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私の質問術

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今週は、「質問」を話題に採り上げてきたわけですが、かく言う私がどうしているかについて、紹介させていただきます。

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私は、講演に参加する時は、「質問するために参加する」を心がけています。昨日のブログでも書きましたが、「質問を考えながら相手の話を聞く」ようにしています。何を話しているかを書き留めることはあまりしません。そのようなことを書き留めても記憶には残らないからです。知っていること、同意できることは、既にこちらにもあるからです。むしろ、話しを聞きながら、疑問に思ったことや自分の理解と違っていることを書き出しています。それこそが、自分にはないところです。

そんな疑問に対して、講演者が、話しの中で答えてくれることがほとんどです。それでも、その時々の疑問を書き出しながら話しを聞いていると、自分の知らなかったことに気がつきます。相手が何を伝えたいのかの意図や本質がよく見えてきます。何よりも明確に記憶に定着します。

疑問を持つとは、自分のいま持っている知識の構造に当てはめて、その欠落を見つけ出す行為です。質問をしなくても、そういう欠落を見つけ出し、講演者の話でこれが埋まるときに、なるほど!と嬉しくなります。言わば、少し賢くなるわけです。これがとても心地いいのです。

それでも、大概はひとつやふたつの疑問が残りますので、それを質問するように心がけています。疑問が沢山あって、限られた時間の中で、他の方に譲らなければとは思うのですが、いつも質問したい衝動に駆られて、これを抑えることに苦労しています。

最近は、リアルな会場での講演に参加する機会が、めっきり少なくなりましたが、以前は、時間を見つけては、参加するようにしていました。その時は、「最前列に座る」を心がけています。最前列に座れば、当然目立ちますから、居眠りなんかしていられません。そういう状況に自分を晒し、外部環境を利用して自分の態度を律するわけです。当然、そういう状況ですから、真剣さは高まり、「質問を考えながら相手の話を聞く」ことに集中できるわけです。

このやり方には、副産物もあります。それは、同じようなことを考えている人が、前に座る傾向が高いので、そういう人とのつながりが生まれやすいことです。周波数が近いからでしょうか、講演の前後や休憩の合間などに、会話が生まれ、ご名刺を交換して、お付き合いが始まることもしばしばです。人脈を拡げるにもいい機会になります。

ただ、最前列に座って困ることもあります。それは、講演がつまらないときに抜け出しにくいことです。「つまらない」とは、例えば、次のような場合です。

  • 自分(あるいは、自社)の経歴や実績、それが以下に凄いことかを蕩々と話して、なかなか本題に到達しない。
  • 当たり前に誰もが知っていることを、あたかも自分が見出したかのように、あるいは、上から目線で、「あなたは知らないでしょうから、教えてあげます」的な態度を取られるとき。
  • 「凄い事例」を並べ立て、その背後にある背景や本質を語らず、「だから貴方たちは遅れています、このままでは大変なことになります、悔い改めてください」と脅す話しが並ぶ。
  • 聴取には目もやらず、原稿を見上げるように、自分の言葉ではない他人言葉で、語り続ける人。こういう話しでも中身があれば、いいのだが、ほとんどの場合、表面的な考察の浅い話しになる。
  • 自社の製品やサービスの話しで、その思想やいかなる課題の解消を目指しているのか、それを使ったことにより業務がどう変わったのか、どのような顧客価値が生まれたかを語らずに、その機能や性能の話しに留まり、それを自慢する。

他にもありそうですが、これらに共通するのは、つぎのようなことでしょう。

  • 自分の解釈や意見がない
  • 表面的な事実に留まり、本質的なことを伝えない
  • 自分が伝えることに精一杯で、相手に伝わることにまで気が回らない

聞いている人たちに「かならず、お土産を持ち帰ってもらおう」という態度がないのでしょう。こういうつまらない話しの場合、最前列に座っていると抜け出しにくくて困ることがあります。そういうことが、多少なりとも予見されるときは、後ろに座るようにします。

受講者にすれば、何かを得たいから、話しを聞きに行くのに、何も得られないでは、サービス精神が足りません。このようなことにならないように、自分も心がけなくては、思う次第です。

話が横道にそれましたが、私にとっては、「質問は学びの最強ツール」のひとつであることは、間違えありません。「質問」をこのように捉えてみては、いかがでしょうか。

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2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1

目次

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  • 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
  • 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
  • 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
  • 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
  • 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
  • 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
  • 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
  • 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
  • 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー

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