マーケティング発想法「高値安定市場に疑問を持とう」
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皆さんは「俺のフレンチ」というレストランをご存知ですか?
本格フレンチを格安の値段で提供している「立ち喰い・立ち飲み」形式のフレンチレストランです。
牛フィレ肉とフォアグラを使った料理が1000円台という破格の料金に加え、シェ松尾の松涛レストランや青山サロンの元料理長といったトップシェフが料理をお出しするということで、口コミで噂が広まり、いまや行列ができるほどの人気店となっています。この人気に後押しされて、銀座店、神楽坂店、恵比寿店など、順次店舗拡大しています。
この「俺のフレンチ」を展開しているがBOOKOFFの創業者である坂本孝さんです。BOOKOFFを離れた後、何をしていたのかと思ったら、なんと外食産業に参入していたんですね。燃え続けるベンチャースピリットには頭が下がります。
「俺のフレンチ」では何故高級フレンチが格安の値段で提供できるのか、その理由は「顧客回転率」にあります。
飲食店においては、商品単価を下げることで確かに来店客数は増えますが、お店の席数というキャパシティがある限り、1日の売上客数は限定され、単価が下がった分だけ利益が減るというジレンマがあります。では、どのようにしたらキャパシティという限界性をブレイクスルーできるのか、そこで考えられたのが「立ち喰い・立ち飲み」というスタイルによる回転率の向上です。
深夜まで営業しているお店は別として、一般的なレストランの平均回転率は1回、多くて2回という状況の中、「俺のフレンチ」の平均回転率は3.7回という非常に高い回転率となっているそうです。
また、この立食スタイルは回転率を高める効果だけでなく、「高級フレンチ」と「立食」というミスマッチ感の面白さや、ちょっとしたイベント感など、マチュアな都市型生活者の感性をくすぐったこともヒットの要因なのではないかと思います。
ここ最近、「高くて当たり前」と思い込んでいた業界におけるイノベーション事例が多く見受けられます。
エアライン業界におけるLCCや、ブライダル業界における格安結婚式サービスなど、高値安定していた業界に新しいイノベーションを持ち込んだビジネスが次々に登場してきています。
「俺のフレンチ」では"もっと気軽に、より多くの人達にフレンチを食べてもらうためには"という発想が、またLCCでは"バスのように飛行機を使ってもらうためには"という発想が高値安定市場にイノベーションを生み出してくれました。
言い方は悪いですが、高値安定市場は消費者の「高いのは当たり前」という漠然とした意識に胡坐をかいている市場です。
だからこそ新しいイノベーションによる獲得チャンスが大きい市場だとも言えます。
こうした高値安定市場に疑問を持ち、どうしたら攻め込めるのかを考えることも起業や新規ビジネスを考える上でとても大事なことだと思います。
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