いまシステム事業者は、「装置産業」から「サービス産業」への転換を求められている
無機質な装置群、明滅するランプに地響きのような轟音は異様な雰囲気を醸し出している。同時に近未来的な美しさをも感じさせてくれる。
この文章を読まれて、データセンターをイメージされた方も多いのではないでしょうか。実は、東京湾岸に立ち並ぶ工場群を巡るナイトクルーズの紹介記事の一節です。
サーバーやストレージ、そこで稼働するアプリケーションなどの情報システムもこの工場と同様の「無機質な装置群」です。これを作るための装置の調達や設置、プログラム開発や運用管理で、情報システムは収益を上げてきました。しかし、ユーザーは、これら装置群が必要なわけではなく、そこから生みだされるサービスを必要としていることは言うまでもありません。しかし、装置群を持たなければ、サービスを受けられないという現実を受け入れなければなりませんでした。
クラウドの普及は、この現実が、もはや唯一の選択肢ではないことをユーザーに気付かせてしまいました。そして、装置群を持つことなくサービスを享受できる方法を模索しはじめています。しかし、未だ多くのシステム事業者が自らを「装置産業」と自認し、このニーズに対応することに躊躇しているようにも見えます。
いまシステム事業者は、「装置産業」から「サービス産業」への転換を求められているのです。当然、売るべきモノも変わり、売り方も変わります。また、収益の構造も変わることを受け入れなければなりません。
いま、サービス産業にお客様が求めているモノは、自社に個別最適化され、短期間で利用でき、コストも安くサービスの利用量に応じた料金です。また、そのサービスの特性を自分たちのビジネスに活かして行くための専門的アドバイスやビジネス・プロセスの設計といった業務や経営に近いサポートといえるでしょう。このような需要は、これから益々増えて行くはずです。しかし、未だ「装置産業」の未練を捨てきれないシステム事業者も少なくはありません。
「そんなことは分かっている」と憤る方も少なくはないはずです。では、なぜそれができないのでしょうか。それは、いまそれで稼げているという事実があるからなのでしょう。事実は、全てに勝ります。未来のことなど所詮はどうなるか分からないバクチのようなものです。そんなバクチに手を出さずにいまを地道に過ごすことこそ経営者としてあるべき姿と思われているのかもしれません。そして、これまでも様々な変化の中で生き残ってきた自負もあるでしょう。そういうことが、いま起きている変化への対応を押しとどめているのかもしれません。
もちろん、これまでも変化のなかった時代などありませんでした。しかし、いま起きている変化とは大きく異なっています。これまでの変化は、構築や開発、運用管理はそのままにその対処となるシステムがメインフレームやミニコン、オフコン、そしてクライアント・サーバーなどに変わってきたわけで、すばらしい装置群を提供する「装置産業」の本質をそのまま引き継いできました。しかし、開発や構築、運用管理の需要がなくなることはないにしても、自動化されたサービスに多くが置き換えられようとしています。「装置産業」から「サービス産業」への事業構造の転換がおこりつつあるのです。
この変化の本質を見誤るべきではありません。これまで、なんとかうまくいったやり方が、そのままでは通用しない時代をむかえつつあるのです。
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最新版【2015年10月】をリリースいたしました。今回の目玉は、最新ITトレンドを俯瞰するチャートの追加、IoT関連のチャートの追加、ビジネス戦略の内容刷新とSIビジネスを分析したチャートの追加です。
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【ビジネス編】(67ページ)
- 新たに「SIビジネスの現場や課題」の章を立て、8枚のチャートを追加しました。
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- 新たに「SIビジネスのが直面する現実」の章を立て、既存のチャートと4枚の新しいチャートを加えました。
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目次
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- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン