凍てつく極寒のアイオワで途方にくれる
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高校を卒業した3日後に、成田を発ちました。向かうはアイオワ州の超ド田舎にある小・中・高一環の全寮制学校です。当時はインターネットも電子メールなく、学校との事前の情報もコミュニケーションもほぼナシの状態。入学手続きだけを郵送ですませ、出たとこ勝負のぶっつけ本番で挑みました。
「どんな場所で、どんな教師や生徒がいるんだろう、不良とかいっぱいいたらどうしよう」
と、期待よりも不安が大きかったのを覚えています。
シカゴを経由して、17時間くらいかけて目的地のシーダーラピッヅという町の小さな空港に到着したのですが、着いたのが夜遅くだったので人気がまったくありません。同乗していた他の客は、あっと言う間にいなくなってしまいました。ボストンバッグを2つ抱えて、一瞬途方に暮れました。
「なにはともあれ、学校に電話して、迎えにきてもらわねば」
公衆電話を探し、コインを入れてボタンを押します。しかし、電話はうんともすんともいいません。何度繰り返しても鳴りません。やがて、録音音声で「We are sorry, ベラベラベラ~」まくし立てられました。悲しいことに、音声が早口すぎてまったく聞き取れません。ここでいきなりヘコまされます。ソーリーと言われているので、誤操作をしているのだろうということはなんとなくわかりますが原因が分かりません。脂汗を垂らしながら、小一時間ほど公衆電話と格闘を続けました。
「このままでは、空港ロビーで夜を明かすことになる・・」
と覚悟を決めかけた頃、ようやく電話が鳴って安堵のため息をつきます。電話をかけるだけでこんな苦労をするとは、先が思いやられました。
電話に出たのは、ものすごく不機嫌そうな声の中年男性。つたない英語で自己紹介をし、空港に着いたので迎えに来てほしいと伝えると、ぶっきらぼうに「わかった」と言って電話を切られてしまいました。
薄暗いロビーで待つこと50分、背後から、「Are you Junji?」と不機嫌な声で呼びかけられました。振り向くと、そこには背が低くてやや小太りの、ものすごいしかめっ面をした40代後半とおぼしき中年男性が立っていました。
「面倒だったけど、来てやったぞ」と言わんばかりの雰囲気で、しょっぱなから面食らいました。アメリカ人だからと言って、全員が陽気で明るいわけではないんです(笑)。
「異国からはるばる長旅を経てやってきたんだから、お疲れさんくらい言ったらいいのに・・」
正直なところ、私からの第一印象はすごく悪かったです。
さて、手短に互いを紹介しあい、2人で空港を一歩出ると、漆黒の空と凍てつく雪で覆われた大地が現れました。360度一面、雪しかありません。「こりゃ、とんでもないど田舎だ・・」と、来たことをいきなり後悔しました。
そして、相変わらず不機嫌そうな中年男性の運転するポンコツセダンで、お互い無言のままこれから住むことになる高校に向かいます。先の見えない真っ暗闇を走っていると、
「来る場所を間違えたんじゃないだろうか・・ここでやっていけるんだろうか・・」
と感じずにはいられませんでした。このときばかりは、金髪の女の子の妄想は完全に吹っ飛び、不安で心臓の鼓動が鳴り止みませんでした。
つづく
代表 中山順司
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