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【図解】コレ1枚でわかる「デジタル・トランスフォーメーション」を支える5つのテクノロジー・トレンド

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「デジタル・トランスフォーメーション」が、どんな未来をもたらそうとしているのかについて、昨日のブログで整理してみました。では、そんな時代にITビジネスはどうなるのかを考えてみました。

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この流れは、「クラウド・ネイティブ」と「アンビエントIT」によって牽引されます。

「クラウド・ネイティブ」とは、ITに関わる多くの資源がクラウド・サービスとして提供されることです。また、所有することを前提としたこれまでの使い方とは大きく異なる新たなシステムとの付き合い方が求められることでもあります。つまり、これまでの所有するITの延長線上で考えることではなく、クラウドならではの思想やテクノロジーを前提にビジネスを考えてゆかなければなりません。

一方の「アンビエントIT」とは、「環境や周辺に溶け込むIT」の意味です。例えば、5年後の2020年にインターネットにつながるデバイスの数は、500億個になるといわれており、そのときの世界人口を75億人とすると一人平均7個のデバイスがインターネットにつながっていることになります。これが10年後の2025年80億人の時代には2兆個になるといわれ、一人平均250個のデバイスを持つ計算になります。これは必ずしも突拍子もない数とは言えません。たとえば、靴や鞄、鍵やメガネ、家具や建物など、自宅や職場を併せて考えれば、その程度のモノに私たちは既に関わっています。それらの多くが全てインターネットにつながれば、現実世界のデジタルコピーが、緻密かつリアルタイムにデジタル世界に写し取られることになるのです。こういう現実世界とデジタル世界の一体化を前提とする社会や生活の基盤が実現しようとしているのです。

この2つの牽引力は、5つのテクノロジー・トレンドによって支えられます。

サーバーレス

クラウド・ネイティブの真価は、物理的な実態、つまりオンプレミスのサーバーやストレージのアナロジーであるIaaSサービスにおきかえることでは引き出せません。クラウドにしかできないコトを最大限活かすことで、はじめてその真価が発揮されます。例えば、コンテナやPaaS、APIを活用すれば、開発や運用管理の生産性を劇的に変え、最新のテクノロジーをいち早くビジネスに取り込むことができます。

このような使い方では物理的なサーバーやネットワーク機器を意識する必要はなくなり、その機能や性能をサービスとして直接使うことができるようになります。仮想化は物理的な実態のアナロジーに過ぎませんが、そんなことを考える必要がなくなるのです。

システムの構成や運用を意識せず、アプリケーションを実現するための機能モジュールをつないでゆくことで、システムを開発することができれば、開発のスピードや変更への柔軟、時速な対応が可能となります。

ビジネス環境がめまぐるしく変化する一方で、ビジネスとITの一体が求められる時代に、この要件を満たすことはお客様のビジネス価値向上に大きく貢献します。

Internet of Things(IoT)

モノが直接インターネットにつながることで、現実世界はこれまでに無く緻密に、そしてリアルタイムにデジタルで捉えられるようになります。この仕組みが、既存のビジネス・モデルやビジネス・プロセスの常識を大きく変えることになります。

IoTをビジネスとして考えようとするとき、このビジネス・モデルやビジネス・プロセスの変革にどのように貢献するかという視点が大切です。IoTをテクノロジーとして捉えるのではなく、テクノロジーを活かしたビジネスのフレームワークと捉えるべきでしょう。つまり、これまでは人間の経験や勘に依存し動かしていたビジネス・プロセスをセンサーで取得したデータと機械学習で導き出した未来予測で動かす仕組みに置き換えようという取り組みです。これにより、ビジネスの効率は飛躍的に高まります。

また、データは物理的、地理的な制約を受けず、様々なデジタル・サービスと自由につながり、柔軟に融合することができます。かつてシュンペーターが、「イノベーションとは新しい組合せである」と言いましたが、その新しい組合せを簡単に試してみることができるようになります。まさにイノベーションの孵卵器であり加速器が、IoTの生みだすデジタル世界と言えるでしょう。

サイバー・セキュリティ&ガバナンス

クラウド・ネイティブもアンビエントITも、ともにセキュリティやガバナンスの常識を大きく変えなくてはなりません。これまでのように自社システムを自社の管理の行き届く場所に物理的に設置し、それを取り囲むように壁を張り巡らせ、自社と外部の境界を守るセキュリティは成り立ちません。

クラウドもIoTも自社の直接的な支配下にはなく、内と外との目に見える境界は喪失します。そうなると大切になってくるのは、デバイスやシステムと利用者とのお互いの信頼を確立することです。そのためには「誰が使っているのか」のアイデンティティと、「いつ、どのように使ったか」のログを管理できる基盤が鍵を握ることになるでしょう。

守るのは物理的なシステムそのものではなく、データやプロセスを守るという発想への転換が大切になります。また、管理する対象が膨大な数となり、ログの中から攻撃、痕跡、リスクを見つけ出すための作業は膨大なものとなります。もはや人手に頼ることを不可能であり、自動化や自律化、エージェント化といった新たな仕組みが必要になるでしょう。また、セキュリティを技術問題としてではなく、ビジネス・プロセスやアプリケーションをセキュアに作ることまで含め、アーキテクチャー全体を考えたセキュリティが重要になります。

DevOps

ビジネスは、常に市場の変化に敏感に反応し、そのプロセスや機能を変えてゆくことで生き延び、成長します。そのスピードと柔軟性が大きな価値を生みだすのです。

「アンビエントIT」の拡大は、ビジネスとITをますます不可分なものにします。つまり、ビジネス・スピードに同期化し、柔軟に機能や性能を変えることができるITでなければなりません。

システムを新たに作る、あるいは仕様を変えることは、ビジネスを成功させるために必要なことです。そこに求められるスピードが加速しつつあるなかで、従来同様に仕様を固め、工数を手配し、見積もりをとって対応しているようでは使いものになりません。ビジネスの要求に即応し、システムを開発し直ちに本番に供すること。それを頻繁に繰り返しながらビジネスの現場のスピードに同期化できなくてはならないのです。

そのためには、先に説明した「サーバーレス」な環境を活かすことを前提に、開発と運用管理の関係を抜本的に変えなくてはなりません。

自動化・自律化

IoTと人工知能の普及は、人手の負担を劇的に減らしてしまうだけではありません。人間が介在するが故にできない膨大なデータのリアルタイム処理、意志決定に伴う時間的遅延の解消、人的エラーの排除が実現されます。

そのためには標準化されたルールを確実にこなす自動化、状況を適宜把握し、時々の最適解を見つけ、人手に頼らず判断し実行する自律化が必要となります。これにより、人間の介在を前提としないビジネス・モデルやビジネス・プロセスを考えることが可能になるのです。

つまり、自動化や自律化は、単なる省力化の問題としてではなく、ビジネスのあり方の変革として捉えるべきなのです。そういう視点を持つことができたときに、自動化や自律化は、「デジタル・トランスフォーメーション」を実現する重要な要件となるのです。

以上に掲げた「デジタル・トランスフォーメーション」を支える5つのテクノロジー・トレンドに向き合うことが、ビジネスの創出と発展につながります。しかし、そのことは同時に「デジタル・ディスラプション(デジタルによる破壊)」を伴うことも覚悟しなくてはなりません。

これまで自分たちのビジネスを支えてきた経営基盤は破壊されるかもしれません。そのことを覚悟しなければならないのです。ただ、いずれ破壊されるのであれば、そこに関わらないことの方がむしろリスクです。それを自ら破壊することでイニシアティブを確保するという攻めの姿勢こそが、生き残りを支えてゆくことになるのです。

いくつかのビッグ・プロジェクトが終了し、工数需要が減りつつあります。それを単なる需要の変動としてしか捉えられないとすれば、生き残ることはできません。「ビジネス・トランスフォーメーション」と「デジタル・ディスラプション」へと向かう潮目の変化なのだと受けとめ、自らの役割の再定義や経営資源を再配分する好機とすることです。その道は、平坦ではありませんが、もはや選択の余地はないのです。

【受付開始】ITソリューション塾・東京/大阪/福岡

「IoTやAIで何かできないのか?」
「アジャイル開発やDevOpsでどんなビジネスができるのか?」
「うちの新規事業は、なぜなかなか成果を上げられないのか?」

あなたは、この問いかけに応えられるでしょうか。

「生産性向上やコスト削減」から、「差別化の武器としてビジネスの成果に貢献」することへとITは役割の重心を移しつつあります。そうなれば、相手にするお客様は変わり、お客様との関係が変わり、提案の方法も変わります。そんな時代の変化に向き合うためのお手伝いをしたいと思っています。

東京での開催は5月16日(火)からに決まりました。また、大阪では5月22日(月)からとなります。さらに福岡は7月11日(火)からを予定しています。

詳細日程や正式なお申し込みにつきましては、こちらをご覧下さい。

ITソリューション塾では、IoTやAI、クラウドといったテクノロジーの最前線を整理してお伝えすることはもちろんのこと、ビジネスの実践につなげるための方法についても、これまでにも増して充実させてゆきます。
また、アジャイル開発やDevOps、それを支えるテクノロジーは、もはや避けて通れない現実です。その基本をしっかりとお伝えするよていです。また、IoTやモバイルの時代となり、サイバー・セキュリティはこれまでのやり方では対応できません。改めてセキュリティの原理原則に立ち返り、どのような考え方や取り組みが必要なのか、やはりこの分野の第一人者にご講義頂く予定です。

2009年から今年で8年目となる「ITソリューション塾」ですが、

「自社製品のことは説明できても世の中の常識は分からない」

当時、SI事業者やITベンダーの人材育成や事業開発のコンサルティングに関わる中、このような人たちが少なくないことに憂いを感じていました。また、自分たちの製品やサービスの機能や性能を説明できても、お客様の経営や事業のどのような課題を解決してくれるのかを説明できないのままに、成果をあげられない営業の方たちも数多くみてきました。

このようなことでは、SI事業者やITベンダーはいつまで経っても「業者」に留まり、お客様のよき相談相手にはなれません。この状況を少しでも変えてゆきたいと始めたのがきっかけで、既に1500名を超える皆さんが卒業されています。

ITのキーワードを辞書のように知っているだけでは使いもものにはなりません。お客様のビジネスや自社の戦略に結びつけてゆくためには、テクノロジーのトレンドを大きな物語や地図として捉えることです。そういう物語や地図の中に、自分たちのビジネスを位置付けてみることで、自分たちの価値や弱点が見えてきます。そして、お客様に説得力ある言葉を語れるようになるのだと思います。

ITソリューション塾は、その地図や物語をお伝えすることが目的です。

ご参加をご検討頂ければと願っております。

ITソリューション塾

最新版(4月度)をリリースしました!

ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA

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新入社員のための「最新トレンドの教科書」も掲載しています。
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*クラウドについてのプレゼンテーションをインフラ編から独立させました。
*使いやすさを考慮してページ構成を変更しました。
*2017年度新入社員研修のための最新ITトレンドを更新しました。
*新しい講演資料を追加しました。
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クラウド・コンピューティング (111ページ)
*「インフラとプラットフォーム編」より分離独立
【新規】クラウドによるコスト改善例 p101-108

開発と運用(68ページ)
【新規】管理運用の範囲 p.37
【新規】サーバーレスの仕組み p.40

インフラとプラットフォーム(211ページ)
*クラウドに関する記述を分離独立
【新規】多様化するデータベース p.127
【新規】クラウドデータベース p.156-158

IoT(101ページ)
【新規】IoTはテクノロジーではなくビジネス・フレームワーク p.16
【新規】LPWA主要3方式の比較 p.52

人工知能(103ページ)
【新規】自動化と自律化が目指す方向 p.14
【新規】操作の無意識化と利用者の拡大 p.21
【新規】自動化・自律化によってもたらされる進歩・進化 p.22

テクノロジー・トピックス (51ページ)
【新規】RPA(Robotics Process Automation) p.17

サービス&アプリケーション・基本編 (50ページ)
*変更はありません

ビジネス戦略(110ページ)
*変更はありません

ITの歴史と最新のトレンド(14ページ)
*変更はありません

【新入社員研修】最新のITトレンド
*2017年度版に改訂しました

【講演資料】アウトプットし続ける技術〜毎日書くためのマインドセットとスキルセット
女性のための勉強会での講演資料
実施日: 2017年3月14日
実施時間: 60分
対象者:ITに関わる仕事をしている人たち

【講演資料】ITを知らない人にITを伝える技術
拙著「未来を味方にする技術」出版記念イベント
実施日: 2017年3月27日
実施時間: 30分
対象者:ITに関わる仕事をしている人たち

詳しくはこちらから

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新刊書籍のご紹介

未来を味方にする技術

これからのビジネスを創るITの基礎の基礎

  • ITの専門家ではない経営者や事業部門の皆さんに、ITの役割や価値、ITとの付き合い方を伝えたい!
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人工知能、IoT、FinTech(フィンテック)、シェアリングエコノミ― 、bot(ボット)、農業IT、マーケティングオートメーション・・・ そんな先端事例から"あたらしい常識" の作り方が見えてくる。2017年1月6日発売
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四六判/264ページ
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