【図解】コレ1枚で分かるIoTで変わるモノの本質
「IoT(Internet of Things)で、うちもなにかできないのか?」
社長から突然、IT部門や技術部門にこんな言葉が投げ込まれ、さあどうしたものかと頭を抱えこんでいる、そんな会社は、少なくはないようです。
「モノにセンサーが組み込まれ、ネットワークに繋がるのは分かる。でも、それで何が変わるのか、どんなビジネスができるかと言われても・・・」
本音はそんなところにありそうです。
IoTで変わるモノの価値の本質
IoTがもたらす変化の本質は、モノの「価値の所在」が大きく変わることです。例えば、かつてモノの価値は、ハードウェアの機能や性能によって規定されました。自動車の性能、ラジオの感度、工作機械の操作性といった特徴は、ハードウェアをどう作るかに委ねられていたのです。
その後、モノには、ソフトウェアが組み込みまれ、性能や機能を規定する重要な要素になってゆきました。例えば、最近のデジタルカメラの露出、ピント、絞り、シャッター・スピード、カラー調整は、そこに組み込まれたソフトウェアによって実現しています。かつては、ハードウェアのメカニズムやフイルムなどのハードウェアによって実現するモノだったのです。もちろんハードウェアも重要な要件ではありますが、それはモノの構成要素の一部であり、付加価値のひとつとして考えられるようになったのです。そして、ソフトウェアの機能や性能が、モノの価値を規定する比重が大きくなってゆきました。
ただ、ここまでは、ひとつのモノに閉じた世界での話です。IoTは、これをネットワークにつなげることで、価値の本質をサービスへとシフトさせようとしているのです。
例えば、昨今のテレビは、そこに組み込まれているソフトウェアを、放送電波を介して更新して機能や操作性を改善することができます。また、デジタルカメラもインターネットにつないで、ソフトウェアを更新すれば、連写機能を向上させたり、アートフィルターの種類を増やしたりと、買ったときよりも高機能なものに変えることもできるようになっています。また、米国の電気自動車テスラのモデルS/Dシリーズには、自動運転機能が組み込まれています。今は法律上の規制もあって完全な自動運転はできませんが、いずれはソフトウェアの更新によって自律走行ができるようになるということです。
このように、ソフトウェアによって機能するモノが、ネットワークにつながることで、モノは購入した後も継続的に価値を向上し続けることができるのです。「もの作り」は、モノを製品として完成させることではなく、使い続けて頂くことを前提に考えてゆくことが求められるようになってゆきます。例えば、AppleのiPodが爆発的に売れたのは、iTunes Music Storeというサービスがあったからです。それ以前にも同様の製品としてSonyのウォークマンが存在していました。しかし、それを越える勢いでiPodが、シェアを拡げたのは、このサービスとモノを一体で考え価値を生みだしたからに他なりません。
さらに、iPodに続き登場したiPhoneは、そこに導入したソフトウェアのおかげで、カメラにもなり、地図にもなり、懐中電灯にもなります。そして、そのソフトウェアを、インターネットを介して更新することで、操作性や機能を改善してゆくことができるのです。さらに、それらデバイスからのデータを使い、ナビーゲーション、写真共有サービス、SNSといったサービスを実現しています。
テレビやデジタルカメラ、テスラの電気自動車、そして、iPodやiPadの例からも分かるように、モノがネットにつながることで、モノの価値が、モノそのものだけではなく、サービスと一体となって規定されるようになったのです。
ハードウェアからソフトウェアへとモノの価値はシフトしてゆきました。そして、IoTの普及と共にサービスへとシフトしてゆくことになります。IoTでビジネスを考えるとは、この価値のシフトを前提としなければならないのです。
IoTで変わるITビジネスの本質
IoTでモノの価値はサービスへとシフトしてゆきます。SI事業者が、IoTにビジネス・チャンスを求めるとしたら、IoTを活かしたユーザーのサービス構築に貢献するか、あるいは、自らがサービスを構築し提供することになるでしょう。
ユーザーのサービス構築に貢献するためには、IoTに固有の技術要件、例えば、プロトコルやデバイスの特性を理解した上でのインフラの構築、あるいは、データを収拾し分析するプラットフォームの提供、そしてアプリケーション開発が考えられます。ただ、インフラやプラットフォームについては、それを実現するための様々なサービスやPaaSが数多く登場している現状を考えれば、それらをうまく組み合わせてアプリケーション・サービスを構築することが主流になるかもしれません。
ただ、アプリケーション開発は、業務部門主体で行われます。なぜなら、それが事業の競争力に直結するからです。従って、ビジネス・モデルの設計、適切な技術やサービスの目利きと選択、それらを組み合わせる技術といった、業務と技術を橋渡しするスキルが求められるでしょう。
また、このようなスキルを元に自らサービスを提供することも考えられます。この時、特定のアプリケーションをサービスとして提供するか、あるいは、先に挙げたIoTを使うためのプラットフォームを提供するかの選択があります。例えば、長年ECサイトの構築を手がけてきた企業であれば、RFIDやビーコン、あるいは、デジタルサイネージなどをうまく利用できるECサイトを簡単に構築できるPaaS事業といった発想も生まれてくるかもしれません。
IoTは、現実社会の出来事をデジタル・データに変換し、インターネットに送り出すプラットフォームです。インターネットには、膨大な現実社会のデジタル・コピーが蓄積されてゆきます。これが、ビッグデータです。これを使って、現実社会の出来事を徹底してシミュレーションし、分析を繰り返して最適解を探ります。これを再び現実社会に情報の提供、機器の制御、モノに組み込まれたソフトウェアの更新といった方法でフィードバックします。そして、その結果を再びインターネットに送り出し、シミュレーションや分析を繰り返す、こんな仕組みが実現しつつあるのです。これをサイバー・フィジカル・システム(Cyber Physical System)と呼んでいます。詳しくは、下記をご覧下さい。
IoTのビジネスは、この一連のサイクルの中に自らを位置付けて考えることが大切になるのです。
【最新版】最新のITトレンドとビジネス戦略【2015年5月版】
「最新のITトレンドとビジネス戦略(全326ページ)」を最新版に更新しました。新規追加のプレゼンテーションは6枚ですが、新しい解説文を24ページ追加し、全てロイヤリティ・フリーとさせて頂きました。ご活用下さい。
テクノロジー編【2015年5月版】(271ページ)
新規ページを6ページ、最新の解説文を24ページ追加しています。
・これからのオフィスインフラを追加しました。
・パブリッククラウドの適用リスクを追加いたしました。
・コレ一枚でわかるIoTとビッグデータを改訂しました。
・IoTとモノのサービス化を追加しました。
・産業革命の歴史を追加しました。
・プレゼンテーション(24ページ)の「ノート」に最新の解説文を追加致しました。こちらも合わせてロイヤリティフリーでご活用下さい。
ビジネス戦略編【2015年5月版】(55ページ)
新規追加はありません。誤字脱字の修正、解説文の訂正を行いました。
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目次
- 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
- 第1章 クラウドコンピューティング
- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン