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マーケティングのはじめの一歩は消費者を理解することから。変化する消費者動向をとらえるためには仮説が大事。このブログでは消費者理解のための様々な仮説をデータに基づいてご紹介。商品開発・ブランディングのコンサルタントとして、あらゆる市場のイノベーションを目指して日々格闘している大久保惠司がお届けします。

日本のスマートフォン市場を眺めてみた。-消費者データから見るブランドポジション(2)-

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 「クラウド型消費者分析ツール『ぺるそね』」の2012年6月調査では、「スマートフォン」についても聞いています。前回は携帯電話とスマートフォンを一緒の項目で聞いていたのですが、「スマートフォン」は単独で聞いて欲しいというご要望が強く、それに応える形になりました。今回の調査では、有効回答数31,444人(男性:15,269人、女性:16,175人)の方にアンケートに答えて頂いています。それでは、約30,000人の小宇宙「ぺるそね」の「スマートフォン」の市場に関してご紹介しましょう。


【スマホ利用者について】

 「ぺるそね」では消費行動として、様々なカテゴリーにおいて、どのブランドを所有または利用しているかを聞いています。今回「スマートフォン」を所有していると答えた方は12,225人いらっしゃいました。これを全回答者31,444人で割ると、38.9%にあたります。ネット調査によるバイアスによって、ちょっと多いのかも、と思って他のデータを当たってみました。

 「ぺるそね」と同様に、パソコンでのインターネット調査によって「スマートフォンユーザー」の調査をしているインプレスによると、2011年9月調査の「スマートフォン/フィーチャーフォン利用動向調査」で、スマートフォンの利用率を22.9%と公表しています。同時期の「ぺるそね」の調査でiPhoneの利用者は全体(29,093サンプル)の5.5%でした。今回(2012年6月調査)のiPhoneの利用者は全体(31,444サンプル)の10.5%とほぼ倍増しています。そう考えると、この条件では40%前後でもおかしくはないか、とも思えます。いずれにしても急速に普及が拡大しているのはわかります。

 スマートフォン利用者の性別で見てみると、男性がやや多いものの、ほぼ半々の状況です。スマートフォンは若い男性が買うもの、という状態はすでに超えて、今は男女隔たり無く、しかも幅広い年齢層に普及し始めたということです。現に各キャリアから発表された、今年の新機種のほとんどがスマートフォンという状況です。

 スマートフォンの利用
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【メーカー別、キャリア別のシェアを見てみる】

 メーカー、キャリア別のシェアを見ていきましょう。メーカーブランド別のシェアでは、「アップル」がトップになりました。スマートフォンを所有していると答えた12,225サンプルのうち、27.1%がiPhoneということになります。次いで、「シャープ(16.7%)」「ソニーエリクソン(現ソニー、10.1%)」「富士通(7.0%)」「NEC(5.7%)」「サムスン(4.9%)」と続きます。「シャープ」はフィーチャーフォンではシェアトップですが、iPhoneを除いたスマートフォンでもトップになりました。

 スマートフォンのシェア
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 通常プラットフォームの転換時にはシェアの大きな変動があるものですが、「シャープ」は日本メーカーの中ではスマートフォンへの対応も早く、今のところは優位を保っています。「ソニーエリクソン(ソニー)」はフィーチャーフォン市場では遅れをとっていましたが、スマートフォンシフトをチャンスにして躍進しました。iPhoneを除いたシェアでは「シャープ」に次いで2番手につけています。「パナソニック」はスマートフォンに乗り遅れた形になり、最後尾につけている状態です。アップルvsアンドロイドの構図で見ると、アンドロイド陣営がアップルを量的に圧倒している状況です。

 一方、キャリア別のシェアをみると、「NTTdocomo」がトップ企業の貫禄を見せていますが、フィーチャーフォン市場ほどの圧倒的な差にはなっていません。iPhoneを手に入れた「SoftBank」が有利に展開を図り、二番手につけています。「au」はスマートフォンに最も乗り遅れた形になっていましたが、これもiPhoneを扱うようになってからはMNP(モバイル・ナンバー・ポータビリティ)が入超になり、持ち直してきたようです。


【ブランドポジションを見てみる】

 それでは、ブランドポジションを見てみましょう。最初のマップは年齢と性別のデータを元にマッピングしています。バブルの大きさはシェアを表しています。実際のポイントはバブルの中心点です。最も年齢層の低い層に受けているのが「ソニーエリクソン」でやや男性が多いようです。さらに男性が多いのが「サムスン」。シェアトップの「アップル」と二番手「シャープ」は近いポイントにポジションされていますが、「アップル」がやや男性寄りなのに対し、「シャープ」はやや女性寄りになります。年齢層の高い位置にあるのが日本の携帯メーカー。「富士通」「NEC」「東芝」が仲良く並びます。さらに年齢層の高い位置にあるのが「パナソニック」となっています。それにしても「富士通」と「NEC」は、本当に良い(?)ライバル関係にありますね。

 ブランド・ポジショニングマップ(年齢×性別)
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 次のマップは性別を平均世帯年収に替えてみました。世帯年収の高い順に「NEC」「アップル」「富士通」「ソニーエリクソン」「パナソニック」となっています。アップルを除くと「NTTdocomo」メインのメーカーです。「アップル」は年齢層が若く、世帯年収が高いエリアに位置しています。

 ブランド・ポジショニングマップ(年齢×世帯年収)
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 携帯電話市場がスマートフォン市場に塗り変わりつつあります。このことで、海外ブランドのデバイスが日本の市場に根付き始めました。世界で一番携帯電話を売っていた「ノキア」でさえ、日本市場には定着できなかったことを考えると、ここ1〜2年くらいの変化は目をみはります。

 さらにトップブランドもそれぞれのブランドのポジションも変化します。今回の変化では、キャリアの勢力図さえ変えてしまいそうです。そういった意味ではプラットフォームの転換点が最大のマーケティングチャンスになるという好例だと思います。それは多分、市場の競争原理が変わってしまうからでしょうか。新しい競争原理を設定し、消費者の支持を得たブランドが勝者となる、ということだと思います。

*データは「ぺるそね」調べ。2012年6月 n=31,444
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