2003

あるメーカで働いています。
「収益性が高い」または「競合に勝つ」商品を生み出すには、「画期的」で「顧客の潜在的な欲求を満たす」アイデアや商品が必要なときがあります。それを生み出すには顧客に近い営業だけでは良いアイデアは生まれず、顧客から遠い開発だけでも従来から抜け出せない商品しか生まれないというのが私の経験です。
だから、顧客に近い営業の経験と技術者の知識を如何にして結びつけるか、しかも会議などコストの浪費を最小限にして効率的かつ合理的に行うKEYは「SNS」や「Wiki」などと思っています。
しかし、ITを投入すれば全て上手く行かないのが人間ですので、ITを道具と割り切り、上手く使う方法や仕組みづくりがとても重要だなぁとよしかわさんのブログを拝見して改めて思った次第です。ありがとうございました。

taco2003さん、コメントありがとうございます。
 営業と技術者が結びついて協力しないと画期的な商品が出来ないのは、おっしゃる通りだと思います。
 でもそれは単なる場の提供だけでは無理だと思います。コラボレーションせざるを得ない仕組みなどを考えたほうがよいと思います。
 ジャストアイデアですが、例えば、営業が顧客から聞いたクレームや商品の改善要望を書き込める掲示板を作って技術者が必ず答えるルールにするのはどうでしょうか?その時に、営業の書き込みは技術者から見たときには書いた個人が特定できないようして、逆もそうします。同じ部門どうしでは名前も見えるようにしておきます。こうなると当然部門間の喧嘩のようなやりとりになりますが、これであえて議論を活性化させてベースとなるアイデアを露出させます。その後第3者である企画部門や管理部門がこのログを見てアイデアを汲み上げるようにするとか。
 最後はそういう人間面の仕組みがポイントになると思います。

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