お客様が変わらなければSIビジネスは変わらない/お客様を変える2つの方法
「システムインテグレーション崩壊」という言葉がますます現実に近づきつつあると感じている。それは、みずほ銀行や郵貯システムなどの大規模プロジェクトが終了しつつある中で、稼働率を優先するあまり有効な手立てを講じないままの企業が少なくないからだ。
稼働率を上げなければ利益が確保できない、だからそうせざるを得ないという現実があるのはわかる。しかし、余力ができてからその人材をどのように活用するかを考えていたのでは、結局は貯め込んだ利益もはき出してしまうことになるのだから、先に手を打っておいてはどうなのかとも考えてしまう。しかし、これはいつも繰り返される堂々巡りであり、なんら本質的な解決には至らない。
結局は、お客様が変わらなければ、ビジネスは変わらないのだろうと思う。ビジネスは、お客様の需要に応えることで成り立っている。だから、お客様が工数を求めて来るのであれば、それに応えるのは当然のことだ。自分たちが変わるにも売る相手が変わらなければ、売れる見込みがないわけで、ビジネスを変える意味がない。当然、そのためのモチベーションも生まれず、知恵も生まれない。
自分たちのビジネスを変えたければ、「お客様を変える」ことだ。自らの変革に関心がなく、30年前に作った「基幹システム」という遺跡を守ることを唯一の役割としか考えていない情報システム部門をお客様にしている限り、自分たちも変われないことを覚悟すべきだろう。
「お客様を変える」には2つのやり方がある。ひとつは、「お客様の"対象を"変える」ことだ。つまり、「投資対効果」を採用基準と考える事業部門にアプローチすることだ。彼らは、「これだけの工数をかけたので、いくら下さい」は通用しない。あくまで、成果に対する対価である。初期投資リスクも極力犯したくないだろう。そんな組織にこれまでのやり方はとても通用しない。どうすれば工数を少なくし、提供する価値を高めるかを追求しなければならないだろう。また、初期投資リスクを抑えるためには、サービスという提供形態も考えなくてはならない。そもそも、どうやって事業部門にアプローチすればいいのかから考えなくてはならないだろう。まさに課題は山積みだ。
優秀な人材を投入しなければならないし、初期投資にも腹をくくらなければならないだろう。だから知恵も生まれ、自らのビジネスを変えていくモチベーションも確かなものになる。カタチから自らのビジネスを変えてゆくアプローチとも言える。
もうひとつは、「お客様"自身を"変える」ことだ。これまでのお客様である情報システム部門の変革を支援するアプローチだ。彼らもまた、自らの存在意義を問われている。ITがビジネスの現場に広く浸透し、「攻めのIT」を求められる中、その人材もスキルもままならず、業務や経営から対応を求められても対応することができない。この現実にどう対応するかは、彼らの最大の課題だろう。また、古き時代の遺跡を守ることに腐心してきた彼らが、クラウドやIoT、モバイルなどのテクノロジーをどのように自社に活かすかの答えを見出せないでいる。そんな、彼らを社内におけるデジタルビジネスの先導者として役割を果たせるように支援することで、新たなビジネス・チャンスを見出してゆくというアプローチだ。
いずれにしても、情報システムを作ることではなく、情報システムでビジネスに貢献するという視点を持たなくてはならない。あなたの言われたとおり作りますではなく、新しいビジネスモデルを提案し、ITの業務や経営の活かし方を提案する。それをお客様と共に、磨き上げてゆく。そんな意識の転換がいま求められている。
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今月の目玉は、「オンプレからパブリッククラウドへの移行」について、ドキュメントを追加しています。移行をご検討のユーザー企業・情報システム部門の方は企画書や経営会議の資料として、SIerの方はお客様の提案資料としてご利用頂けると思います。
なお、今月より「テクノロジー編」を「インフラ&プラットフォーム編」と「サービス&アプリケーション編」の2つに分割致しました。(全438ページとなり資料探しに手間がかかるようになったため)
【インフラ&プラットフォーム編】(246ページ)
- ハイブリッド・クラウドについて、各社の取り組みを比較しやすいように資料を作り直しました。P44
- PaaSについての解説をわかりやすく修正しました。p.55-56
- 「パブリッククラウドへの移行の勘所」と「パブリッククラウド移行の企画書・提案書の作り方」の章を新しく追加しました。SIerにとっては顧客提案資料として、また、ユーザー企業の方は経営会議や企画会議の資料としてご利用頂けると思います。p.77-94
【アプリケーション&サービス編】(192ページ)
- 誤字・脱字等を修正しました。内容に大きな変更はありません。
【ビジネス戦略編】(74ページ)
- 「SI事業者の成功要因の変化」を追加致しました。
- 「PEST分析と5フォース分析で見るクラウド化」を追加しました。
- 「事業再構築の逆Cカーブ」と「SIビジネスへの適用」を追加しました。
- 「基幹業務のAWS適用事例」を追加しました。
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「情報と処理の基礎は教えているが、クラウドやIoT、
ビッグデータは教えていません。」
そんなことで新人達が現場で戸惑いませんか?
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「【図解】コレ1枚で分かる最新ITトレンド」に掲載されている100枚を越える図表は、ロイヤリティ・フリーのパワーポイントでダウンロードできます。自分の勉強のため、提案書や勉強会の素材として、ご使用下さい。
目次
- 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
- 第1章 クラウドコンピューティング
- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン