牛が迎えてくれた南島で息子を送り出す
ニュージーランド出発前日の土曜日。少しでも高校受験の準備をせねばと、近隣の高校進学相談会ブースを、息子と二人で回りました。都立御三家の一角を占めるトップ高校から、聞いたことがある私立まで、いずれも息子の今の成績では手が届かない学校ばかり。
人酔いして頭痛を訴える息子と会場を後にし、近くの商店街でラーメンを食べて帰りました。受験を意識し始めた息子は、まだ学力や内申点が伸びる気配はありませんが、上昇志向ではあることが分かり、親としてちょっと嬉しい収穫でした。
午後に帰宅すると、さっそく3週間の旅に向け、気合を入れてパッキング。
8月のニュージーランドは冬なので、防寒着がかさばり大荷物です。
洗濯は寮でしてもらう息子は、温かい肌着や手袋など、すべてに太いマジックペンでザザザっと名前を書いていました。
久しぶりの成田空港、寿司のち1時間の遅延
出発当日の日曜日は、万一現金が必要なときに備えてATMへ。
帰宅して自宅で息子と軽食を済ませると、夜のフライトに向けて成田空港に向かい、回転ずしで景気づけ。
その後チェックインしようとカウンターに向かうと、搭乗ウィング違いで走る羽目になり、冷や汗をかきました。
なお、ふだんJALユーザーのわたしはこの夏のためにマイルをがんばって貯めていたのですが、行く先をニュージーランドにした以上、便利な航空会社は自分史上初のニュージーランド航空。
よって獲得マイレージがゼロからのエアチケット購入となったことに加え、息子が南島のWaitaki(ワイタキ)という町で学ぶ間、わたしは北島のAuckland(オークランド)に戻ることにしたので国内便がプラスとなり、航空代もかさばります。
夏休みが始まったばかりのこの日、成田からオークランドに飛ぶ便は複数の学生団体客で賑わっていました。
夜8時の予定だった成田空港の離陸は、雷を伴う悪天候のため地上職員の稼働が許可されず、1時間の遅延。
わたしも学生時代、離陸が一日単位で遅れた記憶を思い起こしながら、ともかくも飛んで良かった、と胸をなで下ろしました。
機内の食事は唐揚げとカレー、ハンバーグとボロネーゼなど、エコノミーでも十分美味。映画はマオリの歴史や文化を反映したものを選んで観て、身体にニュージーランドを叩き込みます。「Mārama」は視覚的にぎょっとするインパクトの連続、この映画を通じて女性が顔に入れ墨を入れるマオリの風習を初めて知りました。

オークランド空港でも走る
オークランド国際空港に到着するとすぐに、わたしのiPhone X用の物理SIMと、息子のiPhone XVII用のeSIMを購入。ここで息子名義のデビットカードが使えるのを確認し、通信も支払いも問題ない状況になりひと安心。
後日談ですが、息子のeSIMは帰国後にプロフィールの設定が消えていて主回線に戻すのに苦労していました。ニュージーランド国内ではトラブルなしでしたが。
昨年はわたしがロンドンでeSIMトラブルを経験したので、より知見を貯めて旅行時の通信で苦労しないようにしたいものです。
このオークランド国際空港で、現金も1万円分、NZドルに換金しました。
日本で事前調査時、AIも、書店で買ったニュージーランド旅行ガイドも、現金を持っていくよう勧めていたので、現地で後悔しないよう念のため、です。
わたしは10ドル札一枚を手元に残し、90ドルちょっとを息子に渡しました。
しかしこの現金も、後になってみると必要な場面はその実、皆無。
ニュージーランドも、わたしが見る範囲では完全キャッシュレス社会でした。
オークランド空港から国内線でDunedin(ダニーデン)への乗り継ぎ搭乗口は、国際線の出口から徒歩のみで15〜30分は見ておいたほうがよい距離。
そうとは知らずに、いったんスーツケースを開いてコートを取り出して着て、などとモタモタして時間がなくなり、なんとか飛行機に乗り遅れまいと、精一杯ダッシュしました。
そうこうしてようやくチェックインしたのですが、時間切れにより意図せずスーツケースを預け忘れ、二人とも大荷物を機内に持ち込むことに。
60リットル、10キロ越えの荷物を頭上の棚に入れるのに一苦労しましたが、息子が力仕事をできる年齢になっていて良かった、と成長に感謝しました。
ダニーデンでの別れ
ダニーデン空港に着いたら、Waitaki Boys' High School(ワイタキ・ボーイズ・スクール)の寮、Don House(ドン・ハウス)を統括するボーディングディレクター、ライアンさんが迎えに来てくださっていました。
無事に合流できて、肩の力がまた少し抜けました。

赤とオレンジが基調の小さな可愛らしい空港の外に出ると、東京では見ることがない平地。目の前の駐車場に進むと、その先、一面の大地に牛が放牧されています。
いきなりの大自然に思わず息子と「うわー」と感動の声を上げました。
ライアンさんは、息子を学校に連れて行く途中に、わたしを一泊するダニーデンのホテルまで送るよ、と申し出てくださいました。
これまで、いろいろな国で空港からホテルにたどり着けない恐怖を経験しているのでほっとして、ひたすら感謝。
最悪のシナリオをいろいろ考えていたので、あまりの幸運に、何度も唸りました。

ダニーデン空港から市内までは小一時間、渋滞がないので40分ほどです。
小高い丘の上にある、わたしが一泊するホテルScenic Hotel Dunedin Cityの前に着き、車を降りようとしたその時、息子が「もう...なんだ」とポツリひと言。
お別れの瞬間、息子の不安が涙に変わりゆがむ顔を見て、思わず彼の頭にわたしの額を近づけ「怖いよね、がんばるね」と言ってなぐさめました。
ライアンさんは「大丈夫、面倒みるからね」と静かに声かけをしてくれました。
2時間離れたワイタキからのLINE
ホテルにチェックインして、部屋の様子を息子にLINEで送信。
息子の学校があるWaitaki(ワイタキ)は、ダニーデンからさらに車で2時間近くですが、すでに寮のドン・ハウスにチェックインしたらしく、「いいねぇ」とふだん通りの返事が返ってきて、気持ちが落ち着きました。

明日以降の国内移動の手配をし、たまった仕事のメール対応をしているとすでに19時近く、夜のとばり。
外は息が白くなる寒さで、できれば軽く散歩しようと思っていたのですが、すぐにあきらめました。
ホテルのすぐ近くのテイクアウト専用の中華GREAT WALL TAKEAWAYSで炒飯を買って17.85ドル、1NZD=95.24 円換算で1,701円。二人前はある量。
ローカルの中国系移民が営むお店、顧客とにこやかに会話しながら注文をさばく、エネルギーを感じさせる男性店長が印象的でした。
その後近くのリカーショップで、ニュージーランド製 The Source Zinのミニチュアボトルを12ドル、1NZD=95.24 円換算で1,143円にて購入しました。
移民らしいアクセントのインド系の男性が控えめに勧めてくれた、きれいな味のお酒。
ちなみに、ニュージーランドではハードリカーの価格が日本の倍ぐらいだったので、この小瓶との出会いは貴重でした。
アツアツのままホテルに持ち帰り、テレビをつけて情報ともホワイトノイズともつかぬ人の声を聴きながらいただくと、できたての温かさが美味しさを強調します。
Supershuttleの便利さを堪能
翌朝、昨夜の炒飯の残りでおなかを満たしてから予約していたSupershuttleに乗車。
初めての利用だったのでドキドキでしたが、到着前の遅延連絡も、アプリでのリアルタイム位置情報もマメで安心。
力強そうな女性のドライバーさんがやさしく運転してくれました。
道中は車窓に見える羊たちが、丘の上で草を食べている姿に癒されました。

朝のダニーデン空港は牧草に囲まれた平地の澄んだ空気が心地よい。
飛行機の到着までカフェで充電しながら、隣の老夫婦の話が聞くともなく耳に入ってきます。
聞き覚えがあるようなスムーズな発音に、ニュージーランド英語はそう癖がないな、と思ったら、会話からイギリス人ご夫婦と分かりました。
英語も多種多様。言語の面白さに心をつかまれます。

クライストチャーチの美景を眼下に飛ぶ
ダニーデンからオークランドに戻る便は、クライストチャーチ経由です。
途中で休むゆっくりした国内旅行。
飛行機に乗り、空港を眺めるだけで旅の高揚感に満たされます。
機体は100人足らずの乗客を乗せる小さなもので、窓の外に海や雪山が続く美しい景観。
飛行機に乗りながら美しい景色を堪能できるなんて、初めての経験。
地元の人にとっては日常の移動時間なので、静かで落ち着いた、おっとりした時間です。
飛行機が上昇する時、身体がふわっと浮いて、空気でマッサージされているような夢見心地を覚え、一瞬で深い眠りに誘われました。
到着したらいよいよ、オークランド生活の始まりです。
